第27話 地雷は踏むまで気づかない

「ここで非常に残念なお知らせがあります、女装が終わったのでこれからは外に出かけます。」


「············この銀髪ツインテール美少女の姿で?」


「当たり前じゃん。」


「···························は?????」


 ノアは制服を僕がいる前で脱いで私服に着替えていく、少しは躊躇ためらいを持て。

 

 女の子の着替えは時間かかるなぁ······と思いながらノアを見つめている。

 前世の僕だったらいつも1、2分で終わってたのに。

 

 数分が経過しノアの着替えが終わり、窓の外には夕日が見え始めている。

 2人でこんな時間から出かけるのか······ノア中2だけど大丈夫かな?僕も中2だけど。

 中2なら7時までには帰らないと親から心配されるだろうに。

 今から出かけたら確実に7時までには間に合わないと思われる。


 いやそんなことよりも······················


「ねぇ?僕の服はどこにあるの?着てきた学校の制服はどこにあるの?」


「その服装のまま外に出るに決まってるじゃん。」


「あの·········服装はこのままでいいのでせめて制服は返していただけませんか?学校に行けなくなってしまいます。」


「急に敬語使わなくていい。私とゆいちゃんの仲でしょ?分かったはいこれ制服返す。」


 ノアがクローゼットの中から謎の袋を取り出してこちらに投げてきた。

 投げてきた袋の中身を覗いてみると、中には制服が入っていた。




 が入っていた。




 何を言ってるのか分からないと思うが、僕も何を言ってるのか分からない。

 ただ袋の中をちらっと覗いたら、女の子用の制服があっただけ。

 ·········って、は?僕のだと勘違いしてる?


「············どうしたのゆいちゃん?ゆいちゃん用の制服を渡しただけ。」


「これ着て学校に行けってこと?」


「そのとーり!それ着て学校1日過ごしたら返すから。」


「······その日休もうかな。」


「学校で1日過ごしたら、ね?あともうゆいちゃんはこの家に戻ってこないから荷物全部持って出かけるよ。」


「ちょっと待って今なんて言った?この銀のロングツインテールウィッグとか着てるスカートとかどうすればいいの?」


「あー沢山あるしいらないからあげる。今着てる服は私服にしちゃえば?やったねこれで普段から女装ができるね。」


「女装したくな······くはない、たまにするかも。」


「あれもしかして目覚めちゃった?」


「うーん、まあ女装したらtwetterに投稿するからそれ見れば分かるんじゃない?」


「え~、女装したら真っ先に写真送ってよ。」


「いや彼女かよ。」


「そうだよね、ゆいちゃんは私の嫁だから彼女じゃないもんね。」


「はぁ······てかメイクどうやって落とせばいいの?この姿のまま家に帰りたくないんだけど。」


「うーん、帰り道でクレンジングとか洗顔料とか買って帰って、バレないように洗面所でこっそり落とせばいいと思う。それかゆいちゃん姉妹いるんだから貸してもらえばいいんじゃない。お姉ちゃんなら持ってると思う······その代わり女装してるのバレるけど。」


「うん分かった帰り道で買って帰る。」


「それがいいと思う、ゆいちゃんの女装姿を知ってるのは私だけでいい·········」


「それでいつになったら出かけるの?段々外が暗くなっていってるけど。」


「ゆいちゃんと話すのが楽しすぎて忘れてた。別に会話は外でもできるし、そろそろ出かけようかゆいちゃん······もちろん手を繋いでね♡」


 ノアが手を繋がないと外に出る気がないと言ってきたので、仕方なく手を繋いで暗い時間から銀髪美少女2人で遊びに行くのだった。




★★★★★


「こうして2人で手を繋ぎながら歩いてると、何かこう、姉妹みたいじゃない?」


「この場合どっちが姉なの?」


「もちろん私が姉でゆいちゃんが妹。見た目でゆいちゃんが妹って分かりそうだけど。」


「いや妹よりも身長が低い姉。(ボソッ)」


 ノアの暖かい手を繋ぎながら道を歩いている。


 周りから見たら姉妹に見えるだろうけど、姉か妹かの判断はできないだろう。

 だってノアの格好は姉っぽいけど身長が低い、それに対して僕は妹っぽいけど身長が高い謎の美少女2人。


 そして徐々に沈んでいく夕日。

 帰りは確実に真っ暗になっているだろう。

 真っ暗の中、銀髪美少女2人が歩くのは危険だけど、最悪スキルの力で何とかしちゃえばいい。


 夕日と共に気温も下がっていき、スカートの中がスースーして気持ち悪い。

 女の子はこれで普段生活してるのか、女子高生がスカート寒すぎると嘆く理由が履くことで初めて理解できた気がする。

 

 そんな女の子のスカート事情はどうでもいいとして、それよりも気になるのが······周りの人からの視線が痛い。

 銀髪というだけで注目を浴びるのに、2人いて手を繋いでいるときた。

 

 暗くなってきて人を認識しずらくなっているのに、目線だけはこちらを向いているのが分かる。


 はぁぁぁ、今から出かけるのか······疲れたし暗いし寒いしはやく帰りたいな。

 はやく帰りたいよね、そうだよねノア?

 手を繋ぎながらちらっと横を向いてみると·····うん全く帰りたそうにしてない、嬉しそうな笑顔だった。


「行き先聞いてないんだけど、これからどこに行くの?」

 

「こんな時間から行く場所なんて1つしかないでしょ!そう·····ラブホテル!!!」


「いや行かねーよ!銀髪美少女が2人でラブホテルに入っていったら受付の人に驚かれちゃうじゃん。てか今ホテル代持ってないし。」


「いやツッコむとこそこ!?流石にラブホテルは冗談だから······まあホテル代なら私持ってるし、ゆいちゃんがどうしてーも行きたいなら行ってもいい。」


「いや行くわけないじゃん奢られて貸し作りたくないし······で?これからどこ行くの?」


「まあ定番だけど近くのショッピングモールに行く。」


「こんな時間から行くのか······また今度で良くない?」


「あーあ、本当にゆいちゃんは女心を分かってない。それでも女の子なの?」


「うわでたこの世で最も理解不能な女心ってやつ。2択のどっち選んでも結局は女心分かってないにたどり着くやつ。どっち選んでも詰んでるのまじで意味が分からない······てか僕は男の子な。」


「男の娘の間違いじゃない?今はなんなら女の子だし。そんなんじゃゆいちゃんモテないよ?」


「別に僕はモテなくてもいいし······」


「ゆいちゃんがモテなくても、私がずーーーっと愛してあげるからね♡」


「ずーっと愛してあげるって······ノアはモテるでしょ?僕なんかにかまわずにさ、他にもっとお似合いの男がいると思うけど。」









「なんで?どうして?どうしてそんなこと言うの?ねぇねぇ???私のことが嫌いになったの?いやそんなことないよね?······ないよね?私ゆいちゃんがいないと生きてけないから。」









「ねぇ???どうしてなの?何か私に駄目な所あった?あったら直すから教えてよ。2度と嫌な思いさせないから。」









「ねぇ?????私ゆいちゃんに嫌われたら生きる価値がなくなっちゃう。私はこんなにも愛しているのに、どうして離れていってしまうの?」







「ねえ???????ゆいちゃん?他にもっとお似合いの男がいるってどういうこと?ゆいちゃんに男をとっかえひっかえする女だと思われてたの?私は好きな人を愛し続ける一途な女だから。」







「ねぇ??????????」






 周囲の気温が5℃くらい下がった気がする。


 スカートの中はスースーするし、ノアの手が段々と冷たくなっていくのを感じる。


 すぅぅぅーーー············うん、地雷踏んだな。


 ノアの嬉しそうな笑顔は変わっていないが目は笑っていない、ハイライトがなくなっているかのように。


 ノアのことは嫌いになっていないが、流石に「駄目な所があったら」は無理があるだろ······駄目な所しか見つかっていない、美少女だから許されてる。

 



「いや、今日1日中僕と遊んでるしさ、他の子と遊びたいかな~って。」 


「ゆいちゃんは私と遊びたくないの?もしかして好きな女の子がいるとか?誰が好きなの?教えてよ、私の女に手を出すなって忠告してくるから。」


「そんなことないから!ノアみたいな美少女と遊べて嬉しいし!ノアが初めてできた友達だし。それに今日ノアと遊べて楽しかったから!」


 女じゃないと思いつつ、とてもやばい気配を感じたのでとりあえず爆褒めしてみる。

 女の子はとりあえず褒めとけばいいと聞いたことある。

 ちなみに僕はノアが言ってた通り、女心が全く理解できないので何が悪かったのかが分からなすぎる。


「へへ、ゆいちゃんから美少女って言われちゃった~。ゆいちゃんが私のなんだ~。」


 褒めまくったらノアの目が元に戻っていった。

 どうやら地雷を踏まずに済んだらしい。


 やっぱりノアはあの姉妹と似てるな、変態さといい、こういう所といい。

 

 元に戻ったノアの様子を横目で見て安心し、手を繋ぎながら電車に乗り、3駅先のショッピングモールに向かった。


 


 ショッピングモールでは今世紀で1番発言に気をつけた。

 暗い道の端でノアがあんなことになるのはまだいいが、人が多いショッピングモールでは迷惑になるからね。

 ショッピングモールでは夜ご飯を食べたり、またノアに着せ替え人形にされた······店員さんまでノリノリで逃げられなかった。

 あとノアに服を奢ってもらった。

 僕的には奢られたくなかったのだが、着せ替え人形にされた服を買わないわけにはいかず、僕はお金をあまり持っていなかったので、ノアに貸しを1つ作る結果になってしまった。

 

 ノアとのショッピングモールは普通に楽しかった。

 発言にも気をつけてたおかげで暴走しなかったし。

 美少女と2人で外出できたし······僕もノアに負けずの美少女だったけど。




---------------

 ショッピングモールは大人(時間)の都合によりカットです。

 1ヒロインに15話も······正直こんなにかかるとは思ってなかったです。

 次回にノア視点をやると思われます。


 

 







 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る