第23話 女の子になろっか♡♡♡

 ノアは盛大にパンツの上から噴いた。

 パンツが吸収してくれるはずなのに、顔は目も開けられないぐらいビシャビシャに濡れていた。

 僕はすぐさま住所をスカートの中から、部屋の中へと変更してベットから降り、目をつぶったまま右ポッケに入っているハンカチを取り出して、ビチョビチョな顔を軽く拭いた。

 目を開けてみると、そこにはベットの上で脚を伸ばしながら寝っ転がっているノア姿が······そしてこちらを見つめてきている。

 

「··················どうしたのノア?」


「どうしたのはこっちのセリフでしょ!いきなりあんなことして······うぅ、優希にあんな無様な見られちやった。」


「ノアが世界一かわいいよ。」


「私は女たらしみたいな言葉に騙されないから······でも優希ならいい、かも♡」


 いや思いっきり騙されてるじゃん、ちょろすぎかよ。

 本当にクサすぎるセリフを言ってみたけど、まじでキモい、多分これからの人生で2度と言わないと思う。

 このセリフを何事もなく言える男をちょっとだけ見直した······逆にすごい。

 ノアは逝ったはずなのに、ベットの上でぐったり寝っ転がっている。

 ノアに賢者タイムはないのか!?それとも1回だけでは物足りないぐらい欲求不満だったりして。

 そんなことを考えている内に、ノアがベットから起き上がった。


「お風呂に入ってきなさい······これは命令、もし拒否したら優希をこの部屋に監禁する。」


「······は、はぁ?監禁ってあの···あと異性の家のお風呂に入るとかさ、色々まずいじゃん。」


「えっ?何がまずいの?ただお風呂に入るだけ······それともお風呂で私のこと考えながらオ○ニーでもするの?あとその顔のまま家に帰るの?変態なの?」


「分かった、わかったお風呂入るから···いきなり大量の質問をぶつけないで。あと変態なのはノアのほう······(小声)」


「分かったなら早くお風呂入ってきて······まだやりたいことあるから、ね?この部屋の鍵開いてるから1人で入ってきて。私は次の命令の準備しておくから♡」


「ノアも一緒にお風呂入るか?」


「うるさい!もう、優希のバカ······」


 クサイセリフは2度と言わないと心に決めたのに、ノアをからかって遊びたくなり、また言ってしまったことを少しだけ後悔しつつ立ち上がり、鍵のかかっていた扉に向かった。 

 ドアノブに手をかけて回してみると、なんと扉が開いた。

 おかしいな······扉から絶対に部屋から出させない意思を感じ取ったのに。

 ノアはもちろん鍵を開ける暇などなかったので、この家にいる誰かさんが開けたとしか考えられない。

 何かこの家怖くね?普通にほぼ監禁みたいなことしてくるし。

 この部屋とノアから逃げるように僕は扉を閉め、急いでお風呂場に向かった。




★★★★★


 現在、僕は異性の家のお風呂場にいます。

 お風呂場に直行するのではなく、誰かさんを探すためにちょっとだけ寄り道してみたが、全く人がいる気配はしなかった。

 戻ったらノアに何させられるんだろうなぁ······もうあれよりすごいことなんてねぇ?もうあれしかないよね、あれしか。


 てか今何時だ?色々と起こりすぎてて疲れたし、時間の経過が早い、気がするだけ。

 左ポッケに入っているスマホを取り出し、時間を確認してみると、なななんとまだ2時24分だった······時間の経過が遅すぎる!

 もう疲労感的に6時とかその辺だと思っていたが、ま~だ2時半······いつになったら帰してくれるのでしょうか?


 あ、あと男の入浴シーンは需要ないので全カットです、まる




★★★★★


 お風呂から上がり、僕は今禁断の部屋のドアノブに手をかけています。

 部屋の中にはどのような景色が広がっているのでしょうか?


 全く関係ないのだが、僕はお風呂に入った後は髪をさらっとタオルで拭くぐらいで、ドライヤーで乾かしたりしないので、微妙に濡れた艶々つやつやな黒髪があり得ないほど綺麗······自分で言うのもなんだが、そこら辺の女子よりも綺麗な髪を持っていると思う。

 逆にクラスメイトから、美容のことについて質問されそうなぐらい恵まれている···多分。

 前世での僕は何1つ取り柄のない男子高校生だったので、見た目1つでここまで変わるこの世の中の不公平さをより理解できる。

 結局何が言いたかったのかというと、良い子は髪をちゃんと乾かしましょう、はい。

 

 そうして僕はドアノブをゆっくりと回し、扉を開けノアの部屋を見渡してみた。

 まずざっと見渡して目に入ったのは、全身鏡、あの上から下まで全身が鏡に映る、使いにくくスペースも取り、絶対小さい鏡でいいだろと思うやつ······この鏡使ってる人裏アカ女子しか見たことな(殴)

 ちなみに全身鏡だけではなく、普通サイズの小さい鏡も置かれていた。

 

 次に目に入ったのは、大量のメイク用品であった。

 ベットの下、ノアの性癖丸見えな本たちの隣にあった大量のメイク用品が、机の上に並べられている。

 ノアのお人形さんみたいな綺麗でかわいらしさの秘訣は、この美容意識の高さからきているのかもしれない。

 僕はまじでメイクとかだるいと思ってる系男子なので、見た目を変えるためだけに軽く1時間とか使えるの本当にすごい······僕には絶対無理、今やりたいこと多すぎるし。

 

 他にも色々と、つっこみたいとこが多すぎるのだが、それにしても部屋に肝心のノアの姿が見えない。

 ノアがお風呂に入ってこいって言ってきたのに、出てきたらほったらかしって。

 僕はノアがいないと何もやることがないので、空いてる床のスペースに寝転んだ······流石にベットに寝転ぶ勇気はない。

 人の部屋の床、しかも勝手に寝転ぶのは行儀悪いとか常識がないとかは、友達を自分の家に招き入れて、誰もいないであろう家に実質監禁する、もっと常識が欠けている人に言ってください。


 けどあまりにも暇すぎる、暇だし寝っ転がりながらスマホで甘々ラブコメ執筆してストック貯めておくか······まだ何も設定考えてないけど。

 甘々ラブコメの主人公の名前とか性格とか諸々もろもろ決めていると、突然クローゼットの中から何かが動いたような音が聞こえてきた·········嫌な予感しかしない。

 謎に大きいクローゼット、確実に1人分の洋服ではスペースが余ってしまう。

 となると他に考えられるのは、ベットの下みたいに恥ずかしい物を隠しているか、ノアが洋服大好きっ子なのかの2択。

 だがノアが洋服大好きとかいう、普通すぎる趣味を持っているとは思えないので、きっと何か隠しているのだろう。

 スマホでの執筆をいったん終了し、勢いよくクローゼットを開けた。

 クローゼットの中には予想通りノアが隠れていた·····何してんだ、こんな暗い場所に1人で。


「···············何してんの?こんな暗い場所で。」


「暗い場所に女の子がいて驚かないんだ······な~んだ、つまんないの。」


「そりゃ動く音が聞こえたんだから驚かないでしょ。」


「何してたのかと言われたら、次の命令の前準備かな♡······暗いから電気つけよ。」


 電気をつけられるのなら、なぜ暗い中で準備していたのかは分からないが、電気がつけられクローゼット内が明るくなった。

 そして大きいクローゼットの全貌が明かされた······何かやばいのあるけど、とりあえず見なかったことにしとこう。

 左側にはノアに似合いそうな洋服の数々が。

 目線を段々と右側にずらしていくと············


「··················なにこれ???」 


「見て分からないの?とあるキャラのコスプレ衣装一式だけど。」


「···············じゃあこっちは?」


「女性向けのウィッグだけど。(ウィッグとは簡単に言えばカツラのような物、ただしウィッグは服装に合わせたりおしゃれとしてかぶり、楽しむ物のこと)」


「············多くない?」


「私でも多いとは思う······でもこのウィッグは黒髪ショートボブで清楚っぽいでしょ。これは青髪ウルフカット、インナーカラーが紫でかっこいい女子の雰囲気出てるでしょ。こっちは銀髪で私と全く同じ髪色髪型でかわいいでしょ。かわいいよね?このウィッグも金髪で·····················」


「あー、もう分かったからそんなに語らないで。でも何で?何かに使ったりするの?」


って言われたらねぇ······ここまできてまだ理解わかってないの?」




 謎に大きいクローゼットには、絶対に女の子1人では必要ないほどの洋服、とあるアニメやゲームのコスプレ衣装の数々、のウィッグ、あと全身鏡やメイク用品、そしてノアがクローゼットの中で準備をしてたことまで含めて考えられる答えは···········

 










優依ゆいちゃん♡になろっか♡♡♡」

 





---------------

 女の子になりたい······けどなりたくない。(どっちだよ)


 



 

 

 

 

 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る