第4話 誰だって一人五役実は僕でしたムーブしてみたいよね

 結局優奈に1時間以上抱きつかれた。

 10分ごとに「そろそろ離してくれない?」とお願いをしてみると、優奈のとろとろにとろけた表情が急に真顔になり、さらにハイライトが消えた。

 まるで所有権を主張するように力が強くなり、絶対に離れられない···いや離してくれなくなる。

 そして優奈の頭を撫でてあげると、またあのとろとろにとろけた表情に戻る。

 この流れを何回も繰り返していた。


 周りから見ると、扉の前で1時間以上抱き合っている兄と妹になるのだが···僕の妹がかわいすぎるのがいけない。

 

 優奈との1時間以上にも渡るハグという名のご褒美を終え、再び自分(?)の部屋に戻ってきた。


 何一つ情報がないので部屋の外に出てみたが、妹が存在すること、過去の僕が妹に酷い仕打ちをしてきたこと、妹と仲直りしたと思ったらいきなりハグを求められたことぐらいしか情報を集められなかった···あと妹がかわいすぎること。


 情報は生活しているうちに自然と集まってくるだろうから、一端部屋の隅にでも置いといて、今はあいつからもらったチートスキルについて色々と整理するか。


 まずこのスキルが本物だと判明したのだが、このスキルはまじでやばい···うーん、何と言えばいいのか······とにかくほんとにやばい。

 

 ······状況整理とかだるいからもういいや。

 とにかく凄い力を手に入れた、はい終わり。

 

 この力があれば僕の夢が叶えられるかもしれない。


 そう、僕の夢は『』である。

 分からない人のために一応説明しておくと、僕の場合の一人五役とは、5つ別名義で活動をしてことである。


 例えば、モデルとしての顔と声優としての顔2つがあり、別名義で活動していれば一人二役になる。

 モデルと声優は忙しすぎてきついと思うが。


 ここで1つ重要なのは、絶対に有名にならないといけないのである。

 別に有名にならなければ、一人五役など誰でもできてしまう。

 それではいけませんね。(天の声)

 有名にならないと···某アルファベット1文字のアプリで、エゴサをして気持ちよくなれない。

 正体が同一人物であることを僕だけが知りながらする五役分のエゴサは格別だろうなぁ······

 

 一人五役をしたい1つの理由としては、僕が承認欲求の塊だからである。


 もちろん他の理由としては、単純にからである。

 一人五役とかかっこいいに決まってるだろ。

 誰もが1度は夢見るだろ。

 逆にそれ以外に理由があるとでも思っているのか。


 一人○役はバレなかったらかっこいい、もし何かしらの事件が起こり、正体がバレてしまってもそれはそれでおいしい···要はどちらに転んでも結果としてはよい方向に働く。

 まあ極力バレないようにはしていくが。


 一人五役について軽く説明したことだし、早速一人五役計画を立てていく。


 最初に決めることとしては、さすがに活動内容だろう。

 5つ何をするのか。


 前世からずっと歌い手などの声を武器にしたみたかったので、歌い手は確実にやるとして···他はどうしよう。

 一役は決まっているのだが、他の四役···うーん、前世でラノベ読みまくってたし、小説家にでもなってみよう。

 

 チートスキルを手に入れたので例にも出したように、モデルや声優とかにもなってみたいのだが、確実に時間が足りない。

 ただでさえモデルや声優は仕事だけでも忙しいのに、残りの3、4役+学校は僕が過労死してしまうので却下。


 そうなると歌い手や小説家のように、家の中、1人でもやれる方がいい···時間的にも···あとバレたくないし。


 家でやれる······イラストレーターとかか?

 もしラノベが爆売れしたら···というかチートスキルと前世の記憶を利用すれば爆売れするだろう時間もあるし。

 そしたら僕のラノベを僕自身でコミカライズ化したりするのも面白いかもしれない。

 あと普通にえっちな絵とかも描いてみたい。

 

 三役は決まったけど、あと二役どうしよっかなぁ···

 前世で他に何やってたかなぁ···そうか、Vtuberか、Vtuberの配信見てた気がする。

 Vtuberなら家の中で1人でやれるし、さらに見バレしにくい···完璧だな。

 しかしVtuberにも問題点があり、有名になれるかどうかが分からない。

 大手事務所の新規ライバー募集に合格できれば、0から膨大な知名度などその他諸々を手に入れられるが、事務所に縛られながら活動はしたくない。

 ってなると個人勢になるのだが、このVtuber戦国時代に個人勢が1から初めて有名になるのはあまりにも難しい。

 ······まあ今は深く考えないようにしよう。


 四役が決まり残りの枠はあと1つなのだが···正直特にやりたいのがない。

 ······いやあったわ、前世からずっとやりたかったけど、平凡な容姿のせいでやれなかったのが。

 そうというのが。

 コスプレした姿を投稿して、反応を楽しむという承認欲求の塊な僕に1番合ってるといっても過言ではない。

 あいつによると、世界一のイケメンになれるらしいし、世界一かわいくもなれるでしょ知らんけど。


 あと現実から目をそらしていたが、あいつによると女の子になれるらしい···TSできるらしい。

 信じたくなかったのだが、この力が本物だと判明してしまったため、信じざるを得ない。

 TSしてコスプレするのもまた一興かもしれない。 

 いや全然一興じゃないかもしれない。

 冷静に考えてみると、コスプレをするためだけにTSするのはアホらしい。

 でもTSできるってなったらね、もうわかるよね?やりたいことが。

 TSお決まりの自分のあそこを恐る恐る確認して、悲鳴を上げながら気絶してみたいよね、そうだよね。

 

 いつの間にか活動内容決定からTSに話題が変わっていたが、一人五役をする内容がようやく決定した。


:歌い手 

:小説家

:イラストレーター

:Vtuber

:コスプレイヤー




--------------------

 人生で1度は朝起きたらTSしてないかなぁ···って思ったことあるよね······あるよね?


 次回妹の優依優奈視点!!!やばいかも···

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る