第3話 妹がかわいいすぎてつらい

 僕はドアノブを握りドアを開き、とうとう部屋の外に出てみることにした。


 部屋の外に初めて出た感想としては、特に何もない普通の家って感じであった。

 感想が何もないって学校だったら絶対怒られてただろ···それでいいのか元受験生よ。


 気になったことがあり、僕が目覚めた部屋の隣にもう2つ部屋があり、その内の1部屋の前に近づいてみると中から物音が聞こえてくる。


 部屋の中に誰かがいる···母親か?それとも父親か? 兄弟なのか?姉妹なのか?

 今すぐ確認したいところだが、やっぱり止めておくか。

 単純に何も知らないので怖い···自分からは会いたくない。

 あともし中にいるのが姉妹だった場合、自分から姉妹の部屋に押し掛けにいく、ただのちょっとシスコンな人になってしまう。

 プライバシーも考慮しないといけないしね。


 いやしかし、中にいるのが誰だろうが押し掛けにいくべきか?


 間違いなくこのままでは普段と様子が違うと疑われるだろう。

 もちろん転生はバレたくないが、バレるなら人数が少ない方がいい。

 バレないに越したことはないけど。


 うーん、いやでもなぁ······どうしよう······


 物音が聞こえてくる部屋の前で悩んでいると、中から足音がこちらに近づいてくる。

 

 まずい···もう逃げられない······


 足音が扉の前で消え、扉が開いた。

 

「お兄ちゃん、どうしたの優奈ゆうなの部屋の前で······」

 

 部屋の中から出てきたのは、かわいい女の子であった。

 ···かわいすぎる······これが僕の妹なのか?

 ロリコンとかではないのだが、髪はやはり茶色よりの黒髪で髪型はボブ、しっかりとした二重で遺伝の力を感じる。 

 あと胸が大きい···見た感じではCぐらいはある······僕の妹なので14歳以下なのに······将来が楽しみだな。


 名前は優奈って言ってたな。

 僕の妹の名前は『優依ゆい 優奈ゆうな』ということになる。

 名前までかわいいとか完璧なのか僕の妹は···正確には僕のではなかったけど。


「いや、何でもないよ?」


「いやなんで疑問系なの?てかお兄ちゃん頭でも打った?様子おかしいよ。」


「いや全然そんなことないよ···いつもどうりだよね?」


「だからなんで疑問系なの?いつものお兄ちゃんだったら優奈と話してくれずに部屋に籠ってるのに。それか優奈が話しかけても無視されるのに。そんな状況から会話が成立するようになったらおかしいと思うでしょ普通。」


 過去の僕なにしてんだよ···早速疑われたやん。

 イケメンだったからてっきり妹と仲いいと思ってたけど、残念な方のイケメンだったのか。


 あと僕の妹14歳以下なのに異様に大人びてる気がする。

 僕が14歳の時、こんなに難しい言葉の数々使いこなせなかったけど。


「優奈って頭いいのか?」


「···え?名前呼び?1度も名前で呼ばれたことなかったのに···やっぱお兄ちゃんおかしいよ今日。」


「で?優奈は頭いいのか?」


「だから名前呼び···頭いいに決まってるでしょ!優奈は世界一頭いいんだから。」


 なるぼど、年相応な所もあるって感じか。

 で?現実を見よう、どう打開するかこの絶望的状況を。

 言い訳として最もましなのは、やはり「心を入れ換えた。」が良いだろうか?

 そしてこれまでの行いを謝罪したら仲良くやっていけるだろうか?

 いやそれしかないな、バレたくないし。


「で?結局様子がおかしいのはなんでなのお兄ちゃん?」


「えーとね、中学生にもなったことだし心を入れ換えようかなと。これまでの行動も本当に申し訳ないと思ってるから。当然すぐに許してくれるとは思っていないから、許してくれるまで土下座でも何でもしてあげるから、これからは仲良くやっていきたいな。」


「うぅ···お兄ちゃん······これからまたよろしくね。ところで···何でもしてくれるんだよね?」


 流れ変わったな。

 でも過去の僕がやらかしてるし、素直に言うことを聞いておこう。


「うん、これまでのお詫びに何でもしてあげるよ。」


「え···じゃ、じゃあ···お兄ちゃんにね、ぎゅーーーって抱きついてもいい、かな?」


 ·········は?ちょっと突然の出来事に理解が追いついていないが、どうやら妹はまともに話したこともない兄とハグしたいらしい···うん、どうして?

 前世の記憶を持っている僕からすると、こんなにもかわいい妹とのハグは是非ともしたいのだが、倫理観が妹とのハグを妨害してくる。  

 いやしかしまだ中2なので大丈夫なのでは?高3で妹とハグは非常にまずいが、この世界ではまだ中2である。

 発言には責任を持たないといけないし、向こうから求めてきてるしいい、よね?

 

「いいよ抱きついてきて···今までごめんね。」 


 すると勢いよく妹が僕の胸に向かって抱きついてきた。

 前世の記憶を保持している僕からすると、妹のいい匂いも相まり、謎の罪悪感も相まり、変な気持ちにさせてくる。

 僕に抱きついている妹の顔をチラ見してみると、頬を赤くして幸せそうなとろけた表情をしている···うん、かわいすぎる。

 あと妹の抱きつく力が強すぎる。

 僕が本気で離れようとしても、きっと離れられない···いや離してくれないだろう。

 まるで「お兄ちゃんは優奈の物だから絶対誰にも渡さない。」と主張するように。  


「うへぇ···お兄ちゃんいい匂いする、へへ···大好きお兄ちゃん、一生こうしてたい······」


 もちろん大好きなんだよな?


 プリンのようなとろけた表情をしている最中に申し訳ないのですが、これはいつになったら終わるのでしょうか?

 もうすでに10分以上は妹に抱きつかれた状態を維持している。

 いくらかわいいすぎる妹とのハグがご褒美だとしても、さすがにそろそろやめてほしい。

 

「優奈、もう十分抱きついただろ?そろそろ離して欲しいんだけど。」


「うるさい、まだお兄ちゃん成分が規定量に達してないから無理。お兄ちゃんは優奈に黙って抱かれてればいいの。」

 

 どうやら過去の行いにより、僕の発言権は失われてしまったようである。

 大体の家庭では兄の方が年上なのに、権力が妹よりも弱いことが多い。

 もっと兄を大切にしろ。


 てかお兄ちゃん成分って何?

 あと13歳以下なのに「黙って抱かれてればいい。」とかいう言葉どこで覚えた?

 謎が深まるばかりである。




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 妹かわいいなぁ······きっとしっかりしてるんだろうなぁ······


 

 

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