第2話 平等とは不平等である(?)

 目が覚めた。

 周りを見渡してみると、見覚えのない部屋のベッドに横たわっていた。

 どうやら転生に成功したようだ。


 転生した人の部屋はあまりに悲しかった。

 暮らしていくための必要最低限の物しか置かれていない。

 あの駄目神様に転生させられる前の僕の部屋と重なって見える。

 

 いや今はそんなことより状況の整理が最優先事項である。

 転生したら急に前世の記憶と今世の記憶が入り交じり、脳の処理が追いつかなくなって気絶するパターンと、何も知らずに転生させられて常識に疎い人が誕生するパターンがあるが、今回は後者のパターンである。

 今の僕は自分の名前すらも分からない状況、こんな状況で家族と鉢合わせるのが1番まずい。

 何とかして情報をかき集めないと。


 情報を集めるために何もない悲しい部屋を再び見渡してみると、机の上にスマホが置かれてあった。

 流石にスマホぐらいは持ってるか。

 

 スマホにはパスワードがかかっておらず、普通に開くことができた、パスワードぐらいはかけておけよ···ありがたいけども。

 やはりスマホの中も悲しかった。

 ソシャゲなどのゲームはおろか、LIN○すら入っていない。

 まあLIN○は使わない人もいるだろう···前世の僕もアプリ入れてるだけでほとんど使わなかったし。


 スマホにより僕の名前と生年月日が判明した。

 どうやら僕は『優依ゆい 優希ゆうき』と言うらしい。

 何かかわいいな···語呂もいいし気に入った。


 あと生年月日から判断すると、僕の年齢は14歳で中学2年生らしい。

 うーん、若返ってる···高3が中2か······まあ時間が増えてラッキーと思っておこう。

 

 まあこれぐらい分かってれば大丈夫···な訳ないだろ、これ以外に部屋から分かりそうな有益な情報がない。

 

 ああ、てか1番重要なことを忘れてた···まだ僕の姿を確認してなかった。

 あほ女神様が「世界一のイケメンになれるよー。」とかほざいてだけどまだ信じていない。


 この部屋に鏡などあるはずがないので、スマホのカメラで僕の姿を確認してみると···そこには信じられないほどのイケメンが映し出されていた。

 

「これが···僕!?······かっこいい!」


 髪は茶色よりの黒髪、目もしっかりとした二重、身長は160cm以上はありそうで、これからも伸びていくだろう。

 さらに身長も高いのにスタイルも良く、傷1つなくすべすべして肉付きもよい真っ白な肌をしている。


 転生してきたので自分の身体ではないだが、それでも衝撃を受けてスマホのカメラを見続けている。


 前世で何も変哲もない姿を見まくっていたせいで、イケメンだと感じているだけかもしれないが、絶対に前の僕よりかっこいいことだけは分かる。

 でもイケメンに転生したところで僕の夢には関係ないのだが。

 まあ顔が悪いよりはほうがか。


 そんなことより、あの馬鹿女神様の言ってたことが本当なのかを確認しよう。

 

 確か『平等な力』だったっけ?

 平等な力は『全ての事象を自由に調節できる。』らしいあいつが言うには。

 そんなことが起こってもいいのか?全ての人の努力を水の泡にしてしまうチートスキルだけど。


 あと最後に「TSしたい気分の時に使ってみてねー。」とかいう問題発言もしてた気がする。

 僕が女の子に···女の子になってみたい気持ちもあるが···うん、今は聞かなかったことにするか。

 

 

 で?結局どうやって使うんだ?うーーーん······


「スキル!!!」


 しかしなにもおこらなかった。

 あいつ女神様じゃなくて詐欺神様だったのか?


「平等な力か······」


 その瞬間、目の前に白い画面が···

 どうやらあいつは詐欺神様ではなくただおかしい女神様だったようだ。


 てか「平等な力」の掛け声で発動なのダサすぎるだろ···他にもっとましな掛け声なかったのかよ。

 旗から見ると、このままでは平等な力を欲しているただのやばいやつになってしまう。


 映し出された画面には「調節したい力を入力してください。」と書かれている。

 もしかしなくてもこの(不)平等な力は本物なのかもしれない。

 この力があれば僕の夢が叶えられるかも···ふへへ。


 早速この力を試してみたくなり、画面に『勉強』と入力してみると、1~100㌫のゲージが現れた。

 ちなみに僕の勉強能力は40㌫であった。

 まあ50㌫を平均と考えるならば、受験を控えておりこれから伸びていったと仮定するなら···妥当な数値か。


 天国にいる人は「世界一の頭脳を手に入れられるよー。」とか呑気に言っていたので、100㌫が世界一なのだろう。

 いきなり100㌫にしてみるのは気が引けるので、80㌫にしてみた。

 実際にはまだ試していないので、この力が本物であるかの確証はまだ持てていない。

 なので実際にやってみた。


 しかし中2が参考書など持っているはずがない。

 あるのはせいぜい、教科書と学校で配られたワークぐらいである。


 突如気になったのだが、僕が転生した人は一体何をしていたのだろうか?

 勉強を頑張ってた痕跡もない、スマホで遊んでもいない、ゲーム機なども一切置かれていない···まあそれは時間が解決してくれるだろう。

 

 ······受験勉強もしてた訳だし、あいつが日本に返してくれたならば、スマホで共通テストの過去問とか出てくるだろうし解いてみるか。

 この力が本物なのかを調べる目的なので、1番苦手な国語でも解いてみよう。


 80分後······


 解き終えた国語を採点してみると、200点満点中161点であった。

 ······この力が本物だと発覚した。

 まじでチートどころでは表現できないぐらいにはこの力はやばい。

 この世の全ての努力を否定しているような気持ちに陥る。

 さすが(不)平等な力って感じか。


 まあしかしこの力を活用しない訳はない。

 僕の夢を叶えるためにも······ 


 中2になったことで時間は大量にある。

 夢を叶えるためにも、後で計画を綿密に立てていくとしよう。


 ···力の効果も確認できたことだし、そろそろ部屋の外に出てみる、か?

 家族の名前、顔、年齢、スリーサイズなど何1つ知らないから心配だなぁ···でも部屋から出たくないしなぁ、転生したこともバレたくないし。

 っていけない、思考がプロフェッショナル自宅警備員になってる。

 でもいつかは部屋の外に出ないといけないし、何事も早い方がいい。


 僕はドアノブを握り、とうとう部屋の外に出てみることにした。




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 サクサク読める方が好きだから文字数少なめにしようかな。(今話は2500文字)


 てか主人公の名前、優依 優希めっちゃ気に入ってます···分からないけどなんかいい。

 

 ちなみに主人公が転生した本人は、あの女神によって魔王を無理やり討伐させに行かされてます。

 かわいそう、何もしてないのに。

 

 

 



 

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