第8話 拷問

 カランカラン

 店のドアベルが鳴り、僕たちは戻ってきた。

 「おい、なんで俺をここに連れてきた。」

 そこにはなぜか五舛目もいる。

 「決まってるだろ。」

 テラさんはそう言って、ケイさんの方を見た。

 ケイさんはニコッと笑ってこう言った。


 情報提供。


 「あのー…。具体的に、情報提供とは…。」

 僕はそう聞いた。ただの情報提供ならあの場で聞けばいいだけだ。

 「ん?拷問☆」

 にこやかに、そして爽やかにケイさんは言った。

 あなたのその顔で拷問って…。

 すると五舛目は何かに気づいたように叫びだした。

 「思い出した!確かグラデーションには捕まるとヤバい拷問組織があるって…。」

 「そうだよ。それが僕。」

 「この三人の中ならこいつが一番そういうのに長けている。」

 まぁ、実際は組織じゃなくてこいつ一人なんだけどな、とテラさんは言った。

 いや、くっそ怖いんですけど…。

 「じゃあ行こうか。」

 そう言って、ケイさんは五舛目の服の襟を掴んで奥に引きずっていった。



 「はーい、起きてる?」

 その声で五舛目は目を覚ました。

 視線の先には、袖をめくっている黒いワイシャツに黒いパンツ、黒い手袋をはめている全身黒まみれの男がいた。

 それが、さっき自分を引きずり、薬を飲ませて眠らせた綿亜飛ケイだと気づくのには、そう時間はかからなかった。

 「ぃいやだ!!やめろ!まだ死にたくない!!!」

 寝起きだからか、五舛目はあまり呂律ろれつが回っていなかった。

 「そう言われても、こっちも仕事だからねー。」

 気怠そうな言い方に相応しくないほど不気味な笑みが、さらに恐怖を搔き立てた。

 ガタンッ!ゴッ!

 椅子を動かそうとしたが、びくともしない。

 「あぁ。その椅子床にガッチリ固定してあるから動かないよ。」

 じゃあ、始めようか、とケイは言って、五舛目に近づいて行った。

 「いやだ!!いやだ!!!!!やだ!!!!!!!!!」

 子供のように駄々をこねる五舛目の口に、ケイはヒョイと錠剤を入れ、手で思い切り口をふさいだ。

 ゴクン

 錠剤を飲んだ音が聞こえると、ケイは手をどけ、ワゴンから先が尖っている金属製のものを手に取った。

 「これ、何か分かる?」

 これはね、はんだごて。

 そう言うと、この部屋には似合わない延長コードのコンセントにコードを挿し、電源を入れた。

 「おい…?それをどうするつもりだ…?」

 「これはねー、とっても熱いんだよ。それをね。」

 ケイは早足で五舛目に近づき、左手で顔を掴むと、はんだごてを左目に押し当てた。

 「ぎゃああああああああああああああああああぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 目の中の水分が沸騰する感じ。とても熱い、とは感じられなく、痛いが頭を埋め尽くした。

 「うるさいなー。この部屋がいくら防音だからってそんなに叫ばないでよ。」

 するとケイは喉の奥にもはんだごてを突っ込んだ。

 「~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 言葉に乗らない絶叫が部屋を包んだ。

 「あ、しまった。声帯焼いたら、情報聞き出せないじゃん。んー、やりすぎちゃったなー。」

 そう言うと、ケイは一旦部屋を出、捕まえていたもう一人の男を拷問して、情報を聞き出した。



 そのあと、二人は両手足をもがれ、敵対組織のアジトの前に置かれた。

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紅の王 @shki

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