第4話 酒場

 「っあ~…、めんどくさかった…。おい煌雅。もう女を誑かすのはやめろよ。こういうことになって、俺たちが対処しなきゃいけないんだから。」

 「ごめんって。今後、女の子と遊ぶのは減らすから。」

 「それ、こういうことになるたびに聞いてんだけど、一向に減らないよな…。」

 僕たちは、あの後、バーに戻り歓談をしていた。今はテラさんが煌雅さんに文句を言っているところだ。

 「でもなんでか、女の子の方から寄ってきちゃうんだよねぇ。そればかりはどうしようもないんだよ。」

 女たらしの典型的な答えが返ってきた。

 「まぁ、その顔だしね。寄ってきちゃうのはしょうがないよ。僕も街中歩いてたら普通に声かけられるし。」

 そう、今このバーにいる僕を除いた全員は、とても顔立ちが整った、所謂イケメンなのである。そりゃ歩いてたら声をかけられるに違いない。

 「あ、でもこれだけは言わせて。毎回言ってるけど。僕は女の子と食事したりしてるけど、プラトニックな関係なんだよ。毎回言ってるけどね。」

 「どうだか。」

 …プラトニックがどういう意味なのか分からない。

 「龍哉くん。プラトニックっていうのはね、肉体関係がない関係のことをいうんだよ。」

 「そうなんですか。ありがとうございます。」

 困っていると、ケイさんが教えてくれた。

 「ケイ。ウィスキー。」

 「はいはい。」

 そう言うと、ケイさんは棚からウィスキーの瓶を取りグラスにいれ始めた。

 「どうぞ。」

 「ありがとな。」

 そう言うと、テラさんはグラスを傾け、一気に飲み干した。

 …この人、そういえばバーテンダーだよな?なんで飲んでるんだ?

 「分かってねぇな、龍哉くんよ。酒ってのは飲みたいときに飲むもんだぜ。」

 「そう…なんですか?」

 テラさんも僕の心を読んだように言ってきた。

 「はいはい。格好いいこと言っても、さぼってることには変わりないんだから。飲んだなら、こっちに来てね。」

 「ちぇっ。」

 そう言われると、テラさんは渋々バーテンダー側に行った。

 僕は、ふと疑問が浮かんだ。

 「皆さん、どうやってお金稼いでいるんですか?ここにあるお酒だって、買ったものでしょう。どうやってですか?」

 そのことを聞くと、空気がピリッとし、引き締まった感じがした。

 「そのことは…、聞かないほうがいいかな。」

 「そう…ですか。」

 ケイさんが言いにくそうに言った。

 「龍哉くん、お酒飲める?」

 そんな空気をいい意味でぶち壊しにする、煌雅さんの発言に俺は、呆気にとられた。

 「へ?…まぁ、飲めなくはないと思いますけど…。」

 「じゃあ日本酒飲もう。4人で。」

 「いいな。飲もう。」

 「もう、テラはさっき飲んだばっかでしょ。…でもいいかもね。」

 3人がなぜかやる気なのが僕には分からなかった。

 「出会った記念だよ。龍哉くんとは、何かの縁がありそうだからね。」

 「はぁ…、そうですか。」

 よし、とケイさんは言うと、奥から日本酒と、4人分の盃を持ってきた。

 「よし、全員注いだね。それじゃあ乾杯。」

 「「乾杯」」

 「か、乾杯。」

 盃をカチャンと合わせると、3人とも勢いよく飲んだ。3人の飲みっぷりに呆気を取られ、一間空いて、僕が飲んだ。

 次の瞬間、僕の体はフラッと後ろへ倒れ、意識は遠のいて行き、目の前が真っ暗になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る