第3話 血潮
「え…、紅色の眼って普通じゃないんですか?」
「基本的には青色だね。紅色なんて初めてみたよ。」
どうやら僕は他とは違うらしい。
「つっても俺は青じゃないけどな。」
「え、テラさんも違うんですか?」
「あぁ。俺の眼は紫色だ。」
なんとテラさんの眼は紫だという。
「紫色の眼の吸血鬼の話は僕でも聞いたことがあります。紫色の眼を持った吸血鬼は、覚醒すると吸血鬼の王になるっていう…。」
「あぁ。でも俺はまだ覚醒してないからな。」
「二人とも。」
ケイさんが口許に人差し指を当てながらこっちに向かって言った。
ゴンゴン
太く、鈍い音が店内に響く。
「邪魔するぜ。」
戸が開き、入ってきたのは、体躯が大きく筋骨隆々な男だった。そしてその後ろには取り巻きのような男たちが三人並んでいた。
「おい。この中に
その人はここにいるのだろうが僕は知らない人を探していた。
「煌雅?あいつは普段全然ここに来ねぇよ。」
「そうだね。あいつは全然来ませんよ。」
「はぁ⁉嘘つけ!お前らあいつを隠してんだろ!早く出せ!」
ピキッ
誰かのこめかみに血が走る音がした。
「めんどくせぇなぁ…、兄ちゃん、表出ろや。」
横を見るとテラさんがキレていた。
「あー…。あいつ死んだな…。」
「え?」
ケイさんの言ったことがよくわからずテラさんのほうを見ると相手はとても大きな血潮を扱っていた。
「テラさん!あぶな…」
言っている途中でケイさんにさえぎられた。するとケイさんは人差し指を口許にあて
「大丈夫だよ。見ていればわかる。」
またしてもでてきたその言葉に僕は戸惑いを隠せなかった。そのうちにテラさんが相手に向かって走りだしていた。
相手は血潮で造った剣のようなものを上から下へ流れるように振り下ろした。しかしテラさんは身体を左回転させてよけると、相手の左頬に自身の右手の中指と薬指を突っ込み、そのまま前へ引っ張った。
相手の頬は破け、大量の血が飛び散った。
「いてぇ!いてぇよぉ!」
相手は、当たり前だが叫び、のたうち回っていた。吸血鬼で回復力が段違いなのは認めるが、やはり痛いものは痛い。
「てめぇ!ころす!コロス!!」
「龍哉くん。よく見てな。」
テラさんはそう言うと、相手が突進してきているにも関わらず、自分の指をガリッと噛んだ。
「なにを…。」
途中でしようとしていることが分かった。
「ここでクイズ!龍哉くん。力はどのようにすれば強く使えるでしょうか?」
「え?やっぱりその力に合った人が使うとか…。」
「それもあるけどね、正解は…。」
そういうとテラさんは細長く滴る血を相手の体に巻き付け、動きを止めた。
「使い方だよ。」
相手の上に逆立ちをするように乗り、そのとき、すれ違いざまに相手の口の中に細く、幅が長い剣のようなものを突き立てた。
相手は少し腕を振り回したがすぐにおとなしくなった。
「で?お前らはやるか?」
そういうと取り巻きの三人は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
「おみごとだね。テラ。」
「はぁ、あいつのせいで苦労する身にもなってほしいよ。」
その言葉は殺したあとのような言葉とは思えないほど軽かった。
「あの…、煌雅さんってどんな方なんですか。」
僕は唐突に煌雅さんのことが知りたくなってきた。
(この人たちが苦労する人ってどんな人だろう。)
「煌雅?あいつは、めんどくさがり屋で女たらし。」
「誰がめんどくさがり屋で女たらしだって?」
その言葉を聞くまで僕は彼が後ろにいることに気が付かなかった。
「よう。でも本当のことだろう?」
煌雅さんという人は、灰色の長い髪を後ろで一つにまとめていて、中性的な顔立ちをしており、目元には泣きぼ黒があった。可愛さというよりもかっこよさが際立っており、テラさんやケイさんとは違った、妖艶でよくわからないがとても引き込まれる色気があった。かけている眼鏡がさらに色気を出していた。
「ん?君は?」
「あ、どうも。テラさんにお世話になった紅峰龍哉と言います。」
煌雅さんは、僕を舐め回すように見たあと
「ふーん…、君、気に入ったかも。」
と言った。
その時の彼の笑顔に背筋がぞくっとしたことはきっと気のせいだろう。
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