第10話 黒幕の正体

私たちは黒幕を捕らえ、船内の一室で事情聴取を行うことにした。黒幕は「リチャード・クイン」と名乗り、冷たい目で私たちを見つめていた。


「リチャード・クイン、あなたの計画について全て話してもらいます。」私は冷静に言った。


「話すことなんて何もないさ。」リチャードは挑発的に答えた。


「あなたがルビーの涙を盗み、山田真琴を殺害したのは分かっています。あなたの目的は何ですか?」涼介が厳しい口調で尋ねた。


「目的?それはお前たちが考えることだ。」リチャードは嘲笑を浮かべた。


「いい加減にしなさい。私たちはもう手がかりを掴んでいる。」私は強い口調で言った。


その時、突然部屋の窓が割れ、銃声が響いた。リチャードは胸を押さえて崩れ落ちた。


「リチャード!」私は駆け寄り、彼の状態を確認したが、既に息絶えていた。


「誰が……」涼介が窓の外を見渡したが、暗殺者の姿は見えなかった。


「これでまた手がかりが消えたわ……」私は失望を隠せなかった。


その時、アリサが急いで部屋に駆け込んできた。「大変です、香織さん!ルビーの涙がまた偽物だと分かりました。」


「何ですって?」私は驚いた。


「本物のルビーの涙はまだ見つかっていないようです。」アリサは不安そうに言った。


「リチャードが本物の隠し場所を知っていたのかもしれない……でも、彼はもう話せない。」涼介が唇を噛んだ。


「でも、まだ手がかりはあるはずよ。みんなをダイニングルームに集めて、全てを明らかにしましょう。」私は決意を固めた。


翌日、ダイニングルームに全員が集まった。乗客たちは不安と緊張が入り混じった表情を浮かべていた。私は壇上に立ち、全ての視線を集めた。


「皆さん、今回の事件の真相を明らかにするためにお集まりいただきました。」私は静かに話し始めた。


「この船で起こった一連の事件には、ある一人の男が関わっていました。彼の名はリチャード・クイン。しかし、彼は昨夜、何者かによって暗殺されました。」


乗客たちはざわめき始めたが、私は続けた。「リチャードはルビーの涙を盗んだ張本人であり、山田真琴を殺害した犯人でもありました。しかし、彼が持っていたルビーの涙は全て偽物でした。」


「本物のルビーの涙はまだ見つかっていないのです。」涼介が補足した。


「リチャードの計画は何だったのでしょうか?」アリサが疑問を投げかけた。


「彼の目的は、おそらく本物のルビーの涙を手に入れることだったのでしょう。偽物を使って私たちを混乱させ、本物を隠すための時間稼ぎをしていたのです。」私は推測を述べた。


「そして、彼を消したのは、彼が本物の隠し場所を知っていたからでしょう。」涼介が付け加えた。


「ですが、私たちはもう一つの手がかりを持っています。」私は取り出したメモを見せた。「リチャードの所持品から見つけたこのメモには、本物のルビーの涙が隠されている場所が示されていました。」


「それはどこに?」乗客の一人が尋ねた。


「船の中央部、旧貨物室です。」私は答えた。


「さあ、皆さん。私たちはこれから旧貨物室に向かい、本物のルビーの涙を見つけるつもりです。」私は力強く言った。


「一緒に来てください。これで全ての謎が解けるはずです。」涼介が皆を促した。


ダイニングルームに乗客たちが集まり、私たちは全員の前で真実を明らかにする時が来た。


「皆さん、これまでの捜査で分かったことをお話しします。実は、事件の背後にはもう一人の黒幕がいます。」私は静かに言った。


「その人物は、クレア・スミスです。」私はクレアの方を見つめた。


クレアは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静を装った。「何を言っているの?私がそんなことをするはずがないわ。」


「クレアさん、あなたはルビーの涙に多額の保険をかけていました。そして、盗まれたルビーが本物であると見せかけるために、リチャード・クインを雇い、殺人を起こして私たちの目を逸らそうとしたのです。」私は断言した。


乗客たちは驚きの声を上げ、クレアの方を注視した。


「それは……」クレアは言葉を詰まらせた。


「さらに、リチャードを暗殺したのもあなたの手下です。彼が全てを話す前に口封じをするために。」涼介が鋭く指摘した。


「そんな……証拠があるの?」クレアは挑戦的に言ったが、その声には動揺が隠せなかった。


「証拠はここにあります。」私はリチャードの所持品から見つけたメモを見せた。「このメモには、あなたがリチャードに指示を出していたことが記されています。」


クレアは一瞬だけ目を泳がせたが、すぐに冷静さを取り戻した。「そんなもの、ただの偶然かもしれない。」


「いいえ、クレアさん。これで全てが明らかになったのです。あなたの計画は失敗しました。」私は毅然と言い放った。


その瞬間、クレアは突然動き出し、部屋の外へ逃げ出そうとした。「誰にも捕まるものか!」


「逃げるんじゃない!」涼介が叫び、彼女を追いかけた。


涼介の俊敏な動きでクレアはすぐに捕まり、彼は彼女の腕をしっかりと掴んだ。「これで終わりだ、クレア。」


「離しなさい!」クレアは必死にもがいたが、涼介の力には抗えなかった。


「あなたの罪は全て暴かれました。もう逃げられません。」私は冷静に言った。


クレアは観念し、手錠をかけられた。乗客たちは安堵と驚きの入り混じった表情で私たちを見つめていた。


「これで事件は解決しました。」私は全員に向かって宣言した。


「ありがとうございます、香織さん、涼介さん。」アリサが感謝の言葉を述べた。


「これからは平和な船旅が続くことでしょう。」涼介は微笑みながら答えた。


「そうね。でも、私たちの仕事はまだ終わっていないわ。次の依頼が待っている。」私は力強く言った。


次回、「旧貨物室の謎」。香織と涼介が旧貨物室で本物のルビーの涙を探し出し、事件の全貌が明らかになる。お楽しみに!

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