第4話 最初の殺人
「ルビーの涙」の盗難事件が発生した夜、スターオーシャン号の豪華な雰囲気は一変していた。緊迫感が漂う船内では、全ての乗客と船員が疑心暗鬼に陥っていた。私と涼介は、手がかりを追うために行動を開始していた。
船長の瀬川雅人が現場に駆けつけ、指示を出していた。「全員、船内のどこにも行かないでください。捜査が終わるまでこのホールに留まってください。」
「船長、私たちに協力させてください。捜査を進めるには時間が必要です。」私は船長に頼み込んだ。
「もちろんです、三田村さん。あなたたちの協力を大いに頼りにしています。」瀬川船長は深く頷いた。
涼介と私は、まずエリック・ホールの部屋を調べることにした。彼がオークションの主催者であり、事件の中心にいることから、何か手がかりが見つかるかもしれないと思ったからだ。
ホールの部屋に入ると、そこは豪華な装飾品と美術品で埋め尽くされていた。彼のコレクションの一部が展示されている様子だった。
「涼介、この部屋をくまなく調べてみて。」私は指示を出し、部屋の中をじっくりと見渡した。
涼介は引き出しを開け、机の上に散らばっている書類を調べていた。その時、彼は何かを見つけたようだった。
「香織、これを見て。」涼介が手にしたのは、一枚のメモだった。そこには、「取引は今夜12時、ラウンジにて」と書かれていた。
「取引……?」私は眉をひそめた。「もしかすると、何か不正な取引が行われているのかもしれないわ。」
「うん、これは重要な手がかりだね。」涼介はメモを慎重にポケットにしまった。
その時、船内に再び緊急のアナウンスが響き渡った。「全乗客の皆様、至急ラウンジへ集合してください。繰り返します、全乗客はラウンジへ集合してください。」
私たちは急いでラウンジへ向かった。到着すると、そこには警備員と船員たちが取り囲む中、一人の男性が倒れていた。
「これは……!」涼介が驚いた声を上げた。
倒れているのは若手画家の山田真琴だった。彼の顔は蒼白で、胸には血がにじんでいた。
「なんてこと……」私は急いで彼の脈を確認したが、既に遅かった。彼は息絶えていた。
船長が再び現場に駆けつけ、事態の深刻さを理解した。「これは単なる盗難事件ではない。殺人事件だ。」
「船長、全ての出入口を封鎖してください。犯人が逃げないようにする必要があります。」私は即座に指示を出した。
「了解です、三田村さん。」船長は警備員に指示を出し、船内のセキュリティを強化した。
私は涼介と共に、山田真琴の遺体を詳しく調べ始めた。彼のポケットからは一枚の紙が見つかった。それは、同じメモだった。「取引は今夜12時、ラウンジにて」
「これは……何か大きな陰謀が隠されているわね。」私は呟いた。
「香織、これはただの偶然じゃない。何かもっと深い理由があるんだ。」涼介が冷静に言った。
次に、ラウンジ内の聞き込みを開始した。招待客たちは皆、一様に驚きと恐怖を隠せずにいた。特に、クレア・スミスは震える手でグラスを握りしめていた。
「どうしてこんなことが……」クレアは涙を浮かべながら言った。
「クレアさん、落ち着いてください。私たちが必ずこの事件を解決します。」私は彼女を慰めるように声をかけた。
涼介と私は次々と招待客たちから話を聞いた。その中には、エリック・ホールもいた。
「エリックさん、何か心当たりはありますか?」私は直接的に尋ねた。
「いや、何も……ただ、こんなことになるとは……」ホールは困惑した表情を見せた。
夜が更け、船内の捜査は続いた。私たちは手がかりを求めて動き回り、次々と謎を解き明かしていった。
「涼介、この事件の背後には必ず大きな陰謀があるわ。手がかりを見逃さずに、慎重に進めましょう。」私は彼に強く言い聞かせた。
「了解、香織。僕たちの探偵コンビで、この謎を必ず解き明かそう。」涼介は決意を新たに、次の手がかりを追うために歩みを進めた。
次回、「新たな手がかり」。香織と涼介の捜査がさらに深まり、犯人の正体に迫る。お楽しみに!
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