第3話 秘宝の盗難

夜が更け、スターオーシャン号の豪華なダイニングルームは、美しい音楽と共にディナーが始まっていた。シャンデリアの煌めきがシャンパンのグラスに反射し、上品な食事が次々と提供されていく。


「香織、このフォアグラ、最高だよ!」涼介は口いっぱいに料理を頬張りながら言った。


「涼介、もう少し落ち着いて食べなさい。」私は微笑んで彼をたしなめた。


豪華なディナーを楽しんでいると、エリック・ホールが壇上に立ち、マイクを握った。


「皆さん、ようこそお集まりいただきました。今夜のハイライトは、これから始まるオークションです。特に注目していただきたいのは、伝説の秘宝『ルビーの涙』です!」


ホールの言葉に、会場中がざわめき立った。私たちもその興奮に引き込まれ、視線を壇上に向けた。


ホールの合図で、豪華なケースに入った「ルビーの涙」が登場した。その輝きはまるで星のようで、見る者すべてを魅了する。


「さぁ、皆さん。この美しい宝石を目の前にして、どのような思いを抱かれるでしょうか。オークションはまもなく開始されますが、その前に少しだけ、この秘宝の歴史についてお話ししましょう。」


ホールが「ルビーの涙」の歴史を語り始めると、会場内は静まり返った。その間、私は涼介と目を合わせ、微かな緊張感を共有した。


突然、会場の照明が一瞬だけ消えた。その瞬間、何かが起きたことを直感で感じ取った。照明が戻ると、壇上にはあったはずの「ルビーの涙」が消えていた。


「何だ?」「一体どうなっているんだ?」会場中が騒然とし、ざわめきが広がった。


「涼介、急いで!」私は彼に指示を飛ばし、壇上に駆け寄った。


エリック・ホールは茫然自失の状態で、盗難に気づいた警備員たちが慌てて駆けつけていた。


「一体どうなっているんですか?」私はホールに問いただした。


「わ、わからない……。たった今、ルビーの涙が消えたんだ。」ホールは混乱した様子で答えた。


「すぐに会場を封鎖してください。犯人がまだ船内にいるはずです。」私は冷静に指示を出し、涼介と共に現場の調査を始めた。


まず、壇上と周囲をくまなく調べる。照明が消えた瞬間に何が起きたのか、少しずつ手がかりを集めていった。


「香織、こっちを見て!」涼介が声を上げた。彼が指差したのは、壇上の隅に落ちていた小さな布片だった。


「これは……」私はその布片を拾い上げ、慎重に観察した。「何かの手がかりかもしれないわ。」


次に、会場内の全員に事情を聞くことにした。招待客たちはそれぞれが驚きと不安を隠せずにいた。特に、クレア・スミスは涙を浮かべながら状況を見守っていた。


「どうしてこんなことに……」クレアは声を震わせて言った。


「クレアさん、落ち着いてください。必ずルビーの涙を取り戻します。」私は彼女を慰めるように声をかけた。


その後、私は涼介と共に現場の聞き込みを続けた。参加者たちの中には、怪しい動きを見せる者もいたが、決定的な証拠にはまだ至っていなかった。


「香織、この中に犯人がいることは間違いないね。」涼介は低い声で言った。


「そうね、涼介。でも、焦らず慎重に進めましょう。」私は彼に頷き、捜査を続ける決意を固めた。


夜が深まり、スターオーシャン号は静かな海を進んでいく。私たちは船内をくまなく捜索し、次々と手がかりを探していった。果たして、犯人は誰なのか?そして、ルビーの涙はどこに隠されているのか?


「涼介、これからが本番ね。しっかりと事件を解決しましょう。」私は彼にそう言い、次の手がかりを追うために歩みを進めた。


次回、「新たな手がかり」。香織と涼介の捜査がさらに深まり、犯人の正体に迫る。お楽しみに!

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