崇眼

 ウイノはおこりんぼさんでした。トロい家族に、新しい家族が生まれる樹に、いつもおこっていました。

 ウイノはクッキー作りが大好きでした。いつもみんなに作ってあげるんです。でも本当は、みんなのことが嫌いです。大嫌いです。


 最近友達のアヤカに妹ができました。久しぶりの子どもだからって、森のみんなが喜んでいました。

「たった1人に何を喜ぶことがあるのかしら。」

そう思いました。そう思いながらクッキーを焼きました。


 おばあちゃんに会いました。森の奥の方にある暗くて大きな樹の中に、薬屋のおばあちゃんは住んでいます。


 おばあちゃんからお薬をもらいました。『すいみんやく』というそうです。

「よく眠れるからね。」

おばあちゃんはこれを飲んで眠ってみせました。本当によく効くお薬です。


 ウイノは帰ってからすぐにお母さんとお父さんの夜ご飯に混ぜました。最近は眠れないみたいだから。きっとよく眠れるはずです。


 お母さんとお父さんは起きてきません。暇です。


 クッキーに混ぜてみました。きっとみんなよく眠れます。いつもみんなはウイノのクッキーをおいしいと言って食べてくれます。嬉しくなります。


 みんな寝ました。おやすみなさい。


 みんな寝ていて暇です。ウイノもクッキーを食べます。起きたときにみんなをびっくりさせたくていっぱいつくったのに。みんな全然起きてこないんですから。


 やっぱりウイノはだめでした。クッキー、少し味が悪かったんですね。みんなに悪いのをあげちゃった。いつも食べてくれてたアヤカちゃんに謝らなければいけません。

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