メモリー

黒園ゆうり

彩眼

『アヤカの妹がうまれて家族みんな幸せになるはずでした。

「可愛くない」

が本音です。たくさんお母さんのお手伝いをして、たくさん妹の面倒を見たんです。おむつを変えてミルクを飲ませてお風呂にも入れました。毎日です。たまにお母さんとお父さんがいなくなる日は1日中お世話をします。

それでも、アヤカは妹を可愛いと思えませんでした。朝から夜まで1日中泣いている気がします。


 もうたくさんです。そう思ったとき、お友達のウイノちゃんが甘いクッキーをくれました。とても甘くてとろけちゃいそうです。


 そのクッキーが、アヤカは大好きです。妹のことなんか忘れるくらい、そのクッキーのことを考えます。そしたら、妹の泣き声は聞こえなくなります。そしたらまた、クッキーのことを考えます。アヤカの最近のしゅ味です。


 アヤカは幸せ者です。妹がいなくなりました。大好きだったお母さんがいなくなって、悲しかったですけど、妹もいなくなりました。とっても楽しくなったけど、アヤカはまたクッキーのことが気になります。クッキーが食べたいです。でも、なんだか最近はクッキーが怖いです。甘くてとろけちゃうくらい好きなのに。不思議だなぁ。ウイノちゃんが最近ここに来ないからなぁ。


「クッキー、ください。きょうはチョコクッキーがいいです。きれいな石と、これと、こうかんしてください。」』


アヤカは今日も幸せです。

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