Sleeper ーネムルヒトー

「—―まだ眠っているのかい?」


「—―ええ、まだみたいです」


「—―丸3日ですね。死んだわけではないんですよね?」


「—―息はしています。魔力の使い過ぎです」


「—―1人であの魔物を倒したんですよ。そりゃ魔力切れになります」


「—―風使いは役立たずだったんですから。彼に感謝しないと」


「—―しかし、自然魔法を使えるとはな。いったい何者なんだ?記憶喪失だとますます謎が深まるばかりだ」


「—―あ、そろそろ時間です。お邪魔しました、ミカゼ様」


「—―いえ。レンが起きた時はまたお呼びします」



……ミカゼ、さん……?


うっすら目を開けると、そこはいつもの部屋だった。

起き上がろうとすると、体に力が入らなかった。


そういえば、俺は何をしていたんだ。

魔物と戦っていたのは覚えている。

そのあとが全く記憶にない。


「……レン?レン!目を覚ましたか!!」


ミカゼさんの声が聞こえた。

閉じそうな目を頑張って開いて声の方に顔を向ける。


「ミカゼ、さん」


ミカゼさんの目に涙が浮かんでいる。

あとなぜか目にクマができている。


「良かった……お前、3日も眠っていたんだぞ!死んだのかと思って心配したんだ!!」


「……え、3日……!?」


起き上がりながら俺は焦る。


そんなに俺は寝ていたのか。

どうりで背中が痛いわけだ。


「そうだ。魔力を使いすぎて、倒れたそうだ。そのあと風使い達が運んでくれたのだ。……本当に魔物を倒したのか?」


「た、ぶん。全く覚えていませんが」


頭が痛い。


「急に魔物の相手をすると言って家を出たから、やられたのではないかと……どうだ、まだしんどいか?」


「……少しだけ」


「そうか、ならもう少し休みなさい」


あれは……夢ではなかったのか。

本当に魔物が現れたんだ。


指輪を見ると、昨日……いや、3日前とは変わらず宝石は濁っていた。


「あの、魔物は今……?」


「ここ3日は風の都には来ていない。だが、他の都も被害を受けているようだ」


「他の都も……?」


ミカゼさんは静かにうなずく。


「まだ死者は出ていないが、結界を強くせんといかん。また襲撃が来たら困る」


……魔物。

滅亡したはずなのに、復活したのか?

一体何があったんだ……?


それに、他の都も襲っているなんて……

死者が出ていないと聞いたが、大丈夫なのだろうか。



『—―大丈夫。お前ならやれる』



フラッシュバックして聞こえた声にハッとした。


そういえば、あの優しい声……

誰の声だったんだ……?


魔物の後ろに声の持ち主がいた気がする。

光に覆われていて見えなかったけど。

顔も姿も何も……


その瞬間、激しい頭痛が来た。


「うっ……」


力尽きて、ベッドに倒れこむ。

頭が……痛い……


「レン!? 大丈夫か!?」


ミカゼさんが駆け寄る。


「……もう少し、寝ます」


「そうか……ゆっくり休みなさい」


そう言ってミカゼさんは布団をかけてくれた。

だんだん意識が遠くなり、俺は再び眠ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る