第二章 二節 血を啜る断頭台-"ブラッドイーター"-
民家が立ち並ぶ住宅街。緩い下り坂の歩道を、大神、鳥目、そしてミーアが並んで歩く。目的地である黒川高校方面の電車に乗るため、自宅から最寄り駅の東黒川駅に向かっていた。
大神はワイシャツの上からパーカーを羽織っているだけで学校指定の制服は着ておらず、左手に持った黒い手提げ鞄を肩に引っ掛けるようにしてだらだらと歩いている。ワイシャツだけでも着ておけば許されるくらい校則が緩いため、私服に近い格好で登校する生徒が多いのだ。
ミーアは大きな赤いリボンがついたキャスケットを被り、襟や裾に赤色の刺繍が施された長袖の白いコートに身を包んでいる。そして、幅広の日傘を差して大神の後ろをついてきていた。
「人の集まる場所なら騒ぎを起こしにくい、か。よくそんなこと思いついたな、鳥目」
「サスペンス系の作品とかによく登場する手法だから、ふと思いついたの。私、読書が好きだから……」
あはー、と照れ隠しに頬を掻く鳥目。そういえば新学期が始まって席が隣になってから、休み時間はずっと席で本を読んでいたことを大神は思い出した。
鳥目には先程、『ミーアは悪い人に追われていて、自分が匿っている。事情があって警察や
小川を跨ぐ小さな橋を渡る。静かな春風に髪を揺らす鳥目が、遠い空を見上げた。
「それにしても、ミーアちゃんは吸血鬼、だっけ? もうなんでもアリだね、この世界」
彼女の視線の先、流れる白い雲が浮かぶ遠い東の空に『亀裂』が走っている。それは比喩でも何でもなく、空に空いた空虚なヒビだ。
場所は新宿の都庁上空。神の指先が貫いて現れた空に、今も残る正体不明の真っ黒な亀裂だ。その向こう側を調査しようと飛ばされたカメラ付きのドローンは、ヒビの中に侵入した瞬間から何も映さず、操作不能に陥ったという。この世界に残された、大きな大きな
「なんでもアリ、か。確かにそうみたいだな。ていうか、吸血鬼の存在を随分とあっさり受け入れるんだな」
「昨日色々なことが起きたから、もしかしたら感覚が麻痺してるのかも。大神くんが
「あまり知り合いに見せるつもりは無かったんだけどな。学校の中じゃ、普通の一般高校生ってことで頼む」
「助けてくれた時の約束だもん、もちろん黙っておくよ!」
鳥目が一片の曇りもない笑顔で応えた。その眩しさに、大神の中で何かがズキッと痛んだ。
「病院で目が覚めた時、救急の人から大神くんの名刺を見せてもらって、大神くんが
常識の外側の存在、非日常との戦いが日常になってしまった大神としては、一般人としての日常を生きる鳥目を巻き込むことは避けたかった。
だが、そんな負い目を感じる大神に、鳥目は明るい微笑みを返してくれた。協力者を得ると同時に、守るべき存在が増えてしまった事実に、大神は歯痒さを感じられずにいられなかった。
肩を並べて歩いている二人をミーアが追い越し、大神の前でくるりと振り向いてきた。
「クーヤ、学校ってどんなところ? わたし、楽しみ!」
「楽しいことなんて何もないぞ。硬い椅子に小一時間拘束されて、眠たくなるような話を延々と聞かされる。それを一日に六回も繰り返すんだ。しかも、昼間には校内を掃除させられるオマケつき。刑務所内の更生施設みたいなモンだな」
「……楽しくなさそう」
自分の立場をわかってるのかわかってないのか、学校に行くことが決まった時からルンルン気分のミーアに、大神がつらい現実を突きつける。まるで枯れたヒマワリのように下を向いてしょぼくれてしまった。
「そんなに辛い場所でもないと思うけどなぁ。とにかく、学校に着いたら空き教室にミーアちゃんを匿うってことでいいよね?」
「そうだな。確か一階の奥に二部屋くらいあったはずだ」
少子化の影響でただでさえ入学者が減少していた近年の黒川高校。追い打ちをかけるように発生した神の指先事件により、今も黒い液体に塗り潰されたまま機能停止している二十三区から人が流れて来なくなったことで、空き教室が増えているのだった。
下り坂が終わり、駅前の交差点で立ち止まる。赤は止まれ、青は進め。そんな
(吸血鬼を跳ねた場合、運転手に法律は適用されるんだろうか?)
大神はそんな現実離れした疑問を抱えながら、青になった歩行者信号を合図に道路を横断する。東黒川駅に到着し、そのまま地下にある改札口へと向かう途中、ミーアが下りエスカレーターの前で立ち止まった。先行していた大神と鳥目は、すでに下階に運ばれている最中だ。
「……クーヤ! 床が流れてく!」
「無理しないで階段で降りてこいよ」
「ヤダ! わたし、この奇怪な敵に勝ってみせる!」
謎のプライドを掲げつつもエスカレーターの前で足踏みするミーアを、通行人たちが怪訝な目で見つめている。ハッキリ言って、バカみたいに目立っている。
「……やっぱり家にいた方がよかったんじゃないか?」
「確かにそうかもね……」
白いブーツの爪先で下りエスカレーターと格闘するミーアを眺めながら、大神と鳥目が作戦の失敗を直感した。
**
『お客様にお知らせいたします。先ほど当駅におきまして、二番線ホームに進入中の列車と線路の間に異音を感知したため、列車が緊急停止しております。このため、二番線の黒川大学・黒川高校方面行きの運転を見合わせます。本日は列車が遅れまして、誠に申し訳ございません。繰り返し、お客様にお知らせいたします――』
東黒川駅地下一階の構内に、駅員のアナウンスが響く。改札前の天井から吊られた電光掲示板にも同様の趣旨のお知らせが流れており、黒川高校の最寄り駅に向かう電車に乗れないことを示唆していた。
「あはー……これは遅刻確定だね大神くん」
「むしろ好都合だろ。誰かさんがエスカレーターに惨敗したせいで、ホームルームに間に合う電車逃してるし。遅延証明持って堂々と遅刻しようぜ」
「エスカレーターは強敵だったよ、クーヤ。でも次こそ勝ってみせるよ」
「何を根拠に何と張り合ってるんだ、この白いのは」
絶対的な自信を掲げ、絶望的に無い胸を張るミーアに思わずツッコミを入れる大神。ミーアがエスカレーターを睨みながら不服そうな顔で階段を駆け降りてきた頃には、前の電車の発車ベルが鳴り終わっていたのだった。
改札の前には同じように電光掲示板を見上げ、やれやれと言った風に立ち尽くす人々がいる。そのほとんどは大神たちより年上の大学生らしき青年たちと、スーツを着たサラリーマンたちであり、見知った制服を着た学生の姿はなかった。
(ひとまず、知り合いにミーアが見つかることは無さそうだな。もしここに追っ手が紛れてても、こんな人混みじゃ手を出してこない……よな?)
吸血鬼を追い回すような明らかに一般人離れした相手が、まともな倫理観の持ち主であるとも限らない。いきなり駅構内が戦場になる可能性を捨てきれず、大神は周囲への警戒を継続する。もっとも、それを言い出したら学校に匿うという鳥目のアイデアも否定することになるのだが。
万に一つも襲われる可能性が無くても、万が一の可能性で襲われた場合を考慮し、大神は監視カメラの位置を確認する。隠匿していた吸血鬼の存在が映像に残るのは追っ手も嫌うだろうと判断し、カメラの死角にだけ入らないように立ち位置を調整する。あれらのカメラが犯罪抑止のためだけに作られた
と、その時だった。
「……なんか、騒がしいね?」
鳥目の言葉に、大神は駅構内を見渡す。彼女の言う通り、複数の叫びや怒号のようなものが聞こえてきた。
遅れている電車に対するクレームやブーイング……といった様子ではなかった。しばらくすると、改札の中、ホームに繋がる通路の向こうから、人の波が押し寄せてきた。
「な、なんだ……?」
一斉に改札口に駆け戻ってきた駅利用者たちが、同じ方向に走る者たちとぶつかり合い、押し合い、我先にと改札に到達する。切符やICカードを通すわけでもなく、飛び越えるようにして自動改札機を抜けていく。警告音を鳴らして閉じるゲートがその流れを詰まらせるが、阻まれた者たちが力ずくでこじあけ、弾丸のように人が飛び出てきた。
駅員室の窓からその様子を見て呆気に取られていた女性駅員が、改札を通り抜けていく人々に声をかける。が、誰一人として聞いていない様子だ。彼らは皆その顔に焦燥と恐怖を貼り付けている。隣を走る者とぶつかり転倒した若い男が、その背中を無数の足に踏まれて悲鳴を上げるも、救いの手を差し伸べるために立ち止まる者はいなかった。
「大神くん……これって……」
阿鼻叫喚の光景に立ち竦む鳥目の前を、出口に向かう人々が駆け抜けていく。彼女を含めた三人とも、その波に飲まれないよう壁際に追いやられてしまった。
大神は何かが起きている改札の向こうを見て、そして確信した。
「……出やがった」
「クーヤも気付いた? いるよ、すぐそこに」
大神の鋭い嗅覚を刺したのは、強い血の匂いだった。吸血鬼だからか、ミーアもその匂いを感じ取ったようだ。
「ひっ、ひぃっ! た、助け……!」
人々が走り抜けた少し後、遅れてやってきた最後尾の中年男性が右足を引きずりながら叫んだ。彼の通ったあとには真っ赤な足跡が付いており、それが彼の引きずる右足から流れ出た鮮血であることは明白だった。
直後、小太りした彼の体が硬い床に転倒した。泣きそうな顔で背後を振り向いた彼に、黒い影が覆い被さった。
それは、風が吹けば折れそうなほど細い、全長三メートルほどのシルエット。鋭い槍のような手足を持つ、黒いヒトガタ。その胸には孔が空いており、紅い双眸が顔のない頭部で揺らめいていた。
「ろ、
「スレンダーマン型……くそッ!」
怯える鳥目の前に立ち、右手のグローブを取り外す大神。襲われている男性を救出するべく走り出すが、その距離は十メートル以上。いくら強靭な脚力と瞬発力を持つ大神とはいえ、一瞬で詰められる距離ではない。
(間に合わない……!)
細い長槍のような右腕を振り上げた
その瞬間。
『げギャッ⁉︎』
仰向けになった男性の視界から
大神は自分の視界の端、すぐ隣から正面に向かって真っすぐに伸びているモノを見た。
それは、黒い鎖だ。先端に刃渡り一メートルほどの黒刃が括り付けられている。
「ミーア、よくやった!」
《
駅の白色灯を反射して鈍い光沢を放つ鎖が、自動改札機の上を通り抜け、今しがた吹き飛ばされた
慣性を失い落下したギロチンが重い金属音を上げる。直後、手繰り寄せられた鎖に引っ張られ、ビデオの巻き戻しのようにギロチンがミーアの下へと帰っていく。
ミーアはクロップドトップスの胸元を開けており、孔からは黒い鎖が伸びていた。いつの間に能力を発動したのかわからなかったが、およそ十メートル以上の距離を攻撃できるほど鎖を伸ばせるらしい。
「わたし、あの人を守る。クーヤ、見てて欲しい」
ミーアはそう言うと、白いコートを翻して軽やかに改札を飛び越えていった。黒い鎖が、ジャラジャラと無機質な金属音を奏でる。
『ご、ゲ?』
ひっくり返ったクワガタムシのように身じろぎしていたスレンダーマン型の
「き、キミは……?」
腰が抜けたまま震えた声を絞り出す男性に、ミーアは振り向かず告げる。
「クーヤが守ろうとした人なら、わたしも守る。わたし、クーヤのために戦う」
ミーアが燃えるような視線で
「なんつー切れ味だ……」
コンクリート製の床に深々と突き刺さった巨大な刃を見て、大神がぞっとする。昨晩はあの斬撃が頭上スレスレまで接近していたのだ。
そして改めて目を引くのは、身の丈ほどもある幅広の刃を振り回すミーアの膂力である。やはり体の構造が人間とは違うのだろうか。
ミーアはギロチンを軽々と引っこ抜くと、
「やああああああああっ!」
『ご、オォッ?』
圧倒的な膂力で振り回された質量が、
「おっと、見てる場合じゃなかったな」
呆気に取られていた大神だったが、我に返って自分も改札の中へと向かい、右足から血を流している男性の下へ駆けつけて肩を貸した。
「アンタ、大丈夫か? 今のうちに逃げるぞ」
「あ、ありがとう……! 死ぬところだった!」
「ヤツはどこから出て来た? 他に犠牲者はいるか?」
「急停止した電車の床を突き破って、下から出て来たんだ! その瞬間にみんなパニックになって……誰がやられたかなんて……!」
先ほどのアナウンスはそういうことか、と大神は理解した。おそらく電車と線路の間で発生したという異音の正体は、線路のどこかに潜んでいた
「血の匂いが多い……きっとホームの方にも怪我人がいるな。もし死人がいたら既に
大神の嗅覚はまさしく狼のように鋭い。匂いを細分化して判別するため、複数の匂いが入り混じっていても特定の匂いだけを補足することができるのだ。少なくとも今は目の前でミーアが戦っている
「わかったよ、クーヤ。コイツを倒せば終わるんだね?」
「あぁ、その通りだ。俺も加勢を――」
「違うよ、クーヤ。これは、わたしの戦い。わたしも強いんだってこと、クーヤに見て欲しいの」
それはまるで、守られるだけの存在じゃないと言いたげな表情だった。
ミーアは吸血鬼でもあり、
「わかった。お前に任せるぞ、ミーア。……鳥目!」
「えっ、あっ、うん!」
大神は遠く離れた位置で戦いを見守っている鳥目の名を叫んだ。急に呼ばれた鳥目は、一瞬びっくりしたように肩が跳ねていた。
「救急車を呼んでくれ、台数はありったけで頼む。死にかけてる人間がいるとしたら、放っておいたら
「わ、わかった! 任せて!」
鳥目は慌てた様子でスマホを取り出し、大きく深呼吸をしてから操作を始めた。彼女が救急を呼ぶ様子を見届けてから、大神は肩を貸した男性を改札の近くまで運んだ。駅員室に隠れていた若い女性駅員が泣きそうな顔を出してきたので、大神は男性の応急手当を彼女に任せた。
ミーアと
「さっきコンクリートをぶった切ったはずなのに、なんでヤツは切れないんだ……?」
最初は、
ミーアは鎖付きのギロチンを何度も振り回し、大振りの攻撃を繰り返している。しかし徐々にその勢いが失われていき、呼吸が荒くなっていた。
「はぁ、はぁ……っ! 喉が、渇いて……」
ミーアの華奢な体は、やがてギロチンを振り回すというよりギロチンに振り回されるような形となり、攻撃のたびに足がもつれている。
『ギ、えぁッ!』
「……⁉︎」
動きが鈍くなったミーアに、
ごろごろと転がり、床に倒れ込むミーア。額から流れる玉のような汗が彼女の疲弊を物語っている。
直角に折れたように小首を傾げながら、まだ死んでいないのかと言いたげにミーアへと近づく
「血……あった」
ミーアが床の一点を見つめる。そこには、先程足を引きずって逃げてきた男の血痕が。
真っ赤なソレを指でなぞり、口に運ぶ。まるで指についたチョコレートを舐めとるような仕草で。
『ぎ、ギョッ!』
両腕を掲げた
凄まじい突風が、
「あれは……翼?」
突風に煽られ、目を細める大神の視界に映ったのは、立ち上がったミーアの姿。その背中から、白いコートを突き破り、漆黒の双翼が生えていた。コウモリを思わせる形状の翼はミーアの身の丈を超える大きさだった。
「……まだ足りないけど、少しだけ本気を出せる。クーヤ、よく見ててね。わたしの、本当の力」
次の瞬間、数メートルの距離を一瞬で詰めたミーアが、
『が、ギャ︎?』
(速い……!)
目で追うのがやっとなほどの速度で跳んだミーアが
白い髪とコートを棚引かせながらミーアが軽やかに着地する。壁のシミになった
両手でギロチンを構えてミーアが飛翔した。突風を巻き起こし、駅の天井いっぱいまで飛び上がったミーアが、ギロチンを振り上げたまま滑空する。
『ア、ぎ……?』
紅い双眸に、巨大な黒刃が振り下ろされる。
「墜ちて――《
巨大なギロチンが、背後の壁もろとも
同時に、ミーアの
胸元のジッパーを上げたミーアが、鼻高々に駆け寄ってくる。
「クーヤ! わたし、勝ったよ! ふふん♪」
「あぁ、よくやった。ケガはないか?」
大神は右手にグローブを嵌め、ミーアの体を見回す。どうやら無事のようだ。
「心配無用だよ。ちょっとでも血を飲めれば、吸血鬼は無敵なの。でも今の戦いでまた喉渇いたなぁ……」
それまでの威勢はどこへやら。ミーアがしおれるようにして大神にもたれかかってくるが、抱き寄せてよしよしするようなキャラでもない大神という男は、指をスッとデコピンの形にする。まるで躾けられた子犬のように、ミーアが条件反射で身を引いた。
「しかしすごい切れ味だな、お前のギロチン。でも切れる時と切れない時があるのはなんでだ?」
「ギロチンっていうのはね、受刑者に苦しみを与えず即死させることを目的に開発された、必殺の処刑器具なの。その刃が落とされたら、受刑者は確実に死ぬことになる――つまり、わたしのギロチンは『垂直に振り下ろされた時だけ対象を必ず両断』するって能力なの」
ギロチンを用いた世界最多の処刑数を誇るドイツの処刑人、ヨハン=ライヒハート。第二位の処刑数を誇る、フランスのシャルル=アンリ・サンソン。その他多数の処刑人がギロチンを用いて死刑を執行した史実がある。彼らはいずれも、受刑者に苦しみを与えず、かつ効率よく刑を執行することを目的にギロチンを使っていたという。重さと形状を計算して作られたギロチンは、人間の首を一撃で落とすことのみに特化した処刑器具なのだ。
「ギロチンのあまりの切れ味に、落とされた生首が瞬きしたり、喋ったりしたっていう逸話もあるの。わたしの《
「お前、知識がない割にそういう難しいことは知ってるんだな……」
「自分の能力のことくらい、知ってるのは普通なんじゃないかな?」
当たり前のことを聞かれて回答に困ったように、ミーアが首を傾げた。大神も言われてみればそれもそうか、と思いつつ。
(俺の能力――未だによくわかんないんだよな……)
どんなモノもその牙で破壊する、大神の右腕に宿った《
しかし北欧神話におけるフェンリルとは、ただそれだけの存在だっただろうか?
緊張感もなくそんな話をしていると、地上からサイレンの音が聞こえて来た。おそらく救急車と、警察車両だろう。
「事情聴取とかされたら説明が面倒くさいな、今回は仕事でも何でもないし……。あとのことは任せて外に出よう。どうせ電車は動かないだろ」
鳥目と合流し、エレベーターで地上階へと上がる。タイミングよく駅前を通りかかったタクシーを捕まえ、三人は黒川高校へと向かう。
時刻は午前八時過ぎ。あと数分で正門が閉められ、ホームルームが始まる時間だ。タクシーの中で鳥目が学校に電話し、
「これ、料金いくらになるんだ……」
情け容赦なく数字の増えていくメーターを後部座席から睨みつけたまま、貧乏学生の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます