ドミソラジオ

第二章

オープニングトーク

「ドー！ どんな時もー！」

「ミー、みんなのためにー」

「そ、ソー。それがこのー」

「ラー！ ラジオ番組ー！ という事で、ドミソラジオ、はっじまるよー！」

　タイトルコールが終わると同時にコミカルな音楽が流れだし、向かいに座る奏空が楽しそうに拍手をし始めた。

「はいっ！ という事で、本日も始まりました。ドミソラジオー！ パーソナリティーは皆さんのお耳の恋人のソラ、そして前回からアシスタントをしてくれているのが～？」

「はい、アシスタントのリクです。えー、皆さん。前回は配信を切り忘れるというミスをしてしまい、本当にすみませんでした」

「いやー、あれは本当に驚いたよ。私でもやっちゃうもんだね、うん」

「驚いたのはこっちなんだけどな。さて、事前に告知をさせていただいていましたが、今回はゲストをお招きしています」

「そうそう、私の希望でね。という事で、ゲストは～？」

　俺の隣に座る狂我弥が少し緊張気味に話し始める。

「あ、はい。皆さん、どうもこんばんは。ソラジオネーム、狂いながら歌うこと小説家の狂歌です」

　その瞬間、コメント欄に次々とコメントが流れていく。

『リスナーからのゲストキター！(ﾟ∀ﾟ 三 ﾟ∀ﾟ)』

『というか、狂いながら歌う氏が小説家の狂歌先生でソラタソ達の学生時代からの知り合いとかそんなことあるんだな』

『これは作家同士の話とか期待出来るか！？』

「そ、そこまで期待されても……」

「まあ、そこは期待してもらうとして」

「ソラ！？」

　狂我弥が驚く中、奏空はクスクス笑った。

「だって、私も色々話したかったんだよ？ 狂歌君、今でも交流ある組と違って会わない期間が長かったし、この前のパーティーでも話せなかったからさー」

「お前がいたのに気づけなかったのは悪かった。ただ、俺も色々あってさ」

「あー、わかった。そういう事か……」

「ん？」

「ソラ？」

「みぬ──」

『グラーヴェ！』

　すかさず俺はボタンを押して、奏空の発言を遮る。

「ふう、危ない危ない……」

「そうか、こんな風にやってたんだな。これって」

「そうだよ。というか、それ意味が違う言葉だろ」

「まー、三次元じゃなくて二次元のおにゃのこの話だしねー」

「いや、だとしても俺はしてなかったからな！？」

　狂我弥の声が響く中、コメント欄が賑わい始める。

『みぬって……あー、そういう事か……』

『溜まってる……って奴なのかな？』

『しょうがないにゃあ(ФωФ)』

『いいよ』

「おー、流石の連携力」

「このネタ、わかる人いっぱいいるんだな……」

　狂我弥が驚く中、奏空は真剣な顔をし始めた。

「狂歌」

「ん？ どったあ？」

「好きだよ」

「おっと……なんだなんだあ？」

　狂我弥は満更でもなさそうな顔をする。

「よ、よせやい……リクもいる前で照れるだろ？」

「じゃあ、これ拡散するわ」

「おいおい！ ちょい待ちなさいな！ 拡散はいかんだろお！？」

「というか、配信してるから拡散もなにもなかったね」

　狂我弥はハッとする。

「た、たしかに……」

「ふふっ、焦っちゃって。かあいいなあ」

　クスクス笑う奏空を見ながら狂我弥が呆然とする中、コメント欄は賑わっていた。

『狂歌先生、思っていたよりも萌えキャラか？(*´Д｀)ハァハァ』

『簡単に相手を手のひらでコロコロするソラタソかわゆす』

『というか、りっくんの目の前で好きとか普通に言ってるけど大丈夫なんか？』

「ん？ ソラはこういう奴だからな。それわかってるからこそこのくらいじゃ何も言わないさ。ソラだってある程度の線引きはして発言するからな」

『は？ イケメンかよ』

『イケメンだよ(憤怒)』

『イケボな上に発言までイケメンとかヤバすぎだろ。掘られたいわ』

　コメント欄は相変わらずであり、狂我弥はその様子を物珍しそうに見ていた。

「なんかこうして配信する側になるとまた違うもんだな」

「そうだな。さて、改めてこのラジオの説明をするか。このドミソラジオは夜の九時から十一時までの二時間お送りするもので、様々なコーナーが番組内にあります。なので、それに対してのコメントはコメント欄に、おたよりは概要欄から飛べるメールフォームにお願いします。尚、おたよりにはソラジオネームを記載してもらいますが、匿名でも大丈夫なのでお気軽におたよりをください。よろしくお願いします」

「リク、二回目なのにだいぶ慣れた感じじゃないか？」

「昨日の内に反復練習しておいたんだよ。せっかく一日あったからな。それくらいは必要だろ？」

「努力家だな。なんか尊敬するよ」

「ありがとうな。ところでソラ、今回はあれもあっただろ？」

「あ、そうそう！」

　ソラは目を輝かせながらマイクに口を近づける。

「さっきリクに押してもらったボタン、こちらの名前も今回募集しています。ふつおた以降にあるコーナーで送ってもらったアイデアは発表し、コーナー内で決定しようと思いますのでよろしくお願いします」

「俺は音楽ボタンでいいと思ったんだけどな」

「お、音楽ボタン？」

「ああ。音楽の用語が出てくるボタンだし、それでいいだろ？」

「そ、それはそうだけど……」

　コメント欄も少しざわつき始めた。

『う、うん……い、いいんじゃないかな？(￣▽￣;)アハハ…』

『りっくんはそのタイプか……』

『けど、意外となしじゃないのがまたな……』

『コメントしづらいのやめちくり』

「うん？ みんな、どうしたんだ？」

「あはは……まあそれは置いといて。今後もゲストは呼んでいきたいんだけど、基本的には今回みたいに知り合いとかDMで連絡できる人に限られるかな。本当はみんなを呼びたいけど、知られてるのはリクの住所だからねえ」

「そういや、そうだった……」

「うん、ドンマイ」

　狂我弥が背中をポンポン叩いてくれる。それは嬉しいが、個人情報を恋人に言いふらされている事実は中々心にくるものがあった。

「そんなこんなで本日もドミソラジオは始まってくんだけど、ここで一つお知らせがあります」

「お知らせ？ 打ち合わせではなにも言ってなかっただろ？」

「秘密にしてたから。あのね、ソラジオの時はファンネームを仔猫にしてたんだ。んで、ドミソラジオは仔犬にしようかと」

「仔犬……ああ、ムーンがマスコットだからか」

「そういうこと。という事で……仔犬のみんな、今日も盛り上がってくぞー！」

　奏空の呼び掛けにコメント欄がすぐさま応える。

『アオーン！』

「まだまだ足りないぞ、もっと吠えろー！」

『アオオーン！』

「夜に遠吠えは近所迷惑だぞー！」

『すみませーん！』

「うーん、この」

「ほんと仔犬達って訓練されてるよな。ブリーダーもビックリだ」

　コメント欄の連携に俺達が感心する中、奏空は満足そうな顔をした。

「うん！ やっぱりみんないいね！」

「訓練され過ぎな気もするけどな」

「いいんだよ、これで。ところで……リク、試しに仔猫ちゃんって言ってみてよ。いい声で」

「いい声？ んー……自信ないけど、まずやってみるな」

「ワクワク」

「……仔猫ちゃん。今夜は楽しんでいってくれよな？」

　その瞬間、コメント欄が加速した。

『(✽︎´ཫ`✽︎)ｸﾞﾊｯ』

『な、なんだこの破壊力は……！？』

『おい！ 衛生兵はまだなのか！？』

『て、手当てが追い付きません！』

『こ、これが新型音響兵器のりっくんの力なのか……！？』

「……奏空、コメント欄がだいぶヤバいけど、いいのか？」

　奏空は満足そうな顔で頷く。

「いいんだよ、これで。みんな喜んでるし。私もいい声聞けて満足満足」

「それならいいけどな……」

「あはは……まあそれはさておき、始めていこうぜ？」

「そうだね。ドミソラジオ、始まり始まりー！」

　そうしてドミソラジオの第二回配信が幕を開けた。