むさぼりあう、ふたり
朝目が覚めると、ゾンビになっていた。ゾンビを実際に見たことがあるわけじゃないけど、映画の知識で十分。頭を掻きむしると毛がズボズボ抜け落ちる。指をポキッと鳴らせば折れる。カルシウムが圧倒的に足りない。牛乳を飲めば骨も皮膚もすぐに強くなる。
思っていた以上に腐ってはいない。人としての形を維持するのにたくさんのカロリーが必要みたい。すぐお腹が減るもの。そのせいか、胃が丈夫になっている。冷蔵庫の豚肉の塊をどうしても食べたくなって、生のまま食べた。お腹は壊さなかった。
起き抜けの夫が、私を見て何か言っている。私も舌の劣化が激しくて、しっかり話せない。生肉を置いたら、夫は叫んで二階に駆け上がり、息子を抱いて逃げた。だれも取って喰わないわ。理性があるもの。
見計らったようにクローゼットから不倫相手が出てきた。でも、どうして二人ともゾンビになったのかしら。私たちは、空腹に耐えられずお互いの身体をむさぼりあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます