それも、ぜんぶ、私
物心ついた頃には集中力がないと自覚できるようになっていた。とにかく、意識が散漫だ。料理しながら、シャンプーが切れていないか気になったり、映画を観ていたら、クレジットカードが不正利用されていないかハラハラしたり。脈略はない。
そんな私が詐欺対策セミナーの講師とは。お年寄り向けの講座のつもりが、年齢層が幅広い。早めに檀上から会場を眺める。盲導犬を連れた女性がいる。意外と会場が埋まって来た。今日はうまくいきそうだ、根拠もなくそう思った瞬間、意識が乗っ取られたような気に。
「ペアになってください」と突然、思いもしないことを言った。意識が読まれている気がする。私の中に、そう、あの盲導犬を連れた女性がいる。彼女は頭の中にいた、小さな猫を抱いていた。
(この子、かわいいけど、お姉さんの心をいつも乱してイタズラばかりしてるみたい。連れて行こうか?)
(だめ、それは私だもの)
女性は微笑みながら猫を私に返してくれた。
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