第6話 おっぱいアイス? 卵アイス?

 じりじりと猛暑の照り付けが教室に差し込んできて、ワイシャツ姿の生徒たちは下敷きで自分の顔を扇ぎながら涼んでいた。


 そんななか、隣の席の佐藤がバッグから何かを取り出した。

 それはふうせん型でその入れ物のなかには半濁色の液体がぷるんぷるんと踊っている。

 佐藤はそれを開けようと爪を立てると――。

 勢いよく爆発した。彼女の胸元にドロッとした液体が染み付く。そこからブラが透けていた。爽やかなライトブルーだった。

 ――意外と胸が大きいんだな。

 そんなことを妄想しながら佐藤の胸を凝視していた僕。


「あっ、佐藤さん。服汚しちゃったの?」

「そうなの。ビシャっと、ね」

 佐藤に声を掛けたのは僕の前の席の伊藤だ。

「なんか、その言い方エッチ。まさか、飯島くん‼」


 僕はゆっくりと胸から視線を動かすと、二人の女子からの睨み付けるような目線を感じた。

 いやいやちょ待てよ。(その言い方、僕はキムタクか‼)僕は無罪だ。


「学校に卵アイスを持ってくるほうが悪いだろ」

「いやこれ、おっぱいアイスじゃなかったの?」

「おっぱ、は?」


 何を言い出すかと思えば、旧式の名前を。(妙に格好付けているのはほっといてくれ)


「いいか、おっぱいアイスという呼び方は平成初期の呼び方でな。今ではそのアイスは高知県でしか売ってないんだ」

「――その知識、間違ってますよ」

「は?」


 すると伊藤は板書に走っていって、でかでかとおっぱいアイスと書いた。クラスメイトは全員戸惑っている。


「おっぱいアイスは全国区ですし、たぶん飯島くんが伝えたかったのはコロンビアアイスや卵アイスでしょうけれど、それはしょせん、派生品。おっぱいアイスが正式名称です」


「おっぱい、おっぱいうるせえ‼」

 僕がそう叫ぶとクラスメイト全員から白い目で見られた。主に女子から。


 ああ、これだから不恋愛体質は。


 あと、卵アイスは温まると爆発するから、食べるときは気を付けろよ。

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