第4話 学校でねるねるね?
休み時間、僕はぼおっとしていた。
教室の隅の方では五人ぐらいの女子グループが和気あいあいと談笑している。その声が遠巻きに聞こえる。そして隣では白衣を着た佐藤が眼鏡姿でメスシリンダーに何かを調合している。
・・・・・・は?
僕はギリリと首を軋ませながら佐藤のほうを見る。
「君、なにしてんの」
「実験よ。格好いいでしょ」
「・・・・・・」
そう言って佐藤は眼鏡のフレームを一回動かした。
なんなんだろうか。ほんと。
「それで、なんの実験だよ」
「変色の実験よ」
「変色? なんだそりゃ」
これよ、と言って佐藤はお菓子のパッケージを見せてくる。
「ねるねるね、あっ、これ知ってる。僕も小さいときこれでよく遊んだ」
そう言うと佐藤は鋭く僕を睨み付けてきた。
「遊んだですって‼ これは立派な知育菓子。お勉強になる教育的お菓子なのよ。それを遊びに使うだなんて。見損なったわ飯島くん」
僕は急な頭痛を覚えて眉間に皺寄せた。
「分かった分かった。それで、なんで君は学校でこれをしているわけ?」
「飯島くんは学校に何しに来てるの?」
「そりゃあ勉強に」
質問に質問で返すなよ。
「ほら、それが答え。ねるねるねも勉強のうち」
そして、何かしらの液体が入っているメスシリンダーに「Bの粉」を注ぎ入れる。するとみるみるうちに
「これにさらに粉を入れると今度は赤色に変わるのよね・・・・・・」
白衣を着てけたけたと笑う姿だけ見たら、どこぞのマッドサイエンティストだが、こいつはただのスイーツマニアなだけだ。
するとピンポンパンポンと放送が鳴る。
『理科準備室に保管してあったメスシリンダーと雪野先生の白衣を盗んだ者はただちに職員室に来なさい』
生徒指導の教諭が、怒気混じりにそう言った。
このあと、佐藤が号泣しながら教室に帰ってきたことは言うまでもないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます