第2話 砂糖少女との再会

 僕こと飯島いいじまわだちが三年生に上がった四月、春の訪れが不幸と重なり今では桜の可憐さをも堪能出来ない。

 その不幸とは、ここ私立大研高校を一年ダブったことだ。


 僕がダブった理由は『不恋愛体質ふれんあいたいしつ』もとい異性に嫌われる体質のせいだ。

 時代遅れのレディースの総長に僕はからまれ、強引に酒を飲まされ、その場面が警察官に見つかり休学扱いになったり、信じていた幼馴染みが僕を裏切りいじめてきたり、カンニング魔として(全くの潔白なのだが)先生に密告されたりと、まあ散々な目に遭ったのだ。

 そのせいで僕はクラスで悪目立ちし、クラスに通えなくなってそのままダブることになった。

 もう、僕は異性とは関わらないでおこう。自分の身の安全が第一だ。

 そう思いながらクラスへと向かった。


―――――――――――――――――――――――――――――


「初めまして。伊藤朝陽いとうあさひって言います。よろしくお願いします」

 髪が腰に掛かるくらいの長い黒髪清楚な少女が自己紹介を終え、次に僕の番になった。

「えっと、飯島轍いいじまわだちって言います。よろしくお願いします」


 すると教室の隅のほうで嘲笑が聞こえた。

 僕はもしかしたらまたいじめられるかもしれないな、とか思いながら俯いた。

 そうしたら――。


「ねえ、君」

 僕の隣から弾んだ声が聞こえて、僕は意識をそちらに向ける。

 そこにはあのとき痴漢から助けた女子生徒がいた。

 正直言って驚いてしまった。


「ポッキー一本、いる?」

 あの時のお返しと言わんばかりに、そう言われたので僕はポッキーを一本もらい、カリっと食べた。


「どう美味しいでしょう」


 デレッとまるで甘々のスイーツみたいな笑顔を見せてきた。

 その瞬間、僕の胸がざわついた。

 そしたらその少女が手招きしてきた。耳を貸せ、ということだろうか。僕はおとなしく近付く。


「先生には、内緒だよ。私たちだけの秘密」

 そう、僕の耳元で囁かれた。

 やばい。これはまずい。

 僕は胸が張り裂けそうだった。


「あのとき聞かなかったけど君の名は?」

 

「私はね、佐藤さとうはな。またよろしくね」


 僕は、この再会をきっかけに僕たちの恋愛が始まるような気がした。


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