@09裏の裏の裏-2_攻略対象その3は宇宙的生物と出会った!


「まったく、父上にも困ったものだ」

「そうか、お前に言われたらお終いだ」


 翌日。

 王都にある囚人を収容する監獄。

 クラウスは、辺境伯領から容疑者ナイアを護送してきたタイタスを訪ねていた。

 辛辣な反応にもめげず、話を続ける。


「すまない。捜査で忙しいのは分かるが、私もこの件は気にしていてな。

 この事件について、分かったことを教えてほしいのだが?」

「そこの調書にまとめたから、好きに読むといい」


 机の上に置かれた紙束へ視線を送るタイタス。

 クラウスは言われるまま、調書に目を通した。


「スポンサーはメビウスの商人派閥に、作成したキメラを『神の種』として売り出した、販売経路はフラネイルとラバンを騙して利用……これを本人が自供した? こちらから突き付けたのではなく?」

「ああ、容疑者は極めて捜査に協力的でな。

 嬉々としてこちらの問いかけに答えてくれた」

「なるほど、調書にも書いてあるな。『容疑者の自己顕示欲は高い』か」

「こちらとしては助かっている。

 ラバンからの報告書ともおおむね一致しているからな。

 後は、裏付けを取るだけだ。

 それもおおよそ終わり、残っているのは、メビウスや教会貴族の関係と――キメラを作るのに必要な禁制の薬をイザラから入手した、という部分だな」

「なに? イザラが? 妄言ではないか?」

「それを確かめるのが俺たちの仕事だ」


 だから邪魔するな。

 そんな視線を受けるも、クラウスとしては食い下がらざるを得ない。


「しかし、イザラが絡むとなると、私も詳しく話を聞いておきたい。

 何か、他に供述はなかったのか?」

「調書に書いた以上はない。

 だが、『私はイザラ様とも仲がいい』だの、『イザラ様は本当に素晴らしい才能』だの、『我が師匠も認める程』だの、他に比べて強い言葉を使っているあたり、何か隠していることがあるのかもしれん。

 むしろ、お前は何か心当たりはないのか?」

「いや、少なくとも、イザラと仲がいい、というのは誇張だろう。

 以前、パーティでナイアと会っているから、面識はあることに違いないが、それ以来、別に仲良く過ごしているとは聞いていない」

「待て、面識はあるのか?」

「ああ、そういえば、キミは公爵家のパーティに出席していなかったな。

 私とラバン、イザラ、アーティアとアリスの五人で話したことがある」


 パーティでの一件を話すクラウス。

 ナイアがアーティアに良くわからぬ薬を飲ませたこと、それを冤罪で誤魔化そうとしたこと、結局は誤魔化しきれずに怒られたこと。

 不機嫌なタイタスの顔が、さらに不機嫌になった。


「つまり、容疑者の言葉は、まったくの虚言ではない、ということか」

「私は誇張も虚言の一種と思うのだが?」

「相手は犯罪者だ。正論と常識は置いておけ。

 問題は、調書の発言はすべて誇張の元になる事実があるということだ。

 俺は、イザラのことを調査しなければならなくなった」

「ふむ、確かに、調書にはイザラから禁薬を得たとあるな。

『我が師から知的好奇心のまま拝借した人形ニ、恐ろしい薬ガ!』

『なんト、その原料ハ、イザラ様から我が師へ贈られたというではありませんカ!』

『法を犯しても錬金術を極めんとするその姿勢! 感動しましタ!』

『あの流行り病を治した新薬モ、禁制の薬の製法を参考にしたに違いありませン!』

 なるほど、イザラが禁制の薬を扱っていたと言わんばかりだな」


 調書を読み進めるクラウス。

 タイタスはしばらく黙っていたが、やがてクラウスへ問いかけてきた。


「そういえば、イザラは我が領からお前を追いかけて学園に戻ったようだが、会っていないのか?」

「いや、学園についてすぐ、王宮に向かったからな。入れ違いになったのだろう。

 留守を頼んだ衛兵には、王宮からはすぐ戻ると伝えたから、まだ学園にいるのではないか?」

「そうか」


 小さくうなずくと、立ち上がるタイタス。

 クラウスは一緒に立ちながら問いかけた。


「イザラに話を聞きに行くのか?

 私もついて行ってもいいだろうか?

 これでも婚約者だ。役には立つぞ?」

「……そう、だな。

 分かった、ついてきてくれ」


 少し考えた後、タイタスはうなずいた。

 それに続いて部屋を出ようとするクラウス。

 が、途中でタイタスを呼び止めた。


「ところで、先程から聞こうと思っていたのだが?」

「なんだ?」

「この取調室の奥――鉄格子の向こうにいるのが、容疑者でいいだろうか?」

「ああ、今も取り調べは続いているからな」


 部屋の奥へ目を向けるクラウス。

 そこには、筋骨隆々に鍛え上げた騎士に囲まれ、引きつった表情を浮かべるナイアの姿が。


「ずいぶん、騎士が多いようだが?」

「ああ、あまりに調子のいい供述が多かったからな。

 プレッシャーを与える意味でな」

「それにしても、騎士がボディビルのような恰好をしているのはどうかと思うが?」

「仕方あるまい。

 容疑者はなぜか筋肉にトラウマがあるようだからな。

 鎧で完全武装するより効果がある」

「筋肉に、か?」

「筋肉に、だ」


 もう一度、部屋の奥へ目を向けるクラウス。

 そういえば、ナイアの顔色が悪いような気もする。

 分かりましタ! きちんと話しまス!

 などという叫びが聞こえてくるあたり、確かに、効果はあるようだ。


「タイタス」

「なんだ?

 言っておくが、発案は俺ではないぞ?

 文句があるなら提案してきた衛兵に言え」

「いや、あの取り調べ方法だが、キミも参加――」

「や め ろ !」


 最期まで言い切る前に、強い拒絶の言葉を残して出ていくタイタス。

 クラウスは騎士とタイタスを見比べていたが、やがて後を追った。



 # # # #



「イザラ様は、すでに王宮へ立たれたようです。

 お戻りになるのは、王宮までの距離を考えると、一週間はかかるかと」


 学園に戻って、自室。

 衛兵にイザラとの面会の予定を告げると、そんな言葉が返ってきた。

 相変わらず、クラウス以上にクラウスの人間関係を知っている衛兵である。


「どうやら、また入れ違いになったらしいな。タイタス、どうする?」

「どうするもない。

 イザラがいないのなら、教会貴族の方を先に当たるしかないだろう」

「しかし、今は休暇中だろう? もうすぐ授業が再開するとはいえ、教会貴族の生徒も、まだ学園に戻っていないのではないか?」


 学園に着いてから部屋に戻るまで、人の少なくなっていた廊下を思い出す。

 だが、タイタスは心当たりがあるのか、悩む様子もなく答えた。


「いや、ナイアの供述の通りなら、教会系の貴族は学園のどこかで集まって、対策を話し合っているはずだ。

 何せ犯罪者のスポンサーになっていたわけだからな。

 証拠隠滅のために、何かしら動くはずだ」

「では、その拠点を探すわけだな?

 そういう事なら、我が衛兵が何か知っているかもしれない。

 ――というわけで、衛兵! ここ数日、教会系の貴族に動きは?」

「はっ! 先日より、イザラ様の研究室へ潜入を試みている者がいる模様です」


 思わず聞き返すクラウス。


「待て、イザラの元に、怪しい者が近づいているのか?」

「はっ! 二回目になりますが、先日より、イザラ様の研究室へ潜入を試みている者がいる模様です」

「私はそのような話を聞いていないのだが?」

「はっ! つい先ほど、タイタス様と共に戻られたばかりなので、報告のタイミングを逸しておりました!」

「そ、そうか、学園に報告はしているのか?」

「はい! いいえ!

 監視していましたが、結局、潜入には至らず、立ち去っています!

 実害がないため、現状は泳がしている状態です!」


 悪びれず答える衛兵に、むしろ感心するクラウス。

 とりあえず、タイタスの方へ目を向ける。


「二回目になるが、タイタス、どうする?」

「……どうするもない。

 次に侵入しようとした所を捕まえるしかあるまい。

 今回の一件と何か関係があるかもしれぬ相手を、みすみす逃すわけにもいかん」


 頭痛を抑えるかのように言うタイタス。

 クラウスは、衛兵へと向き直った。


「その教会系の貴族が次に潜入する見込みは?」

「はっ! こちらになります!」


 渡されたのは、怪しい貴族がイザラの研究室に近づいた日時が書かれた報告書。

 ついでに「今までのパターンからみて、明日の夜にもイザラの研究室にやってくる可能性が高い」とまで書かれている。

 なぜもっと早くこれをさなかった、という目を向けるクラウス。

 涼しい顔で視線を受け流す衛兵。


「お前も苦労しているな」


 タイタスからは、同情された。

 それでも、めげずに続けるクラウス。


「とにかく、これだけの情報が集まっているなら話が早い。

 明日の夜にも、イザラの研究室の前を張り込もう」



 # # # #



 夜、学園の研究棟。

 クラウスはタイタスとともに、薬学の研究室が並ぶ二階の奥――ちょうど、イザラの研究室の向かい側の部屋で、ドアの隙間から廊下の様子をうかがっていた。


 無言で待つこと数刻。


 衛兵の情報通り、静かな足音とともに、フードをかぶった、いかにも怪しい貴族が歩いてきた。


 飛び出そうとするクラウス。

 だが、タイタスはその肩をつかんで止め、首を振る。

 もう少し様子を見たい、という事らしい。

 クラウスはうなずくと、再びドアの隙間から観察を始めた。


 怪しい貴族は周囲を見回した後、研究室のドアに手を伸ばし、


「っ! 今回はそう来るのねっ!?」


 即座に、手を引っ込める賊。

 声からして、女性だろうか。怪我したのか、指先を口に含んでいる。

 ドアの取っ手にトラップが仕込んであったらしい。

 よく見ると、針のようなものが見える。

 しかし、賊の方もこの程度では終わらない。バールのようなものを取り出すと、器用に操って、カギを破壊し、ドアを強引に開く。

 そのとたん、部屋の奥から槍が飛んできた。


「っ! 殺す気?!」


 ギリギリ避けた賊は、吐き捨てるようにつぶやくと、研究室に入っていく。

 クラウスはというと、ドアの隙間から飛んできた槍に、心臓が止まりそうになっていた。タイタスが突き飛ばしてくれたおかげで助かったものの、もう少しで串刺しになるところだった。廊下を挟んで反対側までまっすぐ飛んでくるとは、恐るべき殺意である。

 タイタスも目を見開いていたが、イザラの研究室の明かりがついたのを機に、部屋を出て、研究室を覗き込む。

 クラウスもそれに倣った。


 賊は研究室を見渡すと、資料が並ぶ棚へと手をかけた。

 その瞬間、上から照明が降ってきて、見事頭に命中。

 先程と違い、ずいぶん姑息な嫌がらせである。

 しかし、過剰なまでに飛びのく賊。

 同時に、棚の前の床が開いた。

 どうやら落とし穴だったらしい。

 上に注意をそらせて足元をすくう、二段仕込みの罠。

 これを突破したあたり、この賊は何度も侵入し、そして失敗しているのだろう。

 賊はしばらく呼吸を落ちつけていたが、落とし穴に引っかからないよう、慎重に棚へと近づいていく。

 が、次の瞬間、棚が倒れこんできた!

 再び飛びのく賊!

 そこへ、今度は灼熱した鉄球が降ってきた!

 どうやら、照明の後ろに仕込んであったらしい。

 恐るべきスピードで、連続して打ち出される鉄球!

 しかし、賊はバールのようなものではじき落とす!

 肩で息をしながら、どうにか全弾回避!

 しかし、壁際に追い詰められたのがよくなかった!

 なんと後ろの壁が開き、水が噴出したではないか!

 いや、ただの水ではない、溶解液である!

 証拠にフードが嫌な音と臭いを発しながら溶け、素顔が見えてしまっている!


 あれは――伯爵家の娘だな。

 確か、名前はローラといったか。


 さすが王族というべきか、冷静に観察するクラウス。


 しかし、ローラの方はそれどころではない!

 慌ててフードを脱ぎ捨てると、周囲に油断なく目を配る!


 次はどこから何が来る?


 そんな緊張が無言の空間に占め、

 同時、倒れてきたはずの棚が飛んできた!

 慌ててかわすローラ!

 轟音を立てて、壁へめり込む棚!


 あの質量の棚が飛んだ!? どうやって?

 驚愕するクラウス!

 その疑問は、棚の下、落とし穴からはいずり出したナニかによって解消された!


 それは、なにか宇宙的な脈動を不気味に繰り返す触手の塊であった!

 訳の分からぬ触手生物は、賊の前で一気に膨張!

 研究室を埋め尽くすように増殖を始めた!


「う、嘘でしょ?!」


 さしものローラも心が折れたらしい、部屋を飛び出そうとする!

 が、触手生物の方が早かった!

 ローラに絡みつくと、そのまま持ち上げ、開いた口に放りこもうとする!


「いかん! 離せ!」


 慌てて飛び出すクラウス!


 触手生物は世にも宇宙的な叫びを上げ、


 ローラをクラウスのそばに置いた。


 クラウスの前で変形し、ハートマークを作る触手生物。


 その場の空気を、一体どう表現すればいいだろうか?


 しかし、さすが王族というべきか、クラウスはわずかな硬直の後、落ち着いた様子で触手生物に声をかけた。


「ええっと、私の言葉がわかるのかな?」


 宇宙的生物は形容しがたい動作で形を変えると、触手で文字を書いた。


 !(^^)! はい! もちろん!


 さして意に介さず、そのまま会話を続けるクラウス。


「ふむ、触っても?」


 (^^♪ はい! どうぞ!!


 タイタスから、困惑の声が上がった。


「おい、クラウス?」

「まあ、待て。よく見ると、なかなか可愛いじゃないか」


 おい、マジか、という顔をするタイタスを置いて、優しく触手を撫でるクラウス。

 この世のものとは思えぬ肌触りがした。

 一方の奇怪生物は嬉しそうに宇宙的うごめきを見せたかと思うと、またも触手で文字を描いた。


 (・∀・) のぐら教授作

 (^_^) 汎用決戦兵器きめら触手生物

 (^^) 開発こーど星ノ精弐号

 (^O^) テケチャン

 !(^^)! メス○歳

 (*´∀`*) コンゴトモ末永クヨロシク


「ああ、よろしく。

 ……ええっと、うん、三回目になるが、タイタス、どうする?」

「…………クラウス、俺に聞いたら答えが返って来ると思うなよ?」


 困る二人に、しかし、てけちゃんは再び世にも宇宙的動作で答えた。


 (-_-) とりあえず、侵入者カラ話ヲ聞イテハ?


「うむ、もっともな意見だ。

 ええっと、君は確か、ローラ伯爵令嬢、だったかな?」

「はっ! はい!? 覚えていただき光栄です!?」

「うん、こんな時でも礼儀を忘れないのは評価しよう。

 早速だが、なぜイザラの研究室に忍び込んだか、答えてもらおう」

「それは……」


 口ごもるローラ。

 クラウスが追求する前に、世にも宇宙的咆哮とともに、姿を変えるてけちゃん。


 (`・ω・´)ゞ 拷問ナラオ任セクダサイ!

 (*^▽^*) 私ニハ脳ヲ直接吸引シ、記憶ヲ読ミ取ル機能ガアリマス!


 震え上がるローラ。

 タイタスが小声で「おい、早く喋れ、死体処理は大変なんだぞ」と告げると、堰を切ったように話しだした。


「わ、私たちはナイアに騙されたのです!

 大きな稼ぎがあると――あ! ナイアというのは!」

「ああ、ナイアについては我々も把握しているから説明はいらない。

 君たちがそのスポンサーだったことも良く知っている。

 まずは深呼吸でもして落ち着いてはどうだろうか?」

「は、はい! すぅぅぅぉぉおおぉぉォオええエェェeeEEEE!?」


 どうやら触手生物の吐き出す宇宙的瘴気を吸い込んでしまったらしい。

 ローラは自分の人格まで吐き出す様な嘔吐のあと、大声で叫んだ!


「おかげで落ち着きました!

 クラウス殿下!

 なんでもお聞きください!」

「う、うむ、なにか疑問がないわけではないが、聞こうじゃないか。

 タイタス、四回目だが……」

「もういい。早く終わらせないと、俺まで頭がおかしくなりそうだ。

 まずは――イザラの研究室に忍び込んだ理由は?」


 尋問を始めるタイタス。

 ローラは、世にも宇宙的な光を瞳にたたえながら答えた。


「はいっ! ナイアから禁制の薬が、イザラ様の研究室にあると聞いたからです!」

「仮に禁制の薬を見つけたとして、どうするつもりだった?」

「はい! 取引に使うつもりでした!

 イザラ様もナイアに関りがあるのならば、同じ共犯者となり、証拠隠滅ともみ消しが容易になります! また、イザラ様は聖女様と仲がよろしいご様子ですので、そちらの言い訳にもご協力いただけるかと!

 そのため、私たちは明確な証拠を欲したのです!」

「そうか。では、この一件は中央の教会の指示か?」

「はいっ! 教会の中央、特に大司教様の指示になります!

 ナイアの発明品を聖典の『生命の種子』として販売しようと許可を出したものですから、隅々まで証拠を抹消しようせよとのお達しで!

「つまり、組織的犯罪か。他に、侵入しようとした実行犯は?」

「いえ、私ひとりです!

 あまり何人もいても目立つだけとの理由ですが、実際のところは捨て駒です!

 実は以前、私が無理に聖女様に詰め寄ったせいで、聖女様との関係が微妙になったことがありまして! その失点を回復させる、という名目で、私がこのような侵入を行うことになりました!」

「それで、肝心の禁制の薬は、見つかったのか?」

「いいえ! 元々、ナイアの誇張と我々も考えていました!

 見つからない場合は、棚にこの偽りの証拠を放り込み、罪をでっち上げようと!」


 懐から捏造した資料を取り出すローラ。

 タイタスは、ため息をつきながら受け取った。


「こんなもの、すぐにばれるぞ?」

「はっ! 理解しています!

 ですので、この告発文を一緒に混ぜる予定でした!

 私は大司教様に脅されて侵入したのだと!

 普通ならば一回の貴族の訴えなどもみ消されるでしょうが、何とか公爵家に事情を伝えることが出来れば、何とかなるかもしれないと思いまして!」


 ため息をついて、クラウスの方を見るタイタス。

 尋問は終わったらしい。

 が、「これだから中央の貴族は嫌なんだ」と目が言っている。

 クラウスは苦笑しながら答えた。


「しかし、イザラの部屋に禁制の薬はなかったのだろう?

 イザラへの疑いは晴れ、大司教の陰謀も潰えた。

 一件落着じゃないか」


 しかし、そこへ、宇宙的な咆哮が響く。


 (^_^)/ イエ、禁制ノ薬ナラアリマスヨ?

 (^_-)-☆ 捨テラレテイタモノヲ回収シマシタ!

  ^^) _旦~~ ドウゾ!


 三人の間に、投げ出される白い薬。

 袋の文字は触手の粘液的なものでかすれてしまっているが、「指定危険薬物! 麻……」という文字は読めた。


 その時の空気を、どう表現したものだろうか?

 数秒の沈黙の後、話し始めたのは、クラウスだった。


「タイタス」

「……なんだ?」

「どうやら、イザラと話をする必要があるようだ」

「…………そうらしいな」

「私は、この薬はどうしたのか、正面から正直にイザラへ聞こうと思う」

「………………まあ、それがいいだろうな」

「だが、その前に、この一件を引き起こした教会の陰謀は潰しておきたい」

「……………………そうか」

「どうせこの一件は噂になって、新学期の学校に広がるだろう。

 幸い、メビウスもラバンと一緒に派閥に対応するため学園に来る予定だ。

 そこで、私に考えがあるのだが、協力してくれるだろうか?

 ローラとてけちゃんも」

「はっ! 喜んで!」

 (^_^)v モチロンデス!


 宇宙的肯定が響き渡る中、本当に嫌そうな目を向けるタイタス。

 クラウスはそんな友人に心の中で謝りながら、自らの計画を話し出した。

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