第42話:予想外の展開
アリスディアとのやり取りを終えた、その日の自室。
俺は転生してからこれまでのことを思い返していた。
一度ならず二度も、俺は勇ボコのストーリーを覆してしまった。
この結果、次の戦争がどのように行われるのか、そして行われたとして、これまでの影響がどのように反映されるのか、それが気になって仕方がない。
次の戦争が起こるのは、おそらく一ヶ月後。今までよりは猶予がある。
それまでに状況を整理し、レイディスにも会いに行って情報を手に入れる必要があるだろう。
「あとは、魔王軍にもアリスディア以外の理解者を得る必要はあるだろうな」
アリスディアは今まで、俺に魔族と人間の共生という目標を知られるまでは、誰にもこの話をしてこなかったらしい。
まあ、俺もアリスディアが共生について考えているとは思わなかったし、勇ボコにもそんなエピソードはなかった。
言われて思い返して、初めてそうだったのかと思う部分もあったが、それも全て俺の推測でしかない。
正直、俺の推測通りであれば勇ボコは勇者に優しく、魔王に厳しいという評価を見直し、魔王に厳しすぎる、となるだろう。
「……こんなの、制作者の傲慢でしかないだろ」
ただ、俺がそんなことに憤っていても仕方がない。どうしようもないからだ。
ならば、俺にできることはやはり、転生したこの世界のアリスディアにだけは、秘めていた想いを成させてあげたい、ただそれだけだ。
「アリスディアの想いに呼応してくれそうな死四天将は……やっぱり、レイドくらいなものか」
アリスディアの魔法の師匠であり、彼女のことを大事に思っているレイドは、理解者になってくれる可能性が何より高い。
「……それと、ブラックだな」
言葉数は少なく、声音は男性のように聞こえるが、その実は女性であるブラック。
アリスディアとも深い関係にある彼女もまた、理解者になり得る一人だろう。
「とはいえ、ブラックは勇ボコでも話をしているシーンが少なかったからな。アリスディアには心を開いているけど、他の死四天将にはそうでもなかった」
ということは、俺にも心を開いていない可能性が高い。
「ブラックに関しては、俺からじゃなくてアリスディアから話をしてもらった方がいいかもしれないな」
レイドに関しては俺からでも問題ないと思う。模擬戦を通して一定の理解を得られているからな。
だが、事を急いで仕損じるのはダメだ。
次の戦争まで一ヶ月はあるはずだし、まずは時間のかかりそうなことから進めていくとしよう。
「……もう一度、王国へ向かうか」
前回の戦争を終えて、王国側がどのような状況になっているのか。
そして、レイディスがどうなっているのか、それが知りたい。
重い罰を受けることはないと思うが、それでもレイディスに罪を擦り付けようとする者がいるかもしれない。
それが勇者だとすれば、王国は彼の言葉を信じてしまう可能性が高いのだ。
「勇ボコでの勇者はそこまで自分本位じゃなかったけど、ここの勇者は我がままし放題っぽいからな」
まずはレイディスのために動くのが先決だと判断した俺は、今日はゆっくり休んで、明日から暗躍を開始しようと決めた。
そのはずだったのだが――
――ドンドン! ドンドン!
「……なんだ?」
ベッドへ横になろうとしたところで、急に部屋の扉が乱暴に叩かれた。
瞼をこすりながら扉を開くと、そこには死四天将のイボエルが立っていた。
「大変だぞ、シャドウ殿!」
「な、何があったんですか、イボエル様?」
間近でイボエルのバカでかい声を聞かされ、俺は顔をしかめながら問い掛けた。
「国境付近に、英雄の一人がやってきていると報告が入った!」
「…………ええぇっ!? え、英雄が来ているだって!!」
こんな展開、勇ボコにはなかったぞ!
俺は大慌てで装備を身に纏っていく。
「私は急いで国境付近へ向かいます! イボエル様は他の方々にもご報告を!」
「承った!」
こんなお願いを死四天将にしたら、普通であれば殺されてもおかしくはない。
本当に、シャドウって信頼されているんだな。
そんなことを考えながら、俺は大急ぎで影移動を発動し、国境付近へ移動した。
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