第1章10 そして
〔翌日 - サガント統合基地 司令部ブロックにて〕
〔ユーレイン連邦 総帥 七瀬 青海 TACネーム ブルーコバルト〕
昨日の会議の際語られた異世界の事象に対応する為、私は昨日の夜の内に司令部に根回しを行い
「スイース大陸各国の事象、でありますか・・・・。」
司令ブロック情報部付き担当の少佐はそう言った。
「ええ、今の時点で纏まってる情報が欲しいわ。」
「今現在纏まってるのはこれだけありますが・・・・。」
彼はそう言うと辞書と同じ厚みがあるファイルを手渡して来た、私はそれに少し目を通すと。
「それじゃあこれ、司令部の共有クラウドにアップロードしておいて。」
「了解しました。」
〔同日 - ユーレイン連邦 西海岸北部
〔ユーレイン連邦 総帥付き秘書 高西・独和 コールサイン マーベリック〕
首都サガントの
〈右側のドアが開きます、ご注意ください。〉
そんな車内アナウンスが流れ、かつて日本国から輸入された車両を源流とする旧型気動車 ―― HY40系ディーゼル気動車 ―― は誠久駅のホームに入線した。
そしてドアが開き、俺は必要最低限の物が入ったアタッシュケースを持ってホームに出た。
ホームは無人であり、待ち人がいる訳でもないのですぐに出口に直結した階段を下りた。
駅の正面ロータリー周辺では、第二次世界大戦の遺物であるコンクリート製高射砲塔が半ば取り壊されており。更に連邦憲兵隊所属の61式中戦車、M16A4やM14で武装した憲兵隊や騎馬隊、車載4連装KPV機関砲などが配置されていて。また施設化部隊が下請け業者と共に高射砲塔備え付けの40mmボフォース機関砲などを撤去しており、それらや解体済みのコンクリートブロックを停めてある2.5tトラックや10tトラックなどに載せていた。
M3 SMGを持った施設化部隊配置の兵士や憲兵がそれぞれ談笑もしていた。
「独和さん、ですね?」
すると後ろに白のポロシャツにボマージャケットを羽織った女性が立っていた。
「何だ。」
「ユーレイン連邦軍兵員部第3課のアルベルト・シュナイダー少尉、お迎えに上がりました。」
「そうか。」
「どうぞ、こちらです。」
俺はポロシャツにボマージャケットを羽織り、サングラスを掛けた碧眼の少尉と共に兵員部へと向かう事にした。
丁度彼女の後ろに止めてあった白い4ドアセダン ―― 日産スカイラインセダンR33に乗り込み、我々は駅ロータリーを後にした。
車内は新車の匂いが散乱していたが少々
「それにしても忙しい町だな。」
「数年前まではここも閉鎖都市指定を受けていましたが、丁度去年その指定が解除されて行政が手を付け始めたのです。」
「そうか・・・・。」
彼女はサングラスの隙間からヘーゼル色の目を覗かせながらそう言った。
俺はその引き込まれそうな目に少々魅力、いや驚きを感じながら
「君は・・・・。」
「シュナイダーで結構です。」
「シュナイダー、生まれはドイツか?」
「小学生の頃までドイツのキールに住んでました。」
「そうか。」
俺はまるで廃墟の様な外を眺めながらそう言った。
「あの。」
「ん?」
「兵員部で何かありましたら是非私にお申し付けください。」
「ああ。」
すると直ぐしてユーレイン連邦軍兵員部本庁が入るOD色のビルに到着した、俺は34スカイラインから降り。彼女 ―― シュナイダーも建物に車を横付けして降りて来た。
ビルの中には監視カメラ等は設置されておらず代わりにフランキ・スパス12とFN P90を持った警備員2人が常駐していて、周りは人々が行き来していた。
我々はそれを通り過ぎ、エレベーターに乗った。
〔兵員部本庁 - 所長室〕
「はるばる誠久までようこそ、ミスター・ドクワ。」
入室してきた俺を見た連邦軍兵員部本庁所長 アルベルト・ノックス中佐はそう言った。
「こちらこそノックス中佐、会えて光栄です。」
「それより、私の妹は貴方を困らせなかったかね?」
「はい、中佐は良い妹さんをお持ちですね。」
「そうか、それを聞けて嬉しいよ。」
中佐は年季の入った象牙細工入りのパイプを吹かしそう呟いた。
「それでは、本題に入りましょう。」
すると中佐は横に居た秘書らしき者にドイツ語で指示を出し、秘書は顔色一つ変えることなく外へと出た。俺はその時、その秘書がホルスターにH&K USPコンパクトを入れている事に気付いた。
「彼は優秀な私のボディーガードであり唯一と言っていい秘書だ、が・・・・欠点がある。」
「・・・・そうですか。」
「ああ、申し訳ない。本題からずれてしまったな。
本題を聞こうか。」
俺は
「ブルーコバルトは今後の情勢を見極めた結果、大陸派遣軍とはまた別に部隊を創設するつもりです。そこで陸海空海兵隊から部隊教練に見合う人材を選んで欲しいのです。」
「予備役現役関係なくか?」
「はい。」
「民間は?」
「技術によりますが・・・・。」
「・・・・相分かった、直ぐにでも取り掛かろう。」
「ありがとうございます。」
俺は中佐の机にファイルを置くと、略式礼をしそう言った。
「ミスター・ドクワ。」
「はい。」
「こちらも少しお願いしたいことがある。」
「・・・・要件によりますが、何でしょうか?」
「私のボディーガード、秘書には日本語がまったくもって話すことが出来ない欠点がある。どうだろう、彼を
「分かりました、こちらで手配しましょう。」
「ありがたい。」
「それではまた、中佐。」
俺は鞄を持ち行こうとした、
「ミスター・ドクワ。」
「はい?」
「私の妹も連れて行くといい、きっと役に立つだろう。」
「分かりました。」
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