第1章4 Operation Table Dragger I

〔ユーレイン連邦海軍 海軍特殊戦術アクショングループSTAG 第1中隊 第1小隊長 西都さいと道春どうしゅん TACネーム アルファ アクチュアル コールサイン インターキラー〕

〈ユーレイン 西部近海 ―― 特殊母艦 ライン 艦内一室〉


久々に我々STAGに出撃せよとの声がかかり、俺が率いている第1小隊を含む数個小隊は母艦に乗艦し母港の新横須賀を出港、目的地へと向かっていた。

目的地に到着するまでそれぞれ宛てがわれたスペースで好きの様にしており、俺ら第1章30人はだだっ広い待合室で暇を持て余していた。


「いやー、本当に久しぶりっスから腕が鈍って無いか心配っスよ、本当に。」


俺の正面に座っている前衛ショットガンナーの日比野ひびの葛屋かつやがそう言った、背中にはソードオフのベネリM4 スーベル90とヒップホルスターにそれぞれSIG P239とグロック19Cを装備していた。


「おいおい日比野、そんな簡単に鈍らんぞ。」

「そおっすカ・・・。」

「小隊長。」


すると横から、ポイントマンの高橋たかはし斉臨せいじが話に加わって来た。背中にナイツ SR-47、そしてレッグホルスターにそれぞれH&K USPとベレッタ M9000Sを装備していた。


「そうした?」

「どんな海賊なんでしょうかね?」

「さあな、ただ俺達は訓練通りの事をして給料をもらうだけだ。」

「・・・・。」

「了解っス。」


ジリン、ジリン。

〈こちらは艦長、各員に達する。〉

すると我らが母艦艦長 モニカ・ペルシア殿下からのアナウンスが入った。


〈目的地手前20kmに到着し、先程中央セントラルから作戦開始コード ”テーブルは出された” を受け取った。至急発艦できるように、オーバー。

”ブチッ”〉


全員が沈黙し、俺の方を向いた。

俺は全員の前に立ちこう話し始めた、全員も同調する様に立ち上がった。

「よし、

全員聞いたな。今回この作戦はスピードが重要だ、帆船がポカ沈される前になんとしても海賊共を処理する。もう発砲許可はもらっているので好きにやってくれ、そしてだ・・・

航空支援にAV-280Cを2機用意している、必要に応じて呼んでくれ。我々が仕事を終えるとパラジャンパーの花園が降下してくる、負傷したら花園の方々が直してくれるだろう。

質問は?」


一瞬小隊員の苦笑いが待合室を包むと、ステアーAUGA3を持った若い隊員が手を挙げた。

「何故沈めずに臨検を?」

「今俺達は異世界とやらに居る、なので周辺国に対しての情報収集は不確定要素が混在している今現在の最優先課題だ。

他にあるか?」

今度は誰も挙げなかった。

「この作戦は今後の俺達を左右する重要な物となる、全員覚悟して臨んでほしい。以上だ。

甲板に向かうぞ。」


[数分後]

〈特殊母艦 ライン 航空小隊 セイント・リフター隊(ボーイング MH-47G チヌーク 4機) セイント・リフター・リード機内〉

しばらくし我々STAGは4機のチヌークに分乗し、ラインの全通甲板から発艦した。そしてその後方から我々の後に発艦した AV-280C マンティスが付いて来た。



〈どこかの海 - ブリックス公国 調査船団 シラキュース号 甲板上〉

〔ギルト正規ハンター : クラスF アラント・エケテリーナ - 森民族エルフ

「今日は最悪の日ね・・・。」


私は周りを見てそう呟いた。周りは地獄だった。

周りには私と同じハンターや冒険者が赤い水溜りに沈んでいて、至る所から苦悶に満ちた啼き声が聞こえて来る。

またさっきまで元気に与太話をしていた料理長も、今ではもう一生料理が出来ない様な身体になって横になっていた。

近くでは数時間前まで威風堂々と航行していた姉妹船、ジョスパン号は今では火を噴きつつ波を斬っていた。

だがしかし、そんな状況でも一部のハンターは生き残っていた。


「おい!!アールネ、死ぬなっ!しっかりしろっ!!」

「誰か包帯・・・、ちっ足が捥げてやがる。」


そんな地獄の中で私は・・・


「誰か助けて・・・・よ。」

・・・・そう嘆くしかなかった。


[7日前]

〈ブリックス公国 西海岸南部 冒険者ギルト エーテルワイス支部 喫茶店 アラン店内〉

「公国からの緊急依頼?」


私はいつもの飲み物が入ったコップを持ちつつ、そう尋ねた。


「そうよ、公国沖で発生した魔力爆発に関しての調査。船団には公国海軍から2隻の護衛が付いて予定では3週間の日程、で各地のギルトから強豪が集まるし観測は数日で終わるから心配いらないわ。

元々はクラスH以上のみの参加だったけど特別に引き下げてもらったわ、それで報酬は白金貨シルバークロス5枚と黒鉄貨シュワルツレーテ1枚よ。」


私の友人でギルト受付嬢のキャレシー・バイア(ハーフエルフ)がそう言った。

ブッ!

それを聞きおもいっきり飲んでいた物をむせてしまった。


「・・・フォッ、ゲホゲホ・・・黒鉄貨シュワルツレーテ1枚と白金貨シルバークロス5枚って本当っ!? そんなにあれば1年は遊んで暮らせれるわよ! 絶対受けるわその依頼。」

「昔からエルフは金を気にしないと言われてるけど、あなたを見るともう今更ね。そう言うと思って参加できる様ににしといたわ。」

「流石、カリスマのやる事は違うわね。帰ったら1杯奢るわ。」

「期待しないで待っててあげるわね。」


まさかこれで私の人生が変わるとは思いもしなかった。


[4日前]

〈公国海上〉


「はぁー、本当にのどかよねぇー。」


私は地平線が続く海を見つめつつそう言った。

現状船団は特に問題も魔物の襲撃も無く順調に進行していた。


「だがよ、もっと水魔ゼーベル水竜フィフニールとかがいるかと思ったが。これじゃちょいくらつまんねえな、腕が鈍っちまうな。」

「ワイもそう思うがな。」


近くで座っている公国一強い剣客の一組、”動く破壊”ことクセン兄弟が嘆く様にそう言った。


「でも兄さん方、こんなんで大金もらえるんならええんちゃうかいな。」


それを聞いていた元剣士の料理長、ロー・シャスがそう反論するように言った。


「ま、そうよね・・・・。

でも・・・何かが起きそうな予感がする。」

「お前・・・相変わらずあんな活力ジュースなんか飲んでるな・・・エケ?」

そう言われ、振り向くと幼馴染で冒険者パーティー ”ブラックフォレスト” のリーダー ブルコ・スチン(人間)がパーティーメンバー

と共に居た。

「貴方も参加してたんだ、これに。」

「そりゃそうだろ、クラスを上げれるし金も入るからな。」

「それもそうね、どう・・・元気にしてる?」

「俺は大丈夫だが、活力ジュースなんか飲んで胸膨らませたり若返りしてると老けてしわくちゃになっちまうぞ。」

「別にいいじゃない!」

「金の無駄使いだな、早く無くなるぞ。」

「いいのよっ!!」


[数時間前]

〈どこかの海の上〉

昼食を終え、日課である日誌を書いた。

そして同じ船室で魔道士見習いのミチューリン・アゾレシュから借りた魔導、南方の妖術関連の書物を読んでいたとき、沈黙を裂く様にそれは起きた。 


ドドン!


刹那、船を大きく揺らす様な衝撃にみまわれ、壁がギシギシ揺れた。

私はベッド脇に置いてあった愛剣をかっさらう様に掴み、外へ出た。

甲板に出て目に入ったのは炎上する護衛船と攻撃をしている緑色の船だった。

皆は混乱していた。


「海賊だー!!海賊だー!!」「何で南方の奴らこんな所にいるんだ!!」

「南方くんだりで来やがったか!」「奴ら錬消術で姿を消していやがった!?」

「早く帆を張って逃げるぞ!!」


そんな声で耳の中は一杯だった。

残った2隻の帆は張られ加速し速度は上がった、しかし奴らはしばらくせず護衛船を沈め私達を迫撃して来た。



〔ギルト正規冒険者パーティー ”ブラック フォレスト” リーダー : クラスG ブルコ・スチン(人間)〕

突然俺達を襲った南方の海賊に対し、俺達ブラックフォレストは飛び移ろうとしていた奴らを斬ったりしていたが奴らの砲弾や謎の鉛弾で動けるメンバーは俺と後衛のニルバーナだけになってしまった。


「大丈夫か、エケ?」

「ブルコ・・・。」

「流石は南方の海賊だな・・・。」

「へへ、兄さん。モテますねぇ。」

「・・・・ニルバーナ、

るか、奴らを。」

「斬り込み隊、行くなら混ざろや。」「ワイもな。」


ニルバーナと俺で南方の海賊に斬り込もうと決めた時、クセン兄弟がそう言い中に加わった。


「エケ、お前は障壁を貼っている所に手伝いをしてやれ。

生きろ、エケ。」

「ええ。」

「行くぞ。」

「「おう。」」「えい。」

俺達はエケテリーナと別れて姉妹船のジョスパン号に飛び移った。

甲板上は殆ど無人になっていて、残っていたのは血と山積みにされた木箱だった。

 

「んでブルコさんよ、どうする?」

甲板上の木箱の山に隠れたクセン・ポントルモがそう尋ねて来た。

この状況下で出来る事は一つ。


「あんなのをまともに喰らえは元も子もないが、・・・・正攻法でやりあうしかない。」

俺は愛剣の水墨剣ゼーベルシュタインを抜き、手始めに砲弾を数十個ぶった斬り鉛弾を何百も切り刻んだ。だが大量のそれらが行き来する甲板では躱すしかなく、俺はすぐに隠れた。

「ちっ・・・本当に強いな、南方のは。」

「ケケケ、こりゃ興味深い。」

「ん?」


己がまま戦うクセン兄弟を別に、ニルバーナがそう言った。

「まさかこれがあるとはな・・・へへ、文献で見ただけだけんどまさかあるとは思わなんだ。」

ニルバーナは丸い鉄球、鉄の筒と野菜の根のような鉄の物体を持っていた。

「それは・・・?」

「旧ベルガ帝国の武器、手榴弾グレネダール迫撃砲ハビターゼンだ。」

「!!ベルガっ! 何でそんな事を・・・。」

「父の誘いでギルとに入る前まで公国の旧文明遺物研究所で武器の研究をしてんだ、へへっ・・・まさか役立つとは思わんだ。」


俺は何も言えなかった。

「やってみろ、ニルバーナ。」

「えい。」

「んでワイらはどうすればええねん?」

クセン・ドクンレツが俺とニルバーナを見てそう言いつつ戻ってきた。

「・・・・ケケ、そんじゃクセンさん達はおいらの援護を。ブルコさんは俺の手伝いを。」


「アイナ。」「ああ。」「わかった。」

クセン兄弟はそう言うと、再び外へとすっ飛んで行った。

そして息を継ぐ間もなくニルバーナは俺にこう指示した。

「ケケ、そんじゃ。ブルコさん、これ持っといて下さい。」

ニルバーナは俺に野菜の根の様な鉄の塊を渡して来た。

「でも・・・下は触らないで下さいな。」

「ああ。」

一拍置いて俺は聞いた。

「ニルバーナ、これは本当に在った物なのか?」

「本当に在ったも何も全て、ただ公国が隠しているだけですよ。」

「公国が・・・が?」

「今の公国王がこの”事”に関して明るみに出してはならないという思いがあって明るみにしてない。ただ一部に大臣や貴族達が腐敗しているからこうやって一部が明るみになって研究する奴らが出てくる、・・・・ケケ・・ちゃんとしていればこんな事にはならなかった。」

「・・・・例えば何だ。」

「一部の公国領地が閉鎖されていたり、公国親衛隊が駐在しているのは。その区域にそれに関わっていたり、残された物が存在するからだ。

―――― あと、”それ”貸して下さい。」

そう言われ、俺はニルバーナにその鉄の塊を渡した。

「行きますよ。」

「へ?」

そう言うとニルバーナはそれを筒の中に込めた。

刹那、”ポン”という音と共にその鉄の塊は ”ヒュルヒュルヒュルー” という音を発しつつ海賊船の甲板で爆発した。

「・・・は。」

「やばいっく、そろそろ逃げないとな。」

周りを見ると火の手がそこかしろから出ていた。

「オイッ! クセン兄弟、そろそろだ!」

俺はそう言い、クセン兄弟がシラキュース号に飛び移るのを確認するとニルバーナと共にその場を離れた。



〔ギルト正規ハンター : クラスF アラント・エケテリーナ - 森民族エルフ


甲板には次第に負傷者や負傷者を何とか手当てしている者が多くなり、私も傷だらけになって横になっていた。いくらなんでも森民族エルフのアドバンテージがあっても治療にはかなりの時間を要してしまう。

両舷には辛うじて生き残ったハンター、冒険者や魔導士達がなんとか船を守っていたが、ジョスパン号の方はボロボロになり今にも沈みそうだった。

それを見た私はこう叫ぶしかなかった。

「もう・・・誰か助けてよ!!」

すると遠くから ”パタパタ・・・” という音が聞こえてきた。

「今度は・・・何・・?」

その初めて聞く音にそう呟くしかなかったが、その音は希望の音の様にも聞こえた。



〈特殊母艦 ライン 航空小隊 セイントリフター隊 (ボーイング MH-47G チヌーク 4機) セイントリフター・リード機内〉

〔ユーレイン連邦海軍 STAG 第1中隊 第1小隊長 西都・道春 TACネーム : インターキラー コールサイン : アルファ・アクチュアル〕

ラインから発艦して数分、その間この機内を支配していたのはエンジンの騒音だけだった。


〈こちらセイントリフター・リード、そろそろ目標地点ターゲット ポイントに到着するので対空障害を潰してくれ。ETA3マイク〉

「こちらインター・キラー、了解・・・・降ろす前に堕ちるなよ。」

〈ああ。〉


しかし、それにも終わりが来た。

無線インカムにそんな声が響き、俺はH&K HK433のチャージングハンドルを引き初弾を装填した。


〈ETA2マイク〉


前方ドアのGAU-2Bと即に開いた後方ハッチのM3Mにドアガンナーが取り付いた。ドアガンナーはM3Mの初弾を装填し、銃口を海上へと向けた。


〈ETA1マイク〉


「起立! 降下用意。」


〈マイク0、ガンナーは対空障害を潰してくれ。

STAGの皆さんもだ。〉


俺はそう言い、立ち上がった。

他の隊員も立ち、後方ハッチに近い隊員は銃をハッチの外に向けた。


〈ファイア。〉


グヴウォォーーーーン

ド ド ド ド ド ド ド ドッ

パパパ、パパパ、パパパッ タタタッ、タタタッ、タタタッ


チヌークのM3MとGAU-2Bの12.7mm, 7.62mm弾、隊員達が持つCZ805,HK433,HK416A5やC7 LSWなどの5.56mm弾がそれぞれ4機のチヌークから放たれた。

チヌークのドアガンはそれぞれ2隻の海賊船の甲板を掃討し、メインマストと甲板上の前装式大砲を破壊した。そして隊員達は甲板上の海賊共を処理した。

更にAV-280C マンティスがAGM-114 ヘルファイア対戦車ミサイルで海賊船の舵を破壊し、海賊船らは停止した。


〈ホバリングする、さっさと降下ラベリングしてくれ。〉

「了解、

第1小隊! 降下! ゴーゴーゴーゴー!」


俺らのチヌークは海賊船の1隻にホバリングし、ロープを伝い降下した。

「3個分隊に分かれて制圧を行う、第2小隊は甲板に残って残敵を処理してくれ。」

「「「了解。」」」「分かった。」


そう言い船の中とへと続くドアへと向かった。

「出会い頭での戦闘になる。マシュンコ、先頭に立て。

ドアブリーチャーを付けろ」

マシュンコが先頭に付きマニュアル式のドアブリーチャーを取り付けた。

「3カウント、

3・・2・・1・・、突入!」


カチ、カチ・・ドーーン!!


爆発でドアが破砕され、隊員達は船室に居た海賊共を処理した。


「1名処理!」「2名クリア!」「こちらは4名!」

「次だ!!」

我々STAGは訓練や実戦通りに動き、次々に船室を制圧し海賊共を駆逐して行った。そして暫くするとドアやその周りがごてごてに装飾された部屋の前に辿り着いた。


「奴らを捕まえる、CNを使うぞ。」

俺の声を合図に全員がSF10ポータブルガスマスクを被り、俺もマスクを着用した所でマシュンコと先頭を交替しドアを少し開けM6を放り入れ閉めた。

するとすぐに人の咳き込む声が聞こえて来た。

「突入、3カウント。

3・・2・・1・・、ブリーチ!」


突入した中には咳き込み過ぎ虚ろな目になり突っ伏した男が数人、この部屋の主と共にノックアウトしており、まともな抵抗もしないで我々は奴らを叩き起した上で手錠タイラップで拘束。俺の分隊の隊員が移送の為に連行して行った。


「こちらインターキラー、容疑者数名を拘束し移送。制圧完了した。」

〈インターキラー、こちらホテルケベック。了解・・・流石はベテランね。

賭けに勝ったわ。おつかれさん・・・

まあそれは置いといて・・・、他の隊は未だ制圧中よ。〉

「了解した・・・、賭けとは何の話だ?」

〈帰還したらのお楽しみよ。〉

「・・・・分かった、

船内の捜査を行う。」

〈了解、情報のアップロードはタブレットを介して行って。

あと、見落とすな。〉

「了解、ブレイク。」


俺はそう切り、SF10とM6を片付けた。

そして俺はこう令した。

「ビッテル、ソロ、マシュンコとベルガーは二人班ツーマンセルで行動しろ。

俺はこの部屋を当たる。」

「「「「了解。」」」」

そう告げると4人は駆け足で船長室らしき部屋から立ち去って行った。

「さて・・・何が出るかな。」


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〈海賊船 Uアンノウン-1 船内船長室〉

〔ユーレイン連邦海軍 STAG 第1中隊長 第1小隊長 西都・道春 TACネーム: インターキラー コールサイン: アルファ・アクチュアル〕


「さて・・・・・。」


船長室で一人になった今、俺はこの部屋での捜査を行うことにした。


「まずはデスクからか・・・。」

まず俺はこの部屋にぽつんと存在するこの古びた執務机から始めることにした。


[十分後]

結果から言おう、

デスクからは日記帳らしき本、ラッパ式拳銃と大口径のリボルバーを見つけた、アダムスリボルバーに似ていた。デスクの下には隠し扉があった、

ま・・・・人1人通れそうな大きさだったが。

そして周りの本棚やタンスからは短剣や謎の勲章、またふんだんとタイヤモンドがちりばめられたブローチが見つかった。

そして・・・、


「いっちょアドベンチャーと行くか。」

隠し扉が残った。


「各員、状況は?」

〈こちらビッテル、現在貨物室を捜索中。

金銀財宝ばっかりで凄いですが、中に金メッキでダイヤが埋め込まれてる小口径拳銃を見つけました。

そう言えば、うちの姫に土産いいですかね?〉

「・・・バカが、見つかるなよ。」

〈了解です。〉

〈こちらベルガー、今は武器庫らしき部屋を捜索中。

こんな異世界に来てもAKライフルカラシニコフを見るなんて ―――― 〉

「待て、AKカラシニコフだと?」

〈ええ・・・・ブルガリアの74だと思いますよ、

隊長、他にもRPDやらモシン・ナガンやら訳分かんない物とかが置いてありますよ。〉

「・・・分かった。」

〈では。〉

・・・・カラシニコフかー、何なんだここは?


俺はそう考えつつタブレットを取り出し、全体のレポート情報をアップロードした。

そして、

「さて、行くか。」

俺はデスクをどかし、HK433のポリマーストックを縮めた、

そしてナイフホルダーから大柄の私物スイスアーミーナイフを取り、隠し扉の南京錠をピッキングした。

すると、ガチャッという音と共に錠が外れた。

そして隠し扉を開けると、梯子が有りそれは下へと続いていた。

「降りるか。」



〈船長室 隠し部屋〉

「・・・・うへぇ、すごいなこりゃ・・・。」

梯子を降りた先に有った物は、この部屋の主の私物である財宝の数々だった。

紋章の付いたティアラ、金色の西洋甲冑、数々の宝石が鏤められたブローチや剣などだ。

だがその中には俺が見知った物も存在した、

旧ソ連の代表的軽機の一つであるRPD、大英帝国の最高傑作 リー・エンフィールド SMLE Mk.3 ボルトアクションライフルである。

そしてよく分からない形式のボルトアクションライフル、拳銃そして剣や杖が無造作に置かれていた。

「なんじゃこりゃ!!

なんでRPDが置いて・・・ん?」

すると奥から微かに物音がした。

俺は背中のHK433を取り、構えつつ慎重に進んだ。

奥にあったのは鍵が厳重に掛けられ、尚且つ擬装された扉だった。

「鍵が掛けられているということは、中に見られちゃ困る物があるってことか・・・。」

再びナイフホルダーから私物のスイスアーミナイフを取り、ピッキングして中に入った。


〈隠し部屋 : 新たな隠し部屋〉


ガチャッ


中に入って見た物は・・・。

「糞が!外道だな!」

2つの鉄格子枠の牢屋に囚われた合計10人の少女達だった。

それを聞いていた犬耳黒髪碧眼の17才程の少女が怯えた目で俺を見つめていた。

「あなたは・・・? 海賊の仲間なの・・なんですか?

わ・・・私は好きにしていいから他の子には触れないで!」

どうやら俺の事を海賊の仲間だと思っているらしい。

「いや俺は海賊じゃない、大丈夫だ。

君らは何故ここに?」

「数週間前に村が襲われて・・・カナン人は金になるからって言って・・・ここに無理矢理・・・。」

フラッシュバックしたのか、彼女は耳を下げて俯いてしまった。

「・・・・すまん、ここから出してやろう。」

鉄格子に近づき、俺はスイスアーミナイフで錠をピッキングし開けた。

「あなたは・・・ベルカの・・・人?」

「いや、ベルガが何かは知らないが。

俺はユーレインという国の海軍に身を置く兵士だ、この船にはもう海賊はいない。安心してくれ。」

「そう・・・。」

俺の言葉で彼女達の緊張がほぐれたのを見て取れた俺は、無線を入れた。

「こちらインターキラー、捜査中に監禁された女性10名を発見。

PTSDと衰弱が散見される、緊急搬送ピックアップの要請を乞う。」

「・・・大丈夫?」

交信している俺に、彼女はそう声をかけてきた。

〈インターキラー、こちらホテルケベック。

フォード島のスーパーオスプレイを向かわせる、コールサインはスターリード。〉

「なっ・・・。」

「了解。」

俺は一息付き、

「仲間が直ぐに来て君達を手当出来る所まで連れて行く、すぐに信用できんと思うが俺に付いて来てくれないか?」

「・・・分かりました。」

彼女と他の9人は少々戸惑いつつそう頷いた。

どうなるやら・・・。



〈海賊船 Uアンノウン-2 船内〉

〔ユーレイン連邦海軍 STAG 第1中隊 第3小隊 所属 梶田かじた元夫差もとふさ TACネーム: ケフェウス コールサイン: チャーリー・3〕

[同じ頃]

貨物室とみられる木箱が大量に放置された船室を同期兼バディの猪木おのき呀些げっさと捜索していると、木製のスライドドアが錠でロックされているのを発見した。

「ピッキングして突入する、ボアはここで待機。」

「了解。」

そう言い俺はエマーソン カランピットをホルダーから取り、ピッキングした。


カチャッ、 ガラガラガラ・・・・・


ドアを開け、愛銃のロビンソン・アーマメント XCR-Lを構えつつ慎重に室内へと突入していった。

室内にはランプがぶら下がっており、それ以外何も無いただの牢らしき空間だった。だが、俺の経験から言えることがあった。

何かがいる・・・・と。

奥の方へと進み、少し暗くなり俺はマグライトを取り出して周囲を照らした。

すると男が2人、牢に居た。


「大丈夫ですか?」


俺はその男達にそう問いかけた。


「飯を数日ありついていないが、大丈夫だ。」「小官も同じく。」

「そこから出しますね。」

再びカランピットを取り、鍵をピッキングして牢を開けた。

「どうぞ。」

「すまない、しかし・・・やはり貴人の予想通りでしたな。」

「だろう・・・、貴人は”ユーレイン”の者か。

いやはや、助けられる側になるとはな・・・。」

「・・・何故我々の事を・・・

いや、今はあなた方の解放が優先です・・・立てますか?」

「ああ。」「小官は・・・少々足が。」

「了解しました、どうぞ肩を・・・。」

「ありがたい。」


こうして俺は2人の男を助けた・・・どうなるかも知らずに。


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〔ユーレイン連邦空軍 特殊救助隊パラジャンパーズ 第1特別戦術中隊STS 第1特別戦術班STT 班長兼中隊長 ベラース・クリル TACネーム: ホワイトスネーク コールサイン: ナイチンゲール1 ロメオ・アルファアクチュアル〕

〈ユーレイン 西部近海上空 ―― 病院母艦 フローレンス所属 レッドクロス隊 (ベル MV-22M スーパー・オスプレイ 4機) レッドクロス・リード機内〉


STAGが海賊船団の制圧を完了した、との報告を受け。フローレンスに座乗していた我々パラジャンパーズ第1、第2STS所属の8個STTの各班はそれぞれスーパー・オスプレイ4機に分乗し目標の船団へと向かった。


「全員、我々パラジャンパーは人をかす手です、。しかし身の危険を感じたら、躊躇なく制圧してください。

我々の目標は戦闘ではなく、人命救助です。その事を思い出して下さい。」

「「「「「了解!!」」」」」「「「「「「はい!!」」」」」」


私の言葉に機内に居る第1、第2STTの隊員が勢い良く頷いた、

余りの勢いに若干引いた。

他者を助けようとして自分が死んでしまったら意味がありません。


「真っ先に乗り込んで、目標が死んでると思わないで!!」


我々のモットーを口にして、到着を待った


〔ギルド正規ハンター : クラスF アラント・エケテリーナ - 森民族エルフ

「・・・・何あれ。」

鉄塊が4個、空を飛んでいる。

そして南方の海賊船は破壊されて、鉄塊から人々が降りて行った。

「でも・・・勝ったの・・・。」

周りでは単純に驚く者、それが何なのか周りの者と話し合う者、そして何も話さずにただ座り込んでいる者も居た。特に障壁を貼っていた魔導士が何人かぐったりとして座り込んでいた。

それとは別にクセン兄弟とブルコはニルバーナの歴史話に食い入る様に聞き入っていた。

「その”ベルカ帝国”っていうのは何だ?」

「文献がちぐはぐなんだな、よく分からんが・・・ ―――― 。」

「へー。」

「オモろいな、そりゃ・・・・。」

すると、ある冒険者が叫んだ。

「ん? おいっ! また来たぞ! さっきよりも多いぞ! しかも一つはこっちに来るっ!!」

その言葉に戦慄が走った。

「何!!」

よく見ると確かに1つはこっちに向かって飛んでいた。

「な・・・戦いの準備をしろっ!!」

生き残りのまとめ役になっているクラスLハンター、ブラスコ・ヴィンスが右腕を吹き飛ばされ、その上に応急処置を施された状態でそう言った。

数人の生き残り冒険者・ハンターが己の得物を持つ中、

「何言ってんの!あんな化け物と戦うなんて・・・それに殺そうとしてんならとっくの前に殺されているわよ!今は、見極めましょう。」

「何だとお前!!」「だがなぁ・・・・」

外野がそう反論する中、私はそう告げた。

その間にも鉄塊の1つが私達の船の上にたどり着き、騒音を吐き出しつつロープを甲板にたらした。

そして人々が降りて来た。

「降下完了! コンタクトを取ります!」

一番最初に降りてきた女性がそう言い、

「この船の方ですね? 助けに来ました!!」

「ええ、沢山居るわ・・・診てあげて。」

「はい!

ここの船長は・・・?」

すると、彼女の近くに居た若年のハンターが剣を鞘に戻し、

「船長はいま重症で身動きが取れない。」

そう言った。

「案内する、重症の奴らが居る。」

そのハンターは足の切傷から血を流しながらも立ち続け、足をぎこちなく動かし彼女達を船内へと案内した。

だが静かな殺気を感じた。

「あの野郎・・・。」「ちっ・・・。」

彼女達の後に降りて来た集団だった、また彼らも船内へと入っていった

「・・・・彼女、愛されてるわね。」

そして私は、苦労している彼らに目線を向けた。


〈帆船内部〉

〔ユーレイン連邦空軍 パラジャンパーズ 第1STS 第1STT 中隊長兼班長 ベラース・クリル TACネーム : ホワイトスネーク コールサイン : ナイチンゲール1 ロメオ・アルファアクチュアル〕

足の切り傷から血を流しつつ中へと案内してくれた若い男の人は私に礼を言い、倒れてしまった。

後方の隊員達が彼を介抱し、すぐに治療を始める中私はこう令した。

「すぐにトリアージを始めて!!

カテⅠはオスプレイでフローレンスに!ⅡとⅢはこの場で!

0は可哀想ですが無視して下さい!」

「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」

床が血みどろな上阿鼻叫喚の巷と化していたが、普段の成果を出す様に第1、第2STTの隊員達は動いた。

「君はカテゴリーⅢだ、軽傷だから待っててくれ。」「おい!聞こえるか!? ちっ、心臓が停止している、助細動器AEDを使用する!」「「ぐがぁぁーっ!」よし、脱臼は治ったわ。」「これは酷い貫通銃創だ、血を止める。少し痛むが我慢してくれ。」

私は近くで倒れていた右腕の肩から先が無い若い男性の応急処置を始めた、彼は周りより豪華で綺麗な鎧を着ていて近くには彼のとみられる装飾の施された剣と短刀が有った。

最初私は彼が貴族か何かかと思った。

「なぁ・・・あんたら何故・・・見ず知らずの俺達を助けた?

ぐっ! もう少しやさしくしてくれ!」

すると彼が話しかけて来た。

「長く痛みを感じたいのならそう言って下さい。

・・・そうですね・・近くに例え見ず知らずでもけが人が居て、自分にその人を助ける力があったなら 助けませんか?

ひとまず応急処置をしました、本格的に治せる所に移動していただきます。

異議は認めません。」

「そうだな・・・・ありがとう。」

彼を簡易ストレッチャーで甲板まで運び、他の隊員に引き継ぐとまた船内へと戻った。


[2時間後]

搬送と治療は順調に進み、最後の負傷者を載せたスーパー・オスプレイを見送り私はほかの隊員達が居る船内へと歩いて行った。

「やっとこさ終わったわね・・・。」

一息つき、

「で? 状況は?」

そう言った。

「はっ、

民間船2隻に居た人数は210名、内200名が負傷し3名重傷で搬送は完了しました。5名が死亡、2名が無傷でした。

海賊船2隻の人数はのべ400名、死者300名で重傷・軽傷含む生存者は100名です。」

副班長兼副中隊長のアナトール・シュニッツラーがそう報告して来た。

「ありがとう、アナ。

皆ご苦労様です、今回は多くの死者を出してしまいました。命は尊い物ですが我々が一人一人ふんばって命を救った事には変わりありません。その事を誇りにしてくれれば幸いです。」

「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」

「さ、帰りましょう・・・我々の家へ。」

私はそう全員に、言った。

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