プロローグⅡ - 海、鉄、艦橋
[ある世界 ある海にて]
ベルート社会主義共和国より数千キロ、太陽の光が反射して蒼く輝くある海。
そんな海にとある要塞化された小島を包囲している艦隊があった。
「破壊するのが惜しいぐらい見事に構築されているな、本当に綺麗だ。」
艦橋でそう呟く一人の男が居た、その男の階級章は大将。
そしてその大将の目の先には、小島が広がっていた。
リアス式と普通の海岸を合わせた様な海岸線にはトーチカや砲陣などの火点が設けられており、その後方には星型城郭を本丸とした要塞群が存在し数多くの連装・単装要塞砲塔がその砲門をこちらに向けていた。
「・・・・本当はこんな事はあまりしたくないのだがな。」
「大将、タリーチ・ユークトバニア連合艦隊いつでもOKです。」
「そうか・・・、了解した。」
少佐の階級章の女性にそう言われた大将は、傍らにあったマイクを取り。
「あー、こちらはユーレイン海軍・・・
諸君等は包囲されており、勝ち目はない。
我らユーレイン連邦海軍の名に於いて貴官等の身は保護される、即刻投降せよ。」
そのマイクを通じて、外部スピーカーと無線の両方で呼びかけられた。
所詮、その島への投稿勧告だった。
1分・・・。
5分・・・。
10分・・・。
「大将!、島から入電です!」
「読んでみろ。」
「はっ、”我ラベルカ帝国ノ再興ニ命捧ゲン”です。」
「・・・・。」
「大将!、無線です。」
「・・・・繋いでくれ。」
「はい。」
艦橋のオペレーターがそう言うと、ノイズ混じりの音が聞こえ出した。
〈ザーザーザザッザーーー(・・・いう事だ!)
こ・・・ザーーッ こちら、オイディプス島副司令、フッターハレン中将だ。
我々はベルカ帝国再興の為に立ち上がった、なので”今”は降伏するつもりは無いし命を捧げるつもりだ。
だが小官は無駄に命を捨てるつもりはないし、司令官の様な帝国云々に縋っている訳でもない。戦い尽くしたら降伏する、以上。
ザッ〉
「・・・・フフ、フハハハハハ!!!」
「無線切れました、大将って・・・大将?」
大爆笑する大将に、副官がそう尋ねた。
「ああ、すまんすまん。
異世界の将官はこんな面白い奴ばかりなのか・・・
よし少佐、全艦対地戦用意だ。第一射は砲のみだ、それ以降はミサイル等も使うぞ。」
「了解、オペレーター。全艦に対地砲撃を下令して。
砲術オペレーター、全砲射撃用意。弾種は・・・1式榴弾。」
「了解。」
「了解、やまとCIC・・・1式榴弾。」
〈甲板上に居る兵士は至急屋内へ退避せよ、繰り返す・・・〉
この艦橋の外、艦隊はその島に艦砲射撃を行う為。
大将が座乗する”彼女” ―― 艦隊旗艦の戦艦”やまと”は一番から三番砲塔の46cm砲と15.5cm砲を島に向けた。
「全艦いつでも攻撃開始可能です、大将。」
「分かった、諸君・・・・全艦に達する。
こちらは(むぎゅー)」
大将が何か言おうとした時、黒髪大和撫子な着物少女が彼の後ろから抱き着いて来た。大将の背中に押し付けられている少女の巨大メロンの様な二つの物体を副官がジト目で見ていたり、オペレーター達が苦笑いでその場の空気をなごませたのはご愛嬌である。
「
大将は半ば苦笑いでそう言った。
「誰も私に気づいてくれないよー(笑)」
「・・・・・ははは。」
「こらーっ、や・ま・と!!」
「げっ、妹。」
するとどこからともなく、あっさりとした着物少女が出現し大将の背中でむふふとしていた少女を引き剥がした。
「うちのバカ姉がすいませんねー、大将。また今度お付き合いして下さいな、ご機嫌麗しゅう。」
そう少女は言うと、もう一人の少女と共に消えた。
「・・・・砲術オペレーター、すまないな。
いつでもできるか?」
「はい、全艦いつでも行けます。」
「分かった、無線をユーレイン全艦にやってくれ。」
「はっ・・・・・・繋がりました。」
「ありがとう。」
大将は無線のトランシーバを取り、
「全艦に達する、こちらは司令官・・・タッソである。
我々第11艦隊は本日、約35年ぶりに攻撃を行う。
つまり、この世界に来てから初めての軍事行動である。
承知の通り、即に本旗艦”やまと”を除きほとんどが実戦未経験である。
なので各艦、気を引き締めて今作戦に望め・・・以上。」
そう言うと、大将は再びトランシーバを握り。
「タリーチ・ユークトに・・・。」
〈こちら栄えあるユークトバニア連邦海軍司令のパエスだ、
タッソ・・・良い演説だったが、いつまで我々を待たせるつもりだ?〉
〈タリーチ連邦海軍のサカモトです、同じくです〉
「ああ、すいません・・・お二方。」
「大将・・・・良いですね?」
「ああ、
ユークトもタリーチも攻撃を始めて下さい。」
〈了解。〉〈はい。〉
「全艦砲撃始め!」
すると各艦の主砲や副砲 ―― 45cm砲、41cm砲、36cm砲や35.6cm砲、15,5cm砲、15.2cm砲、14cm砲や8cm砲が火を噴いた。
近くにいるタリーチ・ユークトバニア連合艦隊は、80cm砲、40cm砲、25cm砲などで砲撃をかましていた。
まさにかつての硫黄島作戦を想起させる様な様相を呈していた。
「全艦、ミサ「島から砲撃、来ます!」
口径は!?」
「40cmかそれ以上です、
5・・6・・7発以上、3・・2・・1・・着弾。」
ドドドドドーン
ザバババーン
「各艦、大丈夫か?」
〈こちら”むさし”、異常なし。〉
「こっちは何もないようです。」
〈”いせ”、艦首付近に着弾。現在復旧作業中・・・。〉
〈”とさ”、こちらは異常ありません。〉
〈こちら”ひゅうが”、”ながと、”むつ”、”ふそう”、”やまぎ”、”こんごう”、”ひえい”、”しなの”共に異常はありません。〉
島からの砲撃をモロに喰らった艦隊だったが、損害は軽微だった。
だが、
「オペレーター、連合艦隊は?」
「砲撃の影響で、ユークトバニア艦隊4隻とタリーチ艦隊1隻が戦闘不能になり現在後退中です。」
「了解した、
オペレーター、砲撃始点位置は特定できたか?」
「はい、トマホークを発射しますか?」
「砲術オペレーター、トマホーク。」
「了解、トマホーク・サルボー!」
すると”やまと”側面の装甲化ボックスランチャーから数発のBGM-109G トマホーク ブロック4 巡航ミサイルが発射され、島へと向かって行った。
やはりここでも、ユーレインは世界の警察となっていた・・・・。
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