人気者?

目が覚め、携帯を見るが神谷さんからの連絡はない。


「忙しいのかな」


好きとか分からないが、連絡が返ってこないのは何だか釈然としない。


「まぁ、いいんだけどね・・・」


近くのコンビニでいつでも会えるし、待っていれば返ってくるだろうと

思い、朝の支度をする。


朝食を食べながら、ふと昨日の事を思い出した。

霧島先輩がお弁当を作ってくれるって言ってたことを。


「疑う訳じゃないけど・・・本当に作ってきてくれるのかな」


昨日食べた卵焼き美味しかったし、楽しみだ。


「さて、と、準備して学校に行かなきゃ」


急いで準備をし、家を出る。

相変わらず視線を感じるが、慣れたもので気にならなくなった。

しかし一人で学校に行くのはやはり少し寂しい気がする。


「学校に行くまでだし、気にしてても、ね」


考え事などをしているうちに学校へ着き、教室へ向かう。

教室へ向かう途中、廊下で霧島先輩と鉢合わせた。


「おはよう恵ちゃん。今日のお昼、昨日と同じ場所でね。」


なぜか耳元で話す霧島先輩の声に少しだけ、ドキッとした。少しだけ。

でもこれは、不意の事だからであって好きだからじゃない。はず。


「ちょ、なんで耳元で話すんですか・・・」


霧島先輩を見ると、悪戯っ子のように微笑み、


「ふふ、照れるかなって思って。あと、照れてくれたら可愛いなって思ってね。」


からかわれた様でなんだか悔しい。


「じゃあまたお昼にね」


そう言って霧島先輩は教室へ行ってしまった。

先輩と別れた後、自分の教室へ向かう。


席に着くと、クラスメイト達が珍しく話しかけてきた。


「霧島さんと仲いいの?」

「霧島先輩とどういう仲なの?」


どうやら私が知らないだけで霧島先輩は有名なようだった。


「どういうって言われても・・・」


「はいはい、恵の事あまり困らせないでね。」


佐倉がそう言うと、クラスメイト達はごめんねといい、席へ戻っていった。


「ありがとう、ごめんね」


というと、気にしないでといいぐっと顔を近づけてきた。


「えっと・・・?」


問いかけるとにこっと笑い、


「それで、先輩はもしかして恵の事好きなのかな?」

的確な質問に思わず咳込んでしまった。


「な、そんな事、ないでしょ。第一、女同士だし。」


そう、私が好きなのは男の人。女の人ではない。

女同士とか良く分からないし。


「好きになるのに性別なんて関係ないんだよ。先輩の顔は恋する乙女の顔だったもん。」


少しむっとし話す佐倉は泣きそうな顔をしていた。


「恵も好きな人が出来たらわかるよ。男だから、女だからだけじゃなく、この人だからいい、てね」


佐倉の言葉に納得してしまった。

確かに、その通りだと思う。

勝手に男だから、女だから、同性だから無理なんて思いこんでいたが違うのかもしれない。


「それで、霧島先輩とはどこで仲良くなったの?」


相変わらずにやにやしている佐倉に、昨日の出来事を話そうと思ったが、

先輩との出会いを友達とはいえ誰かに話したくない、と思ってしまった。


「んー、秘密」


そう言い、佐倉の頭を撫でた。


「ん、秘密ならしょうがないかぁ。」


そのあとも他愛もない話をしながら、授業を受け、あっという間にお昼の時間になった。

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