第11話 町に着く
ウォーターファングとの闘いから数十分後
町に入る門が見えてくる。が、すぐさまに
入ろうとせずに脳内のマニュアルを活用する
為、1度木陰に入り考える時間を作った。
(ピシエドの町。バス王国南端に位置する。
ピシエド子爵が治める中規模の町。森林の
奥から来ました。なんてのは…流石になぁ
怪しまれるか?…とんでもない遠方の田舎
から出て来て、森林を通って来ましたー!
みたいなストーリーの方がいいのか…な?
ウォーターファングも、冷静に考えるとだ
そこそこ強い魔獣!だとマニュアルからの
情報がある。懸命に死にかけながらも倒し
たんだが、田舎者が倒せるものか!何て事
言われたら、面倒になりそうだな。俺自身
は未熟…というか覚えたてだが、無詠唱で
無詠唱で魔法をしようするのは、古文書に
載っているレベルの実力者だとこれもまた
脳内のマニュアルにある。先ず目立たない
様にするには、生活魔法が使用出来ますよ
程度の人間を演じた方が後々、面倒な事は
ないのか…な?)
なんて事を考えていると、
「おいお兄さん」
と、急に話しかけられた。目の前には軽鎧に
槍を持った姿の衛兵らしき人間が立っていて
俺を上から見下ろしていた。
「…あー森林を抜けてきたから疲れてね。
少し休憩していたんだ」
(また油断したッ!考え事をし過ぎたか…。
ここまで無防備に接近を許すなよ…)
俺は努めてポーカーフェイスを装う。
「森林!?無慈悲の森を抜けてきただとッ!
あんた何モンだ!?」
「あの森は無慈悲の森っていうのか。あんた
には簡単にここで見つかったけど、気配を
消すのと、体術は少し自信があってな…。
抜けてこれたんだ。俺の名前はヒロって
いうんだ。衛兵さん」
(あー!こうなりゃアドリブで。変な空気に
なったら退却するか。)
「ん?ああ、俺は町の門兵をやってるグリン
ってもんだ。よろしくな」
(会話が出来そうだな。さてと…)
「よろしくなグリンさん。それでわざわざ話
掛けてくれたって事は、町の中には入れて
貰えるのかい?」
俺は立ち上がりながら、グリンに問う。
「まぁ俺も巡回していたら、偶々お前さんを
見つけたんだ。ところでヒロ…だったか?
町に入るには銀貨1枚だが払えるかい?」
(金がいるのか!?…マニュアルに無いぞ!
仕方ないな)
「実はウォーターファングの死体を2匹持って
いるんだ。売れないかな?」
「!?ウォーターファング!2匹!マジか!
ああー!?凄いなヒロ!詰め所に来いよ!
隊長にも報告しなきゃならん!こっちだ!
付いて来い!」
グリンは興奮気味に、詰め所に俺を促すので
付いて行く事にした。
町の門の左側に門兵が出入りする、詰め所が
ある。グリンは部屋に入ると笑顔で指差す。
「ヒロはそこの椅子に座って待っててくれ。
隊長を呼んでくるからな」
(慌てたら猪突猛進だが、いい奴だな。だが
…しかし俺の話が嘘だったらどうする予定
だったんだアイツ?)
そんな事を考えていたら、グリンが男を1人
連れてきた。軽鎧が所々若干豪華だ。彼が
多分隊長だろう。
「君がヒロだね。私がここの隊長のモーラス
という者だ。さて、早速だがウォーター
ファングの死体を持っているらしいね。
見せてくれるかな?」
「モーラス隊長初めまして。ヒロです。では
早速ですが、正面に出しますので」
俺はたすき掛けの紐を外して、鞄を開ける。
ウォーターファング2体を出す。
ドサドサと正面の空間に2体の魔獣の死体。
「ほう!正しくウォーターファング!しかも
2体とも頭一撃か!」
「運が良かっただけですよ。グリンさんには
少し話しましたが、気配を消すのと体術
には自信がありましたので。幸運にも
上手くこちらの動きに嵌っただけです。」
「フフフ…謙虚な事だ。まぁ深くは聞かん。
ところで買い取りだが、解体していない
から、2体で金貨4枚でどうだい?そこから
町に入る銀貨1枚を引いて、金貨3枚と銀貨
9枚をこの場で渡すよ」
(マニュアルよれば、解体を完璧にして
いれば、1匹金貨3枚と銀貨5枚。…まぁ
こんなもんか)
「はい。それでお願い致します」
俺は承諾した。モーラス隊長は金の入った
袋を俺に渡して、
「いい取り引きだよ。中身を確かめて」
「……はい。確かに。頂きました」
「ようこそ。ピシエドへ!ヒロ、歓迎
するよ!」
「ありがとうございます。モーラス隊長。」
俺と隊長は握手する。隣にいたグリンも、
「滞在を楽しんでくれ!ヒロ」
「ああ。ありがとうグリン」
俺とグリンは拳を合わせた。
モーラス隊長が直後に。
「ああ、ヒロ。町に来たからには、仕事を
するんだろ?ならすぐに冒険者ギルドに
登録すると良いぞ。ギルドカードを所持
すれば、町の出入りは無料になるぞ。正面
から右の角にある赤い屋根の大きな建物が
そうだ」
(ギルド。言葉の響きはわかるが、マニュアル
にないな。行ってみるか)
「色々と親切にありがとうございます」
こうして、俺はピシエドに無事入り、冒険者
ギルドを目指す事にした。
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