第10話 町を目指す

太陽の位置からして、2時間ほど歩いた

だろうか。まだまだずっと森の中だ。


変わり映えしない景色に少し退屈を感じる。

退屈しのぎと実用の間を取り、周囲の確認の

為に1番高い木に登る。


風魔法を手足に纏わせ、サッと木のてっぺん

に登り終えた。


北の方角に、町が見えるかを確認する。


「後、1時間てとこか…」


ひとり呟き、木を降りようとする直前にそれ

程遠くない場所に、青白い狼型の魔獣を発見

する。


(ウォーターファングか…水魔法と治癒魔法

 を使う。なるべく素早く倒す事が出来れば

 いいがな…)


俺は木々の上を静かに飛び移り、感覚を詰め

て行く。

木を20本程移り終えたところで、ウォーター

ファングの真上に来た。


コンバットナイフを構え、気配を悟られない

様に自由落下で木から降りた。


そして寸前に身体とコンバットナイフに魔素を纏い、脳天を突き刺す。


「ゲヒャンッ!」


そんな叫び声を最後にウォーターファングは

死んだ。


(フゥー…魔素は流したが、属性を何も意識

 していなかったな。緊張していたな。まぁ

 身体強化らしき魔法は発動していた様だ。

 だからヨシとしておくか)


全長1.5メートル程のウォーターファングを

鞄の中に放り込もうとした瞬間に…


ヒュッ!


と顔の目の前を光るモノが通った。右頬から

鼻、左頬途中まで切れて地面に血がパパッと

飛び散る。


(油断したッ!もう1匹いやがったか!)


もう1匹のウォーターファングは鋭利な水弾を

放った様だ。もう数発が、すでに発射体制に

入っていて間髪入れずに撃ってきた。


(壁を使うには狭い!ならばッ!)


俺は水弾を土弾で撃ち落とす。

バチッ!バチッ!と音を立てて、相殺しあう

水弾と土弾。


そこに俺は間髪入れず、コンバットナイフを

投げる。


「グビャンッ!」


コンバットナイフは、ウォーターファングの

脳天に刺さり命を奪った。


「ハァ…ハァ…マジでヤバかった。町手前で

 死んでしまうとこだった」


俺は呼吸を整えながら、コンバットナイフを

一振り、洗浄、乾燥を掛けて鞘に収めた。

それから顔の傷に治癒魔法を掛けて鞄に

ウォーターファング2匹を収納した。


(油断すればスグに死ぬ程度の実力か…)


俺は警戒を解く事なく、町へ向けて再び歩き

始めた。





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