第8話 サンドバッグと最終試験

3日後、俺はサンドバッグの前に

コンバットナイフを構えて立つ。


ギギギと音を出しながら、人型ではあるが

案山子の様な物体は太い腕と足を出した。

想像通りの最終試験。


サンドバッグの顔部分の目が光り、地面を蹴って距離を詰めて来た。


大丈夫だ。動きは追えている。顔面への

パンチ、胴へのキックの連続攻撃を躱して

左斜めから斬りつける。


ゴシュッ!と音がしたが、頑丈なのは

相変わらず。傷一つ付いていない。


サンドバッグが下がり、魔素を纏う。色は赤

瞬間、機関銃の様に火球を指先から放つ。


ブボボボボボッ!


俺は足に風を纏わせ、スピードを上げて周り

込み、魔素の色を青に変更して指先から水球

を連射で放つ。


ビシュビシュビシュ!


3発程命中。が、サンドバッグは壊れない。

今度は相手が、緑の魔素を纏った。


(次は相手が風か!)


サンドバッグの指先から風刃が放たれる。


(なら!土壁ッ!)


俺の目の前に3メートル四方の壁が出来て

風刃を防ぐ。ザクザクと音を立てている。

壁から跳躍して、サンドバッグの脳天を

コンバットナイフで打ち付けた。


ゴッ!と音を立てるが、壊れない。次は青の

魔素をサンドバッグが纏う。指先から水圧の

ある刃を出して、横薙ぎに振り、切った。


俺はしゃがんで水刃を躱す。スパッ!と後方の

大木が切れた。


(ならばっ!)


コンバットナイフを中心に青の魔素を纏い間

を詰める。

サンドバッグは、上段から切り付ける。


俺は相手の側面に立ち上段を横からいなす

様に受け、流れる様に刃を首に当てる。


ギャリッ!と音を立てる。


サンドバッグは立ち尽くす。次の瞬間バキバキ

と音を立て、全身がヒビ割れた状態になった


…終わりか?

そう思った瞬間、何やら文字が胴体から

出ている。


『治せ!』


成程ね…治癒魔法も試験の内か…。


俺はサンドバッグの横で地べたに座り、手を

翳して魔素を練る。


(コイツは木製か?ならば治癒に土と風を

 混ぜ入れて、魔素を補給する感じで…。)


魔素はなんとも言えない…マーブル色になり

サンドバッグに注入されていく。


ヒビ割れた全身は次第に戻り、木製ボディに

ツヤが戻ったようだった。


胴体から

『完治!』の文字が出る。


フゥと一息入れると、文字が変化していた。


『合格!部屋に戻れ』


俺はこの半月間、お世話になった

サンドバッグに一礼をして

部屋に戻った。

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