第6話 カラダに入る

「ん…カラダに入れたのか」


手足の感触は悪くない。膝痛もないし口の中も起きたてにしては、爽やかだ。

上半身を起こして周囲を確認する。円形の部屋の真ん中にSF映画のコールドスリープ装置の様なモノに自分が入っている。


正面の簡易的な机の上に、これまた簡易に平板を壁に付けただけの本棚に1冊の本が置いてあった。カラダを起こして本を手に取る。

4号が言っていたマニュアル本だった。全裸のまま机に座り、本を開く。


 ・最初に

 この本を読めていると言う事は、

 無事にカラダに入れた様ですねー。

 机の真後ろのロッカーに服が入ってます。

 まずはそちらをどうぞー。


指示通り、ロッカーに行き服を着る。

長袖の黒のTシャツぽいものに頑丈そうな布でつくられた、これまた黒のズボン。黒のショートブーツ、上着として頭から被るローブを身に付けた。


(…忍者まではいかないがどこかに潜入する

 様な出立ちだな)


机に戻り、マニュアルの次ページを開く。


 ・右には半月程度の食糧。

  左にはあなたが前回使用していた

  感じの、コンバットナイフが

  あります。これらを使用して、

  カラダをゆっくり慣らして自分の

  身体にしていって下さいー。

  外へは机の斜め左からどうぞー。

  半径15メートルは周囲から目に

  入らない様になってますよー。

  では3日程、基礎訓練をどうぞー。


本を開いたままにして、俺は外に出てみる。

…成程。森林の中だ。15メートル先には透明な壁があり、外からこちらには接触できない様だ。

遠目から見て、家は大木だった。


「さて、軽くカラダを動かしてみるか…」


独りごちて軽くストレッチの後に、鞘から

コンバットナイフを抜いてブンッブンッと振る。振る。振る。

…反応は上々だ。流石は10代後半のカラダ。

家を出て、左側には人の形を模したサンドバッグに使えるモノを相手に、俺は3日間カラダを自分の身体になる様に基礎的な体術訓練を行った。


4日目の朝。

コールドスリープ装置から目覚めた俺は机のマニュアル本の次ページを開く。


  ・カラダの慣らし運転は

   如何でしたかー?

   では次は、お待ちかね!

   魔法の訓練ですー。

   この世界には、魔素と呼ばれる

   モノが空気の様に存在しています。

   なので、先ずは外に出て

   魔素を意識してみてくださいー。

   全身に一枚の心地良い布に包まれ

   ている様な感覚になる筈ですー。

   では、体術訓練と合わせて、

   1週間ほどどうぞー。


俺は外に出て早速試してみる事にした。

    

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