『庭師』の称号 サイドストーリー
うつみきいろ
コマドリさんの話
「酷いわ!そうやってまた私を除け者にするのね!」
「違うんだ、俺はコマドリを心配してるだけで・・・」
「それで別の人と任務に行くっていうの!?二人きり、しかも泊まりで!」
東方支部にコマドリの泣き喚く声が響く。
ロムはああまたかと遠い目をする。
「ハーク、もう諦めてコマドリを連れていったら?」
「はぁ!?今回は危険な任務なんだぞ!?そんな真似できるか!」
「うわーん!」
コマドリを自警団東方支部に迎え入れて以来、何度も繰り返されるやり取り。コマドリを危険な任務に連れて行きたくないハークとハークに仲間外れにされたくないコマドリの攻防戦。
ロムとしても関わりたくはないが一応支部長として場をおさめる役目がある。仕方ないと呟いてロムは重い口を開く。
「前は別の人と任務に行ったんだから、今回は譲歩してコマドリを連れて行けば?」
「なっ!こんな細腕の女の子になんてことを!」
「細腕とは何よ!私最近鍛えてるんだから!」
コマドリは外に出られて思い切り身体を動かせるのが嬉しいらしく時折自警団の訓練に飛び入り参加したりしている。
それもまたハークは気に入らないらしい。
「訓練に混じるのやめろよ。あんな男だらけのとこに入ってくるの心配してんだからな」
「あら、何が心配なの?」
「だからそれはお前が女の子だから・・・」
変な虫がつかないか心配だとハークが言い掛けた時である。コマドリはこてんと首を傾げた。
「私って女の子なの?」
一瞬、時が止まる。
「は!?」
ロムとハークの驚きの声が重なる。女の子なの?ってなんだ。
見た目の可憐さと鈴を転がすような声に今までずっと女性だと思い込んでいたが、実は違ったのか?
「コ、コマドリ・・・君、その・・・ついてるのかい?」
「ばか!何聞いてんだよロム!」
「いやだって!」
「ついてるって何が?」
二人はコマドリの純粋すぎる目に震え上がる。
「つまり、下にブツがあるのかってことで・・・」
「ブツ?」
「下世話な話やめろよ!」
ハークは真っ赤になりながら問い詰めようとするロムを止める。そしてガシッとコマドリの両肩を掴むと支部中に響き渡る声で叫んだ。
「俺は!お前が男でも女でも愛してる!」
じゃあ任務行ってくる!と続けてハークは部屋の外へと走り去っていった。後に残されたのはロムとポカンとしたコマドリ。
「はっ!?また置いていかれたわ!」
「・・・今はそっとしてやったら?」
すぐ現実に戻って憤慨するコマドリにロムはぐったりと机にへばりついて答える。
支部長というのはなかなか疲れる職業である。
『庭師』の称号 サイドストーリー うつみきいろ @utumi_kiiro
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