第46話 皇太子視点 肝試しを提案したらキャロラインが乗ってきました
俺はキャロラインを招くに当たって、考えられるだけの手を打った。
今回は出来る限り、キャロラインの意向を尊重したかった。
全てはキャロラインの好意を得るためだ。
だから、キャロラインが好みそうな城にしたし、部屋も最上級の部屋にした。
我が宮殿にあるコッホの絵を持ち出してキャロラインの部屋に飾りもしたのだ。
更に、キャロラインの元師匠を見つけ出して、帝国魔術師団の顧問にして、ここまで連れてきたのだ。
その師匠が、会うなり、キャロラインの攻撃を受けたのだ。
その爆裂魔術の攻撃をジャルカは体をのけ反らせて避けた。
爆裂魔術は開いていた窓から外に飛び出して、
ズカーン!
湖の中央に巨大な爆発が起きた。
「アロイス、ジャルカは師匠として、キャロライン嬢からとても尊敬されているのではなかったのか? どう見てもキャロライン嬢は怒り狂っているように見えるが」
俺がアロイスに聞くと、
「いえ、私も確かにジャルカ本人からそう聞きましたけれど……」
アロイスも寝耳に水だったみたいだ。
「何をするのだ、キャロライン!」
「何をじゃないでしょ! あなた、変態伯爵に魔封じの首輪を渡して、悪事に荷担してたわよね」
キャロラインは怒りの言葉を投げつけた。
「何を言うのじゃ、キャロライン。儂はそのようなことはしとらんぞ!」
「じゃあ、なんで変態伯爵があんたの首輪を持っていたのよ?」
「儂もその方の家を首になった時にだな。少し、懐具合が寂しくなって、やむにやまれず魔封じの首輪を作る内職をしておった時があっての。たまたま伯爵が買ったのじゃろうて」
ジャルカは他人事のように言ってくれた。
「本当なの?」
「くどい!世界最強魔術師の儂が変態伯爵についてどうするのじゃ」
「まあ、確かにそうかもしれないけれど、あんたの首輪のせいで私がどれだけ酷い目にあったと思っているのよ」
「あの首輪は適当な力をかけたら壊れるようになっておったじゃろうが」
「とても苦労したわよ」
キャロラインがまだまだ怒りが収まらない様子で叫んでいるが、
「あれで苦労するとはその方の修行不足ではないか? 傭兵団を作って何やら遊んでいるようじゃが、修行が足りないのではないか」
「そんな訳無いでしょ」
「そうか。何なら今一度訓練をつけてやろうか」
放っておくと二人はまた喧嘩を始めそうだった。
「お二方とも、皇太子殿下の御前です」
アロイスが注意してくれた。
「殿下、そろそろ食事をスタートさせたほうが」
「そうであったな。キャロライン嬢はじめ皆様にはこの城のシェフが腕によりをかけて作った料理を堪能いただきたい」
俺が唖然として今までの様を見ていた給仕たちに合図した。
給仕達が前菜を運んできて、食事がスタートしたのだ。
食事は宮殿から若手のシェフを特別に今日のためにつれてきたのだ。味はとても良かった。
俺が早速キャロラインに話を振ろうとしたら、強引に俺とコリンナの間に席を作らせたジャルカがキャロラインと剣聖と話し出していた。
「セド、彼がジャルカよ」
「あなたがかの有名な大魔道士ジャルカか」
剣聖はジャルカの名前を知っていた。
「ほう、小僧。儂の名前を知っているのか」
「教会に伝わる伝説の大魔道士マッポイの師匠だと伝わっているが」
「マッポイとは懐かしい名前じゃな。その方はマッポイに会ったことがあるのか?」
「まさか、100年も前に伝説の魔道士だぞ」
剣聖がそう答えるが、
「えっ、そうなの? ジャルカは年寄りだと思っていたけれど、何歳なの」
「さあ、儂は自分の年など忘れてしまったわ」
「おじい様。私も出来たら魔術を学びたいのですが」
横からコリンナが口を挟んできた。
「良いぞ」
ジャルカが鼻の下を伸ばして言うが、
「コリンナ、死にたくなければ止めたほうが良いわ」
キャロラインが止めた。
「なんでよ?」
「ジャルカの訓練は命がけよ。私なんて一度崖の上から突き落とされたのよ」
「「まさか」」
俺にしてもコリンナにしても信じられなかった。
「ジャルカ、本当なのか?」
俺が思わず口を出して聞くと、
「殿下。強い魔術師になるには、まず、最初の魔力の発動が肝心なのです。命をかけて発動するほど強力な魔術師になり得ます」
俺はジャルカの言葉に、こいつに訓練させたら帝国の魔術師の大半が訓練中に事故死してしまうのではないかと危惧してしまった。
キャロラインはそこまで大変な訓練を受けたから強力な魔術師になったのか!
俺はまじまじとキャロラインを見てしまったのだ。
「まさか、冗談でしょう」
コリンナはまともに受けていなかったが、キャロラインの口ぶりからはほぼ事実らしいと思えた。
「そもそも、儂は帝国の初代皇帝陛下に魔術をお教えした時からやり方は変えておらん」
「帝国の初代皇帝陛下はどんな方だったの?」
「うむ。奴は性格の良いやつでの。儂にも良くいろんな物を分けてくれたものじゃ……」
このままほおって置くと、ジャルカの作り話が始まってしまう。
そもそも、今日は俺とキャロラインが話すために設けた席なのだ。
ジャルカの独演会のために設けた場ではなかった。
俺はやむを得ず、とっておきの話を披露することにした。
「ところでキャロライン嬢。今日の夜に面白いイベントを企画しているのだが」
「へええええ、何なのですか」
いかにも右から左に流しそうなキャロラインが答えてくれた。
「いや、実はな。このバーミリオン湖には最近幽霊が出るらしいのだ」
「へええええ、幽霊ですか」
つまらなそうにキャロラインが生返事をしてくれた。
これは失敗したかと俺は少し青くなった。
こういう話はキャロラインは好きだと思ったのに!
「それで食後に肝試しに行こうかと思ったのだが」
「肝試しですか。夜にね」
少しキャロラインが考えてくれた。
「ジャルカにくじを作ってもらってペアで回ったら面白いかと思ったのだが」
「判りました。やります」
いきなりキャロラインが興味津々で乗って来たのだ。
俺は思いっきりガッツポーズを取りたい気分だった。
くじで俺とキャロラインが組めるようにジャルカに命じて細工すれば二人きりで1時間位歩けるはずだ。
途中で脅すやつを配置すれば驚いたキャロラインが俺に抱きついてくれるかもしれない。
俺とキャロラインがお近づきになれるまたとない機会だと俺は思ったのだ。
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