第45話 変態伯爵に魔封じの首輪を渡して悪事に加担していたジャルカ目指して爆裂魔術を放ちました

帝国の騎士たちは皇太子がやたら自慢するから、少しくらい強いのかと期待したが、本当にどうしようもなく弱かった。

でも、セドはあまり圧勝したら悪いと思っているのか、本当に手抜きで戦っていて、小指で相手しているのかと文句をいいそうになった。


帝国の近衛騎士は、セドを前にしたら、なんか見ていてこちらがかわいそうになるくらい弱かったのだ。


皇太子はプッツン切れていたが、まあ、私の自慢の白馬の騎士様が相手なのだ。仕方がないだろう。


「で、殿下、どこに強い方がいらっしゃるのですか?」

私が最後に嫌味で聞いてみてやった。


皇太子は歯をぐっと噛み締めていた。そこで怒るか、このきざな皇太子がと私が観察していると


「いやあ、さすが元剣聖だ。凄いな。恐れ入った」

皇太子は表面上は自分の非を認めたのだ。


うーん、こいつは本当に大人だ。

腹の中では無様に負けた近衛騎士達に怒りまくっているだろうに……それを隠して爽やかに笑ってくれたのだ。

私も大人の対応をすることにした。


「良かった。我が『傭兵バスターズ』の剣士が帝国の近衛騎士よりも強くて。私も鼻高々ですわ」

その言葉に近衛騎士達は色めき立ったが、反論するならセドに勝ってから言ってほしい。


「くっそう、殿下。我ら騎士達は調子が悪くて負けましたが、我軍には最強の魔術師様がいらっしゃいます。何でしたら、後で手合わせ願ってはいかがですか」

近衛の騎士隊長が皇太子に言ってくれたが、


「本当に強い方ですの? 騎士の腕は全然でしたけれど」

私はバッサリ切り捨ててあげたのだ。


「お、おのれ」

「隊長、ここは押さえて下さい。いくら調子が悪くても、負けは負けです」

なんか騎士たちが言っているけれど、


「まあまあ、キャロライン。魔術師は後で紹介しよう。君も知っている魔術師だよ」

私はその皇太子の言葉に不吉な予感がしたのだ。



そのまま、部屋に案内されて驚いた。


私の部屋は王侯貴族もかくやという部屋だったのだ。

おそらく最上位の客間だろう。大きな天蓋のあるキングサイズベッドの寝室に、広いリビング、応接、おつきの者の部屋が二部屋もついていた。風呂場も二つある力の入れようだった。


すべての部屋の装飾や飾られている絵も超一流品だった。


「お嬢様。コッホの絵があります。本物ですよ」

エイミーが驚いて言ってきた。

コッホは前世のゴッホのような人で1枚金貨1万枚はくだらないと言われる巨匠だ。


「何言っているのよ、エイミー。コッホの絵なら領地の邸宅にもあったでしょう」

私は平然と構えて言うが、


「しかし、お嬢様、この絵は『ひまわり』ですよ。美術史の教科書にも載っている!」

エイミーは興奮冷めやらぬ声で言うが、

「皇帝陛下の別荘なのよ。そう言う絵の一枚や二枚、なくてどうするのよ」

私が当たり前のように言うと、


「これはこれは手厳しいな。キャロライン嬢は。

この手の絵はここに一枚しかないよ。せっかくだから君の部屋に飾らしてもらったんだが、満足してもらえたかな」

来なくていいのに、部屋を自ら案内してくれた皇太子が言ってきた。


「ああら、じゃあ、皇太子殿下のお部屋を私に譲っていただけたのですか? 近衛騎士が私の騎士に負けたせいで」

「おのれ」

「貴様、言わせておけば」

私の挑発に近衛騎士達がいきり立ったが、


「お前らは黙っていろ!」

皇太子は一言で近衛を黙らせた。


「失礼した。まだまだ礼儀がなっていなくてね」

皇太子は余裕で謝ってきたのだ。

それにはさすがの私も大人げない態度を取ったかと少し考えさせられた。


「キャロライン嬢。君をせっかくこの城に迎えられるのだ。最高級のおもてなしをするのは当然であろう」

そういう皇太子がとても胡散臭く見えたのは事実だ。

こいつは何を企んでいるんだろう?


「では、キャロライン嬢、後ほど食事の場でお会いしよう」

そう言うと皇太子は出て行った。



「ねえ、エイミー。皇太子は何を考えていると思う?」

「さあ、お嬢様。私は必死にお嬢様の機嫌を取っておられるように見えましたが」

「うーん、そうよね。絶対になにか無理難題を押し付けてくるつもりね」

私は頷いた。今回は古代竜の退治だった。次はスタンピード対策だろうか?


「いえ、私は殿下が必死になってお嬢様にアプローチしていらっしゃるように見えましたが」

必死に考えていた私はエイミーの言葉を聞いていなかったのだ。



食事はこじんまりした湖畔のよく見える部屋に用意されていた。


私は女の戦闘服の真っ赤なドレスを纏っていた。何を考えているかわからない皇太子とやり合うにはこの服しかないだろう。悪役令嬢にピッタリの1着だ。セドを釣るときもこの服だった。


私の騎士のセドには白い礼服を着させた。

それを着ていると本当に昔私を助けてくれた聖騎士のように見えた。

私の白い騎士様だ。


そのセドにエスコートしてもらって、私はご満悦だった。

絶対にセドに走られたくないけれど……

絶対にそんな堅苦しい所に行きたくない、と叫ぶエイブを無理やり参加させたのだ。


対する皇太子は白い皇太子の正装をしていた。これは女どもがキャーキャー言い出しそうな出で立ちだ。私しかいないのに、そんな服着る必要はないのにと思わないでもなかったが……いや隣にコリンナ・バーミリオン伯爵令嬢がいた。

彼女はピンクの可愛い衣装に身を包んでいた。そして、皇太子の反対側には皇太子の側近で宰相の息子のアロイスが座っていたのだ。こいつは腹黒皇太子の懐刀だろう。何を考えているんだろう?

父親の宰相と並んで食えないやつだと思う。


「キャロライン嬢はクラスメートだったコリンナ嬢を知っているだろう」

皇太子が紹介してくれた。

「ええ、お久しぶりです」

そう私は頷きつつ、そんな記憶はまったくなかった。でも、ここは皇太子に合わせておいた。


「キャロライン様は学期の最初でジークフリート様とひと悶着されて、すぐに学園を退学させられたと聞いておりました。今は山賊の親分をしていらっしゃるとお伺いしましたけれど」

「はい?」

いきなり喧嘩を売られて私は驚いた。

こいつこんなキャラだったのか?


「コリンナ嬢。キャロライン嬢はこの世界最強の傭兵団の長だよ。山賊団ではない」

皇太子が訂正してくれた。

「そうなのですか? 私は大魔術師のジャルカ様からその様にお伺いしていたものですから」

「えっ、ジャルカがいるの」

私はきっとして周りを見渡した。アイツのせいで、もう少しで変態伯爵に慰み者にされるところだったのだ。


「ほっほっほっほ。久しぶりじゃのキャロライン」

後ろから現れたジャルカ目掛けて、私は問答無用で爆裂魔術を放っていたのだ。

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