第10話 公国の大聖堂攻撃作戦 準備開始

トムからの報告を受けて俺達は直ちに艦橋に集まった。


「トム、判っている事を報告して」

厄災女がトムに指示した。


「了解、お嬢。

現在ボンズから仕入れた情報では、聖教会はフィンズベリーの遺族を悪魔崇拝の背教罪で拘束。魔女裁判を5日後に開き、即日刑を執行する予定だそうだ」

「あやつら、何ふり構わないことを始めてくれましたな」

「無実の罪でフインズベリーを殺しやがったくせに、更に残された家族まで魔女裁判にかけて処刑するなんて、彼奴等は悪魔なのか?」

トムの言葉にダニーとリックが憤慨した。

元々、俺があの大司教に報告したのがいけなかったのだ。そのせいで、フィンズベリー司祭が殺されて、今また家族が殺されようとしているなんて、俺のせいでこれ以上の犠牲を出させるわけにはいかない。


「俺は今すぐにフィンズベリーの家族を救いに突入したい」

俺はたち上がって希望した。

「待ちなさい。セド! やる限り確実にエインズワースに鉄槌を下さいなと司祭の魂も浮かばれないわよ」

厄災女が邪魔してきた。

「俺一人でもやれる」

そう言うと俺は駈け出そうとした。

「家族を助けるのが先でしょ。家族を守りながら、大司教と戦うのは一人では難しいわ」

厄災女に言われて俺は立ち止まった。


「じゃあ、いつ行くんだ?」

俺は厄災女を睨みつけた。

「そんなの魔女裁判の日に決まっているでしょ」

厄災女は悪い笑みを浮かべてくれた。

「しかし、それまで家族を放っておくのか? あいつなら何をするかわからないぞ」

「魔女裁判をするなら、それまでは手を出さないはずよ。そうでしょ」

「それはたしかにそうだが、それまで家族を不安な目に遭わせるのか?」

「大事の前の小事よ。殺されたフィンズベリーの無念を晴らしてあげるのよ。やる限りは、あの変態大司教の悪行を全世界に知らしめて、天誅を下してやるわ!」

厄災女が机をたたいてくれた。


「しかし、魔女裁判の日は警備も厳重だろう。やれるのか?」

「あなた何言っているのよ。私達は世界最強の『傭兵バスターズ』なのよ。聖騎士の2個騎士団や3個騎士団なんてなんてことはないわ。いざとなれば公国ごと、私が燃やしてあげる」

不敵な笑みを浮かべて厄災女が宣言してくれたんだけど。そんな事が出来るのか?

まあこの厄災女の噂で聞く限りやれそうだが、噂は往々にして大げさだ。

まあ、しかし、この前は聖教会の兵士たちを前にして、火炎魔術で燃やしてくれたが……


「判った。お前にかけてみる」

俺は決断した。元々手伝ってくれと頼んだのは俺だ。厄災女の自信満々の姿に任せてみようと思ったのだ。


「トム、今わかっていることをまとめて話して」

「大司教を名乗る殺人犯エインズワースは教会の秘密組織を使って、フィンズベリー司祭を殺害。それを当時剣聖だったセドが殺した事にして指名手配してくれた。」

「そこの馬鹿が嵌められた件ね」

頷かなくてよいのに厄災女が頷いてくれた。こういう所は嫌いだ。


「そこから我々がセドを救出して離脱、聖教会は我々全員を殺人鬼セドの仲間だとして破門。全教会に指名手配。

我々が泣き込んでくると思っていたふしがあるが、我々が無視したから、次の手としてフィンズベリーの遺族を連行したと思われる。

奴は遺族が悪魔崇拝をしていたと5日後に魔女裁判にかけると大々的に宣言した。

目的は我々をおびき寄せることにあると思う」

トムはこれまでのことをまとめてくれた。


「戦力を揃えて待ち構えているところに乗り込むのか」

俺が聞くと

「まあ、いつものことだ」

肩をすくめてトムが言ってくれた。


「敵の戦力は?」

「攻撃用の飛行船を4隻集めている。通常は聖騎士団は1個騎士団しかないが、今回は周りの騎士団も併合、2個騎士団の要員がいる。魔術師も傭兵ギルドからも魔術師を数名借りているようだ」

「それだけしか集めていないなんて私達も舐められたものね」

厄災女が笑って言ってくれるが、俺としては十二分な戦力だと思う。


「大司教はセド、あなたに任すわ。存分にやってくれて良いわ」

「判った」

俺は元剣聖だ。悪徳司教は女神様に成り代わって天誅を加える必要がある。それを聖騎士が邪魔するなら奴らも含めてやる。元仲間だった奴らだが、悪者に加担するなら手加減は不要だ。


「遺族を救うのはトムとダニーに頼むわ。飛行船4隻はリック、頼むわよ」

3人は頷いた。


「リック以外の全員が、変装して、まず潜入する。次に私がタイミングを見て騒ぎを起こすわ。それが攻撃開始の合図よ。同時に各自行動開始。リックは付近に潜ませていた飛行船を近づけて4隻とも沈めて」

全員がそれぞれ頷いた。


そして、それから各々の細かい打ち合わせをする。


「皆それでいい?」

最後に厄災女が確認した。

「「「ああ」」」

それに全員頷いた。


俺は果たしてそんなにうまくいくのかと一抹の不安があったが、ここは任せた限りやるしかないだろう。俺は少なくとも大司教だけはやっつけると決めたのだ。


「じゃあ直ちに準備に取り掛かって」

「「「了解」」」

俺達は一斉に動き出したのだ。

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