第19話 仲間
「なるほど?俺に攻撃されて死の恐怖を味わうのが怖かったと。ほんと?」
俺は黙って聞くよりも質問を投げかけるタイプだ。
でなんですか?この女、自分の事をあの竜だとかぬかしてるし...何よりフールにめちゃくちゃウィンクしてくるんだが?
「なぁ、フール?コイツって本当に」
「本物さ。間違いない、こいつはあの竜そのものだよ」
「──そっかぁー。じゃあ普通に倒して構わないよな?」
「何でそうなるのかな?」
俺は別に竜の仲間が欲しいとか、そういう話ではない。そもそも仲間は別に要らない。
俺は自分の戦い方を貫いて、その上で最後に勝つこと。その際のなんともいえぬ快感を楽しみにやって来ていたのだ。
それが失われかけている事に普通に嫌だなぁ。と思っているのだ。
そもそもこいつはどちらにせよ一度倒したい。
「...フール、君の眷属かなり怖いんだね。と言うか話を聞かないんだね」
「ははは...まあかなぁり頭は硬いよ」
「───なら仕方ないなぁ。えっと確かアレク、だったかな?君の名前は」
「そうだな。所でなぜ俺の名を?」
「?この女フールが楽しそうにこの前教えてくれたぞ?」
なんという事だ。普通に身内からネタバレされていたとは。
静かに俺はフールを睨みつける。だが良いじゃないか?とはぐらかされたので俺は諦めながら目を閉じる。
「...それで、俺の仲間になりたい。と君は言っていたな?」
「ああ」
「それは俺になんのメリットがある?」
尋ねるべきは、俺にメリットがあるのか否か。
すると驚くことにすぐに答えが返ってきた。
「あるさ。...君が片付けにくいザコ敵の処理を私ならしてやれる。何より、武術を君に教えてあげれる。どうかな?──後、私の力嵐の力を君にさずけることも出来るけどね?」
「……なるほど、かなりしっかりとしたメリットだ。悪くない」
ザコ敵の処理は今の俺にとって死ぬほど苦手な物だ。ソレを誰かに押し付けれるのはシンプルなメリットとなるだろう。
「...わかった。それじゃあよろしく頼む。ちなみに最終的にお前を俺は倒す。それで良ければな」
一応こいつも倒すべき敵である事を伝えつつ、俺は手を差し伸べる。
「つれないと言うか、抜け目がないというか、まあ面倒臭い男だね君は。──まぁいいか、よろしく頼むよ?」
こうして新たな仲間を手に入れたアレク。
進む先は最初のアルカナ、即ち魔術師。
◇◇◇◇
「なんか急に早く物語が進んだ気がするんだが、フール何かしたのか?」
「はははなにかしたよ勿論」
◇◇◇◇◇
フールはとあるスキルを使用した。
それは愚者の行進と言うスキルだ。
ソレを使用することで物語を強制的に望んだとおりに進行させるというものだ。
...これを使う気は無かったんだけどさ?さすがに君が強情で...きっと多分ずっとここで足踏みする羽目になるだろう?
正直すぐに仲良くなれるはずの相手に勝負を挑み、勝てるまで何日もかけられてはこっちとしてもたまったものでは無いからさ?
悪く思わないでくれよ?アレク。君は少し頭が硬すぎる。
愚者は賢くあらねばならないのだから、今時間をかけるべき場所では無い。そういうことなのさ
【フールの日誌】
◇◇◇◇
...まあきっと時間をかけるな。そういう事なのだろう。
そこを上手く隠されたような気もしなくもないが、まあいいか。今回はそちらに乗ってやる。
だがな?次はそうはいかないよ。
最終的に世界を倒せれば良いのだろう?
アレクは静かに笑う。
アレクの中では既に世界を倒す方法を決めていた。
このスキルのレベルを100にすること。
割合化のダメージを100%にすれば、相手を確実に倒せる。
そしてそれを持って世界を殴る。
もしカウンターを受けて自分が死んだとしても自分は構わない。
あいつに、死をプレゼントする。それだけが俺の目標だから。
世界を滅ぼす事、そしてそこに至るまでの戦いを人生最後の戦いとして楽しむこと。
──そこに至るまでの道中の全て、それは全てが全て敵であり倒すべき物だ。
故に俺は世界だけを殺す。それ以外は殺すのではなく、そもそも勘定に入れていないだけなのだ。
アレクは愚者である。
愚者の中でも、特に───変わった愚者だ。
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