第18話 古龍は姿を変える
ブスリ。とアレクは槍を元の場所に配置し直す。
「まさか抜けるとは」
そう言いつつも、既にこの武器で何が出来るのかを考え始めたアレクなのであった。
「まあ考えうる使い道は、大弓の弾として撃ち出す感じか?」
試しにその考えを実行してみようかと思ったのだが、それをするとセーフティゾーンが失われる事を加味してぎりぎりで止めたアレクなのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何なのだアイツは?
嵐の古龍オールティヌスの心中は穏やかではなかった。
ここ数日あの男は毎日のように奇想天外な攻撃を繰り出し、自分のHPを削っていく。
だが倒す程に命をかけてくる訳ではなく、ある程度まで削ったら撤退していく。
……だが自分は山ほどあったはずのHPがごりごりと削られていく様を何度も味わい続ける羽目になっている。
やつはどんな技術だが分からないがこちらの攻撃を受けてもビクともしないのだ。
最初の内はそれこそ、まあすぐに諦めてくれるだろうとか、力の差を理解して折れてくれるだろうとか呑気に考えていたオールティヌスだったのだが、日に日に自分の体力を削られていくことがシンプルなストレスとなり得ていた。
絶対だからこそ、今まで呑気に、他人を上から見下していられた竜は。然してその体力を何故か削ってくる化け物を恐れたのだ。
気がつくと久しぶりに槍を取り出してしまっていた。だが槍すら意味をなさなかった。
……かつて万物を刺し貫くとされた神の槍を、そのみに受けてもなお倒れない化け物。
風域は基本人間など秒で木っ端微塵に出来るはずの出力まであげていたのに、それをまるで意に返さない相手を、唯ひたすらに怖いと思ったのだ。
そしてそれと同時に、こうも思った。
『 ……確かにフールが推しているだけはあるな』
あの女、フールという名の邪神が連れてきた奴だ。それはもう破滅級に捻じ曲がってい無い方が間違いだ。
そこを読み取れなかった自分の方にこそ本当の落ち度はあるのでは無いのか?
……ならば全力で殴り合うべきか。
ははは……まさかこの竜の肉体を捨てて、本来の姿に戻る事になろうとはね。
嵐の古龍は一つ決断を下した。
それは自分のアルカナ【
そしてそれ即ち、世界に叛逆する狼煙のひとつとなる事。
ばじじじじ!!
火花がちって身体を包んでいた鎧が剥がれ落ちる。
古龍というテクスチャが分解されてそこら辺に蝋のようにべっとりこべりついた。
「……ふう、久しぶりの人間体だ。うーん、どうにもふわふわしてやりにくさは残っているなぁ。……まあいいか」
自分の抜け殻から槍を引き抜き、口の中から帽子と服を抜き取る。
……さぁて、こんなものかな?
深い茶緑のとんがり帽子と、眼帯をつけた一人の女は。
そう言ってにやりと笑みを零した。
彼女の名はオールティヌス。別名、オーディン。
風の神にして、ハングドマンの原型。
戦と魔術の神にして、北欧の絶対神。
戦いは静かに、新たな領域へと突入していくのであった。
◇◇◇◇
「……誰あの人」
人が居た。嵐の古龍に挑みに言ったら、人がいた。
しかもなんかめっちゃ笑顔だし、色々と怖いんだが?
「誰?とは失礼だな君は。私の名前はオールティヌス、まあオルとでも呼んでくれ」
「なるほど、オル。君は昨日までは古龍だったあれで間違いは無いのだな?」
確かオールティヌスという名前はあの竜に着いていたはず。
「そのとおりさ!」
にっこりと笑うオールティヌスもといオル。
だがその表情からは想像もつかないほどの殺気とプレッシャーを放っている。
「……つまりこれまでの作戦が全てパーと。チッ、面倒臭いことになった」
即座にアレクは臨戦態勢を取る。
しかしオルは。
「待った。君に私は一つ提案したいんだ。……君たちの冒険に私を混ぜてくれないか?というね」
そう言って笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます