第10話 新たなギフト

「──待った、結局俺のギフトは〈割合化〉のままなのか?」


 門出の直前に俺はそうフールに尋ねる。


「ん?君のそれは最早アイデンティティだろうに、まさかいらないとでも言うのかい?!」


 俺は「いや別にいらないって訳じゃなくて……もっとかっこいいギフトとか強いギフトとか欲しかったり……」とごにょごにょ呟いた。

 ──だって仕方ないじゃん?言っとくけど絵面が死ぬほど地味なの分かってるからね?ウェアウルフやスライムとの戦いでも地味すぎて途中から自分の戦い方に地味すぎて嫌気がさす程でしたよ?


「ふぅん?そもそも論なのだがねアレク──君がそのギフトを持っているから私は世界に勝てると踏んだんだよ。言っておくけど、世界に仮にHPを付与して、見たところでHPなんてぐらいあるからね?普通に削るって無理だよ?」


 な、なるほど……いや確かに俺がこのギフトを使わないと計画が破綻するのか──。


「でも地味なんよ。死ぬほど絵面が地味なのだけは、どうにかして欲しいんですが……」


「君ぃ、案外文句多いじゃないか?んふふまあまぁ……落ち着きたまえ。この私がいる限りそんな地味な絵面にさせるとでも思ったのかな?

 ──まぁ私が君に付与した新たなギフト〈愚者〉の効果を君にはまだ見せていなかったからね。そう思うのも頷けるかな」


 そういえば俺のステータスに何か追加されてたな。愚者……愚か者?

 どういうギフトなんだ?


「ステータスオープン」

「──ぶふっ!……」

「何だよ?なにか面白かったか?」


 突然吹き出された。俺は何となくバカにされてる気がしたので不満げにフールに尋ねる。


「いや失敬失敬、話には聞いていたんだが、改めて自分のステータスを開く時に異世界人は本当になどと言うのだなぁと……くふふふ……何ともシュール過ぎてね……はは……」


「……言われてみれば、確かにな。──じゃあステータスを開く時はなんて言うべきだ?」


「んーそうだなぁ、なんてのどうかな?」

「却下する」

「なら──【王の財宝ゲー〇オブバビロン】とかはどうかな?」

「なぜだか分からないが、金ピカの鎧を着た英雄王が頭に浮かんだよ──じゃなくて!」


 何故だかこいつは妙にぼけてくるんだ。なぜボケるのかと尋ねたところ──、


「愚者にそれ聞く?」


 との事。曰く「トリックスターたる私は全てに縛られない自由な生き方を司るんだよ」だそうだ。

 ……ん、めんどくせぇ!


「まぁ落ち着きたまえよ。愚者のアルカナ知ってるだろう?の象徴たる旅人が、どこに行くかを決めずにぶらぶらしてる様子な訳だ。……つまり私は自由の女神!」


 何でそうなる。少なくともアンタは邪神だと自分で名乗ってたろうが。


「そしてその私のギフト〈愚者〉は至って単純!……という力さ!……ちなみに今君が使えるギフト付属のスキルは──」


「スキルは?」


 にやりと、笑顔を崩して無邪気な子供のように笑いながらフールは答える。


「──〈仕切り直し〉と〈愚者の数合わせ〉だよ!」


 ◇◇

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【ギフトスキル】〈仕切り直し〉EX


 ……このスキルは、いかなる戦闘からも離脱できる究極の逃げスキルである。このスキルは絶対なる権能であり、使えなくなることはない。


 予め決めておいた離脱位置までスキルを発動すると離脱できる。その際、戦闘時に受けていた状態異常やデバフなどは自動的に解除される。


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【ギフトスキル】〈愚者の数合わせ〉EX


 ……このスキルを使用すると、最初に自分のHPを割合で削る。その後アイテムポーチ内のアイテムの数をそこで削った数と同じだけ増やす。

 いかなるアイテムであっても複製が可能であり、その性能はコピー元と同じ性能である。


 ただしこのスキルで複製したアイテムは次の日になると消費期限を過ぎて、消滅してしまう点は注意が必要。


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 なるほど。どっちもチートスキルやないかい!!


 そもそも戦闘時に逃げの選択肢を取れるだけで既にヤバいってのに、アイテムすら増やせる?

 ──なんだろう、とたんにかな?


 んだが?


「それが愚者の権能だよ。無数の自由な型にとらわれない無法的な戦い方の編み出し。其れこそが愚者の戦い方さ──」


 そう言うと俺の肩をぽこぽこと叩いてから、じゃあ行こうか!とフールは囁いた。


「分かった。色んな戦い方を編み出せる、そんな予感がしている……ふふふわくわくが止まらないぜ!」


 少しとち狂ったバーサーカーみたいなことを気がついたら口走っていた。


「楽しみにしているよ。じゃあ行こうか」


 ◇◇◇◇◇





 ふと懐かしい匂いがした。

 何だったかな、この匂い。


 分からないし、興味もないけれど──

 何故だか恋しく思えてしまう。


「───ん……、」


 俺は思わず目を開ける。


 そして視界いっぱいに広がる壮大な胸を見た。


「おや、やっぱり君は寝坊助さんだね。……どうしたのかな?私の膝枕は気に入ってくれたかな?」


 俺は自然と胸に引き寄せられる。というか触ろうと腕を伸ばしかけたところで、自分が何をやっているのかに気が付き、慌てて起き上がる。


「おやぁ、なんだいつまらないなぁ。──せっかく私の太腿の感触を楽しませてあげていたのに」


 フールがそう言うと、俺は少し恥ずかしくなったので慌てて目を逸らす。

 ──こいつ見た目に似合わず結構あるんだよな。上も下も。


「あ、あ……すまない。ちょつと俺の理性が死にかけるとこだった。それでここは何処だ?」


 俺はなるべく胸を見ていたことを誤魔化せるように別の話題を投げかけるのであった。


 じと〜っとした目で俺をフールは見ていた。

 不意にフールは俺の顔に手を当てる。


「な、何ですか?お、俺は別に何も見て──」


「ふふふ。君のその優しい顔、やっぱり私にそっくりだ。

 ──まぁ当然だがね、私がクリエイトしたんだから!

 ──流石は私っ!天才的なキャラデザ力!」


 俺はそうだね、と言って目を逸らす。

 少なくともこの顔になるまで150以上のキャラクターを没にした事は、言わない方がいいことなのだろうな、うん。


「それで?ここは──山だよ……な?」


「ああ、山だ。そして今回の目的地はあそこの山になるんだ!!さぁ行こうじゃないか!」


 そう言ってアレクの手を取って指さすフール。

 その指さす方角には、があった。


「──あ、あのー?フールさん……まさかとは思いますが、あの見るからにやばそうな山に登るんですか?──」

「無論だとも!あそこには私の知り合いが居るんだよ、まぁそいつをまずは味方に引き入れる所から話は始めないとね!」


 そっか。いや無理やろあの山……どう考えても人が登っていい山じゃねぇよ?!


 アレクは必死に考え直そうぜ?と言うがフールは既に意志を決めてしまったみたいであり、まるで聞こうとしない。

 最終的にアレクは諦めてあの山に登ることになったのである。


 ◇◇◇


「とりあえず麓にあるあそこの冒険者ギルドでアイテムを買ってからだな──」


「それがいいさ。ギフトスキルの効果も試しておきたいだろうからね!!」


「だな。──所で、フール。……お金は持ってるか?」


「ふふふ何を今更。持っているわけないだろう?」


「知ってた。しかも俺って多分冒険者ギルドに登録し直さなきゃ行けないだろ?面倒臭いこと山積みじゃねぇか」


「ああ、そこは心配いらない。君の記録はギルドに自動的に登録されているよ──白銀級シルバー冒険者アレクとしてね」


























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