第6話 システムメッセージ

「にしても貴方、凄かったわねぇ……」

「だな。……あの青年の行く末が気になる所だな」


 シスターと禿げたおっさんの夫婦はそういうと、先程の出来事を振り返っていた。


 アレクと言う青年は、あの私の魔法を食らってもぴんぴんしていた。

 ───一線を退いたとはいえ、私のジャッジメントを受けて無事なだけでもかなり凄いのだけれど。


 その後倒したギガマンティスが槍をドロップしたので、それを彼に差し上げて街で別れたのだったが。


 彼から分かった情報はほとんど無かった。驚くことに彼は魔物に対する知識も、街の仕組みも……言葉の仕組みも何もかも分からないと言う感じで……私はあまりにも心配だったもので色々と知識をあげたのだった。


「───なぁ、ルーサ」

「何?貴方」


 私は今なお不思議そうな顔で首を傾げる私の旦那、オレグを見て尋ねる。


「いや、あの青年の事だが……あれは?」


 旦那が何を言おうとしているかは、長年の経験からすぐに分かった。


「えぇ。たしかにあの子の耐久力は凄まじかったわ……でも」


 そう、彼の耐久力は桁外れていた。ギガマンティスの攻撃を何度もくらい続けて、挙句私達二人のコンビネーション技の巻き添えを食らって……それでも全くHPは減っていなかった。


 ヒールをかけた時、あの子のHPの減りが少なすぎてどうなっているのか分からなかったもの。


 そしてオレグの言いたいことは……おそらく。


「……の事よね?」

「ああ。あれは


 そう、理屈がおかしいのだ。


 魔物や人間には弱点となる部位が存在している。それは必ずであり、たとえ御伽噺の魔王と呼ばれる強力な魔物であっても必ず存在する位に重要なものだ。

 そして人間族には弱点が四つある。


 である。


 その一つである首を、あのアレクと言う青年は跳ねられかけたはずなのだ。

 しかし彼は無事だった。それどころか、二度ほど食らっていた気がするのに傷一つ存在し得なかった。


 ……それも、の首を狙った攻撃を……だと言うのに。

 ギガマンティスの鎌には、効果が備わっている。

 それ故にたとえどれだけ頑丈な装備や魔法をかけた存在であったとしても、ダメージをかなり食らってしまうはずなのだ。


 何より弱点を狙ったダメージは本来の二倍から六倍近いダメージをたたき出すものになっている。


 けれど驚くことにアレクは無事だった。


「───謎ね」

「だな」


 私たちは静かに宿の酒場の席に腰掛けながら会話をする。

 おそらくアレク君には何か。実際何回か尋ねてみたがぼんやりと質問をそらされてばかりだったし。


「……はーもう、これ以上考えるとバカになっちゃう!!……マスターこのスコッチエール追加で三本ちょうだい!!せっかく休暇をとったんだから、こんな時ぐらい頭使わないようにしようと思ったのに!!!」


 私はそういうと、持って来られたスコッチエールをグビッと口に流し込む。

 しゅわっとした炭酸が口の中に広がり、苦さとそれを押し込むほどの快楽で満たす。


「くぅぅぅ!!!これよ、コレっ!……焼き鳥もいただきますわ!……んん、美味いっ!」


「───ここではシスターじゃないからな、好きに食べろ。全く普段の姿を知ってるやつに見られたらどうするつもりだ」


「知らないわよ!……そん時はそん時!!今はシスターじゃなくてただの冒険者ルーサなんだからぁ!!」


「はぁ、やれやれ。まあ好きに飲んで暴れろ。………教会の仕事がどれだけストレスを溜め込むのか知らないが、溜め込みすぎは毒だからな」


「あんたもこんな時ぐらいバカになっちゃいなよ!……ずっとお堅いんだから!ほれほれ〜あんたの頭みたいな卵もあるのよぉ?」


「──はぁ、まあいいか。……マスター、俺に良さそうなカクテルとか見繕ってくれ」


「かしこまりました」


 二人の冒険者はそうやってストレスを忘れるようにしながら、ついでにさっき拾ってしまった謎だらけのよく分からないアレクと言う青年のことも頑張って忘れようとしたのであった。

 ──人は厄介ネタを拾った時は、だいたいこんな感じと言う事である。


 ◇◇◇◇


 俺が辿り着いた街の名前は【ウィンド・カース】というらしい。

 王都からかなり離れた場所にある辺境の街ではあるものの、かなり人通りも多く、辺境とはこれ如何に?といった感じだった。


 俺は街をぶらぶらと散歩しながら、を買っていた。


 あの後ギガマンティスからドロップした素材を街で換金したのだ。

 ギガマンティスからドロップした武器である【マンティススピア】と言う武器は、割かし俺の手に馴染んでいた。


「まあとりあえず、次は何を狩ろうかな?」


 俺がそう言って武具を探していたその時である。


『 システムメッセージが届きました。確認をお願いします』


 そんな無機質な声が俺の耳の中に響いたのだ。


 ◇


 俺は慌てて店の外にでて、人気の少なさそうな場所に走っていくとそこでそのメッセージを確認した。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

『 システムメッセージNo.END』※

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 そう書かれていた。No.END?どういう事だろうか。

 俺はそう思いながらそれをクリックしてみる。


 ……あれ?クリックしてみてるんだけど、なんか反応しな───


『 神様印の紋所!お知らせするならゴッドマーケット!!今なら年会費無料、神様の力を借りれる最高峰のアーティファクトが……なんと今なら……無料!とまではいきませんが、代わりに人生の20%と引替えに手に入ります!……こちらの広告を見たソコのあなた!貴方は特別な存在です!ぜひこの神様印の紋所を携えて、異世界生活をよりハッピーにゴージャスにしちゃいましょう!! 』


 ───広告が流れた。しかも飛ばせないやつ。


 実に1分ほど俺はそれを見せられた。──異世界の神様からのシステムメッセージに広告をつけるんじゃ無いよほんとに。と言うか俗っぽすぎる気がするが?


 ……俺は改めてそのメッセージの内容を確認するのであった。


 ◇


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


『 システムメッセージNo.END』


【アレク・ロード様、あなたに付与した転生者特典ボーナスの期間が終了いたします。

 これよりチュートリアルモードを終了し、それと同時に以下の加護を喪失致します。もし加護が必要であれば以下のサイトより登録してくださいませ】


 https://wwwgod.com/※※※god is ※※※god=god


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 ……は?転生者特典ボーナス……期間の終了?


 え、いや俺別に何も貰ってないんですけど?あの?ちょっと?!


 俺は困惑しながらぶつぶつとつぶやく。すると──、


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

『 以下の加護が喪失します』


【自動戦闘補助技術】

【異世界言語の翻訳機能】

【システム理解の為の知識ボーナス】

【会話の際の自動翻訳】


 なお、こちらはあと……21秒で失効します。ご利用ありがとうございました。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 …………「─────はぁ???」








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