第3話 微妙なスキル強化
「……なるほどな?コレはつまり……」
アレクは静かに木の上で唸っていた。理由は勿論先程レベルが上がった際に追加された機能の事でである。
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〈割合化+〉……〈割合化〉と同じ効果に加え、新たに数値の調整が可能になったもの。
数値は自分のレベルと同数〈1〜100%〉まで可能。
なお、この数値は自分にも適応される。
数値の変更は一日に一度である。
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ギフトが強化されたという事なのだろうか?俺はふうむ、と頭をひねる。
どうやら俺の割合ダメージが1%から2%に増加させれると言う事らしいのだ。
──確かに殴る回数は減るし、100回から50回で良くなるのは割とでかい……しかしなぁ。
そう、アレクは気がついていた。この数値は自分にも適応されるという事、その面倒くささを。
要するところ、100回→50回と言うのは強化のように見えるかもしれない。しかし言い換えれば、俺が攻撃を受けても問題ない数が減少するということでもある。
それこそ、連続攻撃をくらってしまった時に……100なら耐えれたけど50だから死んでしまった。なんてことになったら本当に本末転倒だ。
それこそ相手の動きや生態、弱点などを完全に把握するまではこの数値の変更はするべきでは無いな。
最終的に俺はそう判断した。何より一日に一度だけと言うのはリスクがデカすぎるからな。
◇◇◇◇
その後アレクは、しばらく周囲を索敵していたのだがウェアウルフは群れしか見当たらなかったので、仕方なく街に向かうことにしたのであった。
「早めに街につかないとね。クラスメイトと鉢合わせたら嫌だし」
アレクが想定していたのはクラスメイトとのばったり鉢合わせからの揉め事である。
王城の近くの街だし、街の近くには初心者用の平原も有るしで何となく鉢合わせそうな予感がしたのだ。
「クラスメイトからなるべく離れるためにも、馬車を使うしか無いよな」
そしてアレクはギルドに着くと、すぐに馬車を探した。行き先はなるべく遠くがいい、そうアレクはギルド職員に伝えたのだ。
◇◇◇◇
俺は今馬車に乗せられて遠方の街まで進んで行っている。
「……ギルド職員さんが言うには、50キロ程離れた街って言ってたけど……」
アレクはそう言いながら馬車の中を見る。
馬車の中には人が二人。俺と合わせて三人しか居なかった。
ゴリッゴリのスキンヘッドなおっさんと、シスター風の見た目の女性。どちらも無口で黙ったままであった。
まあ俺も別に何かする訳では無いし、それよりさっきギルド職員から言われた事……あと冒険者の方から言われたことの方が気がかりだしな。
アレクが冒険者ギルドに行ったのはいくつかの事を聞いてみるためだった。
一つがスキルについて。
もう一つが、武器についてだった。
◇◇◇
「お前にあった武器?……まあいいぜ?見てやるよ。ただ金は払えよ?」
冒険者ギルドに着いたアレクはまずギルドカウンターという場所で馬車の予約をした。
その後それが出発するまでの時間をほかの冒険者や街の人等に色々な情報を聞いてまわる事にしたのだ。
まずアレクが気になったのは、自分に弓が使えるかということであった。
なければ投擲武器でも構わないと伝えたのだが。
武器屋さんのおっさん(頑固そうな爺さん)は……。
「……あんたにゃ多分だがその才能はねぇよ。人ってのはな?生まれた瞬間にもらうギフト以外に、スキルっつーもんを貰うんだわ。……だがなあんちゃん、おめぇさんにはスキルスロットがひとつしかねぇ。……しかもそのスキルスロットですら何故か埋まってやがる。悪いがここまで才能のない奴は見たことねぇよ。と言うかそんなことも知らねぇたあ余っ程おめぇさんには学がねぇんだな」
「れ、例外とかは無いのですか?それこそスキルスロットが増えるとかってのは……」
「ある訳ねぇだろ。少なくともそんな奴ワシが生きてる72年間で一人も見た事ねぇぞ」
◇
アレクは武器屋さんにお金を払ったあと、今度は近くにいた冒険者に話しかけた。
「おや、何か用かな?僕は〈狩人〉のロッチだよ?君は?」
「アレクと言います。すみません、ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか?」
ロッチというエルフの美形の青年は、構わないよ。と言ってアレクの話を聴き始めた。
「……なるほど、投擲武器もしくは弓のスキルに関して……か。……んー知らないかもしれないんだけど、物を投げてダメージを与えるのにはスキルが必要なんだよね」
「……でも自分がやった時はダメージが入ったんですが……」
「あ〜それね、多分弱点に当たったんじゃないかな?あるんだよね、弱点。……そこに当てると防御を無視したいいダメージが入るんだよね〜多分それじゃないかな?ちなみにちゃんとダメージを与えたければ〈投擲〉のスキルを手に入れるべきかもね」
「じゃあそのスキルを手に入れる方法ってありますか?」
少し前のめりに尋ねるアレク。しかしロッチは少し苦い顔をして。
「んー、あるには有るんだけど……でもね、ギフトが〈狩人〉か〈暗殺者〉じゃないと手に入れるのは難しいと思うよ?……スキルってのはダンジョンの中の宝箱から出るけど基本的にゴミみたいなのしか出ないからね」
……ダンジョン、宝箱……。
「わかりましたありがとうございます!!」
そう言ってアレクは時間が来そうだったので慌てて立ち去っていく。
去り際にロッチは「……そもそもスキルスロットが空いて無いと話にならないんだけど彼大丈夫かな?」
そうぼそっと囁いた。
◇◇◇
アレクを乗せた馬車は田園風景をごろごろと進む。時折石につまずいて馬車がガクンと跳ねることもあったが、なんとも平和なまま進んで行った。
しかし暫くすると馬車が急に止まった。
「お客さん達すまんね、魔物が前方に居るんだけど仕留めちゃってくれんか!?」
御者のお爺さんがそういうと、目の前の二人が無言で立ち上がり武器を構えて外に飛び出していく。
なるほど用心棒代わりに冒険者を載せてるのか。
俺も二人のあとを追って慌てて外に出る。
正直自分が役に立つのかはよく分からないが、まあ格好だけである。
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