サキュバスちゃんは尻尾を掴まれる

「そんなっ、おかしいって、なんでそんなこと言うんですっ? なにがおかしいんですかっ? そんな……全部を否定するのやめてくださいっ。私がサキュバスなことも、あなたのこと好きって思ってることも、全部本当なんですよっ!」


「え? 証拠? ……ですよね。いくら口で説明したってそんなの嘘かもしれないですもんねっ。わかりました! ではっ」


服を脱ぎ始める、が、止められる


「ちょ、なんで邪魔するんですかぁ! まずは私がサキュバスである証拠をですねぇっ。……へ? 恋人以外の男性の前で服を脱いじゃダメ、って、んもぅ、私はサキュバスだから、これからになるだけですよぅ。問題ないんですって」


「わわわ、服! 引っ張っちゃダメですってばぁ! わかっ、わかりましたっ。じゃ、一旦脱ぐのはやめますよぅ。んもぅ、証拠見せろって言ったの、あなたじゃないですかぁ(むくれる)」


「……じゃ、正装にはならずに説明しますね。これ見せるだけでも納得していただけるかなぁ?」


ひょこっとしっぽが出る。


「これ、しっぽです。サキュバスの。ほら、フニフニ動くでしょ? ふにふに~(揺らして見せる)」


しっぽを掴まれる


「やんっ、は……、だ、だめっ……そんな風に掴んじゃっ、(へたり込む)」


「お願い……手、放してぇ……あっ、そんなに強くしちゃダメだってばぁっ、」


手を離す


「んもうっ、しっぽをあんな風に触ったらダメなんですぅっ! あ、なんですかその楽しそうな顔はっ! ダメって言われるとやりたくなる? ……ちょ、本当にダメなんですからねっ(しっぽを隠す)」


「でも、どうです? これで信じる気になりました? そうですともっ、正真正銘のサキュバスなのですよっ」


「……ええ? それでも私の『好き』は信じられないんですかぁ? 自分は女性とまともに話も出来ない、冴えない男だから? んもぅ、だぁかぁらぁ、あなたは冴えない男なんかじゃないですよぅ。会話だってちゃんと出来てるじゃないですかっ」


「あなたはぁ、みんなが嫌う黒い鳥カラスにも挨拶をする、めーっちゃくちゃ優しい人です!」


「それは褒めてないって? 褒めてますぅ! 私には響いたんですぅ! 大体、なんであなたは自分を冴えない、って思っちゃってるのか意味がわかりません! お仕事だって頑張ってるし、弱い者に優しいし……え? 顔? 顔ですか??」


「まぁ、そりゃテレビに出てるような俳優さんとは違うかもしれませんけど、特別変ってことは……しいて言うなら髪型……でしょうか?」


「あ! 髪型変えたら印象がガラッと変わっちゃう動画! ああいう美容室に行ってみるってどうですか? 人間って、髪型変えるだけで人生変わったりしちゃうみたいだしっ!」


「……でもあんまりカッコよくなっちゃったら……いやです」


「ひゃ! やだ、私ったら何言ってるんだろうっ(照れる)」


「……え? なんで、って。そりゃ……あなたが他の人に取られちゃうの……いやですもん」


「そっ、それは! 確かに、私があなたに近付いた理由はサキュバスの試験の為で、一度そういうをさせていただければ私たちの関係はそれで終わりかもしれません。でもっ!」


「……でも、私の初めてを捧げるのは……あなたがいいって……思って」


「へっ? 嘘だ、って、なにがですかっ? あ、嘘じゃないですよっ。私、サキュバスとして認められてないひよっこで、まだ誰とも、その……、ですね」


「本気で言ってるの? って。勿論本気です! 私たちの世界では、眠らせてムリヤリ襲うっていうやり方もあるんですけど、私はっ……ちゃんと合意を得てからにしようと……」


「そんなわけですので、そろそろ始めてもよろしいですかっ?(にこにこ)」


「……え? 帰れって……。えええええ!? なんでですかっ、私、ちゃんと説明しましたよね? どこが納得いただけなかったのでしょうっ? ええ? 全部ぅぅ?」


「そんなのおかしいじゃないですかっ。普通ここまで迫られて悪い気する男性いませんよ? っていうか、百戦錬磨の先輩からそう聞きましたっ。この攻め口だったらバンバンやれるって!」


「あああ、言い方悪かったですねっ? すみませんそんなつもりではっ。ただ、その……期限が近くて……あああああ! 待って、ドア閉めないで! 時間ないから急いでるだけだろ、って、それはまぁこちらの事情としては確かにそうなんですけど、それだけじゃないんですってばぁ!」


「条件……ですか? その条件を満たしたら、致していただけるんですかっ?」


「やりますっ、私頑張りますっ。で、条件って……?」


「へ? あなたが私を好きになったら……ですか?」


「あなたが……私のことを好きに……ふぁっ(立ち眩む)なんですかその願ったり叶ったりな状況はっ。楽園ですか? そんな、そんな天国みたいな……お伽噺みたいな状態でことができたら、はぁ、はぁ、私、息止まっちゃうかもっ」


「ああ、そうですね。私のことを好きになってもらわないといけないってことなんですね。わかりましたっ! 私、頑張りますっ。とりあえず今日はこれで失礼しますが、明日また伺いますね!」


「へ? なにしに、って……私があなたのために夕ご飯を作ります! 胃袋から攻めるのも効果ありって先輩が言ってました! ……ぴゃっ!」


押し出され、部屋の外へ。カチャリと鍵が閉まる。


「んもぅ、絶対好きにさせますからねっ」



~続~

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