第百十六話 村の教会で奉仕活動

「では、私は指揮を執るために、一旦外に出ます」

「私たちも、外に出よう。折角だから、無料治療も行おう」


 ということで、僕たちもバンザス伯爵とヘンリーさんとともに代官邸を出た。

 お母さんとお父さんも一緒に着いてきたけど、大官邸を出ると僕を待っていた三つの影があった。


「あっ、サマンサお姉ちゃん、カエラ、キース!」

「ナオ!」

「「お兄ちゃん!」」


 僕の四つ上の紫髪のロングヘアのサマンサお姉ちゃん、そして二つ下のカエラ、キースの少し癖のある薄い緑髪のショートヘアの姉弟双子が僕に抱きついてきた。

 こうして、またきょうだいと会える日が来るなんて。

 スラちゃんも、サマンサお姉ちゃんにひしっと抱きついていた。


「良かったわ、本当に良かった。誘拐された時は、家族総出で村中を探したのよ。まさか、あんなことになっているとは思わなかったわ」

「「おにーちゃーん、会いたかったよ!」」


 サマンサお姉ちゃんは大体のことを理解していたのだろうが、連れ去られた時まだ幼かった双子はどういう状況だったのか理解できていなかった。

 僕に会えて良かったと、今はとても嬉しいという表情をしていた。


「サマンサお姉ちゃん、カエラもキースももう僕は大丈夫だよ。僕の隣にいるのが、とってもお世話になっている人なんだ」


 ということで、僕はヘンリーさんたちとドラちゃんを紹介しました。

 またもや女性陣が容姿をぱぱぱって直していたけど、特に気にしないようにしましょう。

 そして、いつの間にかヘンリーさんとシンシアさんとサマンサお姉ちゃん、ナンシーさんとエミリーさんにカエラとキースの組み合わせになってお喋りしていました。

 うんうん、仲が良いのは良い事ですね。

 お父さんとお母さんも、みんなの様子を見て目を細めていた。


「じゃあ、ナオはみんなの手伝いがあるから教会に移動する。お前らはどうする?」

「「「ついて行く!」」」


 暫くしてからお父さんがサマンサお姉ちゃん、カエラ、キースに声をかけたけど、みんな僕のお手伝いをするつもりです。

 お父さんとお母さんはヘンリーさんと一緒に話をするみたいなので、それ以外のメンバーで教会に向かいました。


「ドラちゃんって、とっても可愛いね」

「ねー」

「キュー」


 カエラとキースはドラちゃんと仲良くなったみたいで、一緒に楽しくお喋りをしていた。

 そんな妹弟の側には、ニコニコしているサマンサお姉ちゃんの姿があった。


「しかし、ナオが勇者様の一行に加わったばかりか、騎士爵と二つ名まで貰うとはね」

「僕もびっくりだよ。しかも、あの三人にパーティを追い出されたからあっという間の出来事だったよ」

「色々苦労したって聞いたわ。もしいまあの三人が目の前に現れたら、燃やすか氷漬けにしてあげたわ」


 サマンサお姉ちゃんが笑顔で不穏なことを話しているけど、実はあの三人から愛人にならないかと馬鹿なことを言われていたんだよね。

 サマンサお姉ちゃんはスタイル抜群の美人さんだけど、あの三人はお姉ちゃんにもろくでもないことを思っていたんだよなあ。

 一緒に歩いているエミリーさんもサマンサお姉ちゃんの発言に激しく同意していたけど、もしエミリーさんが王族や貴族令嬢じゃ無かったらあの三人は間違いなくアプローチしてきたはずだよ。

 そんな話をしながら、僕たちは教会に到着しました。

 さっそく治療の準備を進めていると、カエラとキースも僕の横に座りました。


「「治療出来るよー!」」

「二人とも回復魔法からってことで、魔法の訓練を始めたのよ。威力はまだ小さいかもしれないけど、お手伝いは出来るわ」


 あの小さかった双子が魔法を使えるようになるとは思ってもいなかった。

 でも、僕もスラちゃんも家族なのにその瞬間に立ち会えなかったのはとっても残念です。

 その代わりじゃないけど、僕とスラちゃんも二人に一生懸命魔法を教えます。

 回復魔法が使えないサマンサお姉ちゃんは、ドラちゃんと一緒に治療を始めます。

 すると、直ぐに村の人たちが教会に集まってきました。


「おやまあ、ナオじゃねーか。無事だったんだな」

「あの大きなドラゴンに乗っていたのはナオ君だったのね。元気で本当に良かったわ」


 村の人々も、口々に僕が無事で良かったと言ってくれました。

 代官とあの三人の家族が連行されるところを見た人も多く、安堵の表情を浮かべていた人もいました。

 総じて、教会の中は明るい雰囲気に包まれていました。


「しかし、まさか王子様や王女様と一緒に活動しているとは」

「そこまで出世するとは思わなかったぞ。ナオは、この村の誇りだな」


 そして、僕が出世したのを喜んでいる人も沢山いました。

 こうして暫くの間、僕たちは村の人とワイワイと談笑しながら治療を行っていました。

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