第百十二話 僕の地元に到着です
捜査を始めて三十分もすると、かなりの証拠資料が集まった。
次々と軍の施設に運ばれて、詳しい分析が行われるそうです。
すると、執務室に息子さんが姿を現しました。
「父上、こんなにもたくさんのものと取引をしていたのか……」
スラちゃんが次から次へと見つける証拠品の山を見て、思わず愕然としていました。
自分が思っている以上の酷さなのでしょうね。
娘さんもやってきたけど、そこら中に証拠品が隠されていて、目が点になっちゃいました。
「普段私たちが目にするところ以外に、大量に資料を隠していたのですね……」
「怪しいものは隠すというのが、何か悪いことをしているものの常套手段です。残念ながら、後ろめたさがあったのでしょう」
悲しそうな表情をしている娘さんに、ヘンリーさんが諭すように言っていました。
きっと、子どもは両親の反面教師で良い人になったのですね。
すると、交代の兵が応接室にやってきました。
「ヘンリー殿下、交代で参りました」
「パンサー子爵、ご苦労。我々は、これからバンザス伯爵領に向かう」
「はっ、お気をつけて」
おお、シャーロットさん毒殺未遂事件と同じくパンサー子爵が交代に来ました。
本当に、すごい軍人さんなんですね。
ということで、僕たちも出発の準備を整えて屋敷の外に出ます。
「我々は、別のところに向かう。軍の捜索は続くが、君たちを拘束はしないだろう」
「皆さま、どうぞお気をつけて下さいませ」
屋敷の前で大きくなったドラちゃんに乗り込む前に、娘さんが僕たちに深々と一礼してきた。
こんなにもよく出来た娘さんなのに、母親はヘンリーさんの事をバッグでフルスイングしてきたんだよね。
なんとか良い方向に行って欲しいと思いながら、僕たちはドラちゃんの背中に乗り込みます。
バサッ、バサッ、バサッ。
ドラちゃんが高く飛び上がり、勢いよく飛び立ちました。
目的地は、僕の地元です。
既にバンザス伯爵領兵が現地に向かっているらしく、現地で合流することになっています。
いきなりの帰省になったけど、家族のみんなは元気でやっているかな。
そんな事を考えていたら、馬車で二時間もかからない距離なのであっという間に地元に到着しました。
バサッ、バサッ、バサッ。
ドラちゃんが大官邸前に着陸すると、直ぐにバンザス伯爵領兵が出迎えてくれました。
更に、貴族っぽい人も現れました。
初めて見たけど、あの茶髪の短髪で筋肉ムキムキの人がバンザス伯爵だね。
そして、急に大きなドラゴンが現れたので、興味津々または恐怖におののいている人もいました。
「ヘンリー殿下、ご足労をおかけします」
「バンザス伯爵もご苦労」
「皆さま、どうぞ中へ」
ドラちゃんも小さくなって、僕たちと一緒についてきました。
そして、各家の周囲に兵が立っていて、逃走者が出ないようにしています。
最初に案内されたのは、代官の執務室でした。
「フガフガフガ!」
あっ、代官は猿轡までするほどぐるぐる巻きで床に転がっていました。
悪い人って、みんな髪の毛が薄くて太っているんだね。
何かフガフガ言っているけど、兵は関係なくそこら中を捜索していました。
そこに、スラちゃんとドラちゃんも加わって色々なものを見つけてきました。
「ふむ、伯爵への手紙に賄賂額、後は住民からの請求書の束か。お前は、私欲のために住民を蔑ろにしていたんだな。しかも、私にも嘘の報告をしていたのか」
「フググ!」
「もはや、お前は王都で裁かないとならないらしい。私の手で裁けないのが、実に残念だ。剣の露にしてやったのに」
「フグッ!」
おお、バンザス伯爵が代官を目で殺しろうなほど睨みつけていました。
もう、怒りが収まらないって感じですね。
その横では、大量の手紙に陳情書、お金の入った麻袋がたくさん出てきました。
この執務室に、どれだけのものが隠されているのかってくらいの量です。
「もう、これだけあれば十分だろう。あの三家の関係者と、ナオ君の両親を連れてくるように」
「「「はっ」」」
もう十分すぎるほどの証拠が集まったので、遂に村の人を集めることになりました。
絶対に、大波乱が起きそうです。
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