第百十三話 両親との再会
すると、僕の両親を呼ぶと聞いた女性陣がいそいそと服装や髪を直し始めた。
「ナオ君のご家族に会うのだから、きちんとしないと」
「そうね。私も、ナオ君を預かっている身ですわ。ご安心してもらわないと」
「将来のお義母様とお会いするのですから。ちゃんと挨拶をしないと」
何だか、コソコソと話をしながらお互いに身だしなみをチェックしているけど、聞き耳を立てちゃ駄目な気がしました。
ヘンリーさんも思わず苦笑しちゃったけど、女性陣に話しかけないのは僕と一緒です。
ちなみに、拘束されていてフガフガと何か言っている代官も、この後応接室に登場するそうです。
更に代官の家族も既に拘束されていて、兵の監視下にあるそうです。
女性陣の身だしなみの準備もできたので、僕たちは応接室に移動しました。
すると、席に座る前にバンザス伯爵が僕に頭を下げてきました。
「私も、ナオ君に謝らないとならない。代官の不正を見逃して、地元の有力者をやりたい放題にさせていた。そして、あろうことか誘拐まがいのことまで起きてしまった。王都からの報告を聞いた際、まさかと愕然としてしまった」
「あ、あのあの、僕はもう大丈夫です。それに、これからは地元も良くなると思いますし」
「ありがとう。でも、その言葉をまだ小さいナオ君に言わせては駄目だ。領内を再確認させているが、私もまだまだだと実感したよ」
バンザス伯爵がだいぶ申し訳無さそうに言ってくるけど、まさかこれほどとはと思っていたみたいです。
僕としては代官と地元の有力者が悪いんだけど、バンザス伯爵的にはそれでは駄目だという。
ヘンリーさんたちも、僕たちのやりとりを黙って見守っていた。
すると、僕の膝の上に乗っていたスラちゃんがドアの方に視線を向けた。
僕もスラちゃんを抱いて立ち上がり、ドアを注視した。
この場にいる全員の視線も、ドアの方に向いた。
ガチャ。
ドアが開くと、少し背の高くて筋肉質の赤髪ツンツンヘアの男性と、青髪のロングヘアが特徴的な僕と良く似た顔つきの背の低い女性が入ってきた。
僕は自然と二人の元に歩み寄り、二人とも目尻に涙を浮かべながら僕に近づいていった。
「お父さん、お母さん!」
「「ナオ!」」
両親は、僕のことをしっかりと抱きしめた。
特に、お母さんは大粒の涙が止まらなかった。
「ナオ、すまん、すまんな……」
「よかった、本当によかったわ……」
「お父さん、お母さん……」
僕だけでなく、スラちゃんも僕の頭にのりながら両親をぎゅっと抱きしめていた。
僕も両親に会えてホッとしたのもあってか、こみ上げてきたものが止まらなかった。
暫くの間すすり泣く声が部屋の中に響き、勇者パーティの女性陣もハンカチで涙を押さえていた。
少し落ち着いてから、僕たちは席に座りました。
「ナオ、本当に申し訳なかった。まさか家の前で遊んでいたのに、いつの間にか連れ去られていたなんて。同時にあの三人もいなくなったが、三人の家や代官に訴えても全く取り合ってもらえなかった」
「本来なら、冒険者としての伝手を使ってナオのことを探そうとしたのよ。そうしたら、今度は三人の家から余計なことをすればナオを殺すとまで言われていたの。だから、私たちも動くに動けないでいたわ」
落ち着きを取り戻してお互いに自己紹介をした後、両親が話したのは衝撃的なことでした。
まさか、僕の件で両親もあの三人の家から脅迫されていたとは。
この事実に、バンザス伯爵は爆発しそうなほどの怒りで震えていました。
何とか拳を握りしめて耐えていたけど、この場にぐるぐる巻きにされていた代官がいたら間違いなく殴り殺していたでしょう。
「冒険者ギルド経由でナオの無事を知った時は、本当に安堵した。だから俺達は下手に動かずに、ナオのことを守ってくれている人に全てを託していた」
「あと、仕送りも分けて送ってくれて正解だったわ。夫に送られてきた分は、あの三家にみかじめ料として取られてしまったのよ」
お母さんからの追加の報告に、今度はヘンリーさんたちも怒りで震えるほどとても怒っていました。
スラちゃんもドラちゃんもとても憤慨していたけど、僕はとてもショックを受けていた。
頑張って稼いで実家のためにと送ったお金が、全部じゃないけど取られちゃったなんて。
僕は、思わずガクリとしちゃいました。
「威圧的な態度を示して金品を奪い取ったりするのは、もちろん禁止されている。本来は犯罪組織に適応される内容だが、間違いなくあの三家そして代官にも適用されるだろう」
「冒険者ギルドからの送金だと、きちんと記録も残る。もはや現行犯でいいだろう」
「ここまでナオを苦しめるとは。ふふふ、もう手加減不要でいいわね」
お母さんの話を聞いたこの場にいる人が、またもや怒りの炎で燃えていました。
バンザス伯爵だけでなく、本当に珍しくヘンリーさんとエミリーさんもブラックな笑みを浮かべながらもの凄く怒っています。
シアちゃんも怒って触手をふりふりとしていたけど、僕たち親子のことでこんなにも真剣に怒ってくれるなんて。
僕は、とてもありがたく思っちゃいました。
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