第百八話 まさかの地元の大事件が発覚

 そして暫くすると、またもや僕の二つ名が凄いことになりました。


「よお、『白銀の竜使い』が来たぞ!」

「キュー」


 今日は軍の治療施設で治療をするので、手続きをするために冒険者ギルドに顔を出しました。

 すると、顔なじみの冒険者が二つ名で呼んできました。

 他の冒険者も、ニカッとしながら僕に手をあげています。

 なんと、「竜使いの騎士様」と「白銀の聖女様」が合体して、「白銀の竜使い」という二つ名になっちゃいました。

 僕の髪色がプラチナブロンドだし、ドラちゃんを連れているのでとても分かりやすい二つ名だとあっという間に一気に広まりました。

 

「こんなにたくさんの二つ名を考案されるなんて、ナオは凄いなあ」

「キュー!」


 冒険者だけでなくドラちゃんも一緒になって上機嫌で僕の背中をバシバシと叩いてくるけど、大層な二つ名なんて僕にはもったいないよ。

 そんなことを思いながら、手続きを終えて軍の施設に向かいました。


「ふふふ、ナオ君は色々な人に愛されているわね」

「そうね、厳つい冒険者でさえナオ君前では上機嫌になるわ」

「それに、ナオは良い噂しか広まらないわ。二つ名も、とても良いものだわ」


 馬車内で女性陣が僕の話で盛り上がっているけど、確かに前から色々な冒険者によくされています。

 とってもありがたい事ですね。

 そんなことを思っていたら、ヘンリーさんがあることを話してきました。


「今日は、治療の前に会議室で話がある。ナオ君も一緒に参加してくれ」


 この時は、ブラックシャドウと邪神教に関することかなと思いました。

 まだ押収資料の分析を行っているし、色々なところの浄化も続けています。

 でも、話は予想外の方向に進んで行きました。

 会議室には軍の幹部も参加していて、冒頭で凄いことが判明しました。


「バンザス伯爵領にある村を治める代官が、地元民と結託して不正を行っていることが判明しました。不正で得た資金が、王都在住の法衣伯爵に流れていることも発覚しました」


 えっ、これって間違いなく僕の地元の話だよね。

 僕だけでなく、スラちゃんもとてもビックリしちゃいました。

 思わずヘンリーさんの方を向いちゃったけど、ヘンリーさんもコクリと頷きました。


「そのため、バンザス伯爵家と軍が共同で捜査を行うことになりました。容疑は贈収賄と、人事への不正介入です。代官は、伯爵へ賄賂を贈って役人になるように働きかけをしているそうです。代官の地位は、いとこに譲る計画になっております」

「となると、内偵を進めて証拠を押さえるのが優先だな」

「バンザス伯爵は、既に代官の不正を押さえております。法衣伯爵の不正も大体押さえておりますが、実はあと数件同じ事象が確認されております」


 ヘンリーさんの質問に、兵が驚きの回答をしていました。

 つまり、複数の地方代官から賄賂を受け取って、その見返りに人事斡旋をしていたんだ。

 これは不正になるので、もちろん駄目です。


「他の領地から流れている資金は微々たるものなのですが、バンザス伯爵領から流れている資金が圧倒的に大きくなっております。他の領地に関しても、既に当該領主が代官の不正を押さえております」

「間違いなく、あのナオ君の元パーティの実家が絡んでいるな。はあ、これは頭の痛い事件になった」


 予想以上に大きな事件なので、慎重に裏取りを進めているそうです。

 そして、ヘンリーさんがある指示をスラちゃんとドラちゃんに出しました。


「潜入許可が出たら、スラちゃんはドラちゃんに乗って屋敷に潜入してもらう。証拠品を集めて欲しい」

「キュー!」


 スラちゃんはヘンリーさんに敬礼のポーズをしていて、ドラちゃんもやる気満々の声を上げていました。

 特にスラちゃんは、あの三人の実家の横暴を知っているもんね。

 スラちゃんならどんなところにも潜入できるし、ドラちゃんは空を飛べるから門を固めても意味がありません。

 そう考えると、とっても凄いコンビですね。


「証拠を押さえたら、一気に動く予定です。しかし、王都の伯爵を押さえてからバンザス伯爵領に向かうため、機動力が必要となります。ヘンリー殿下の協力を仰ぎたく、お願い申し上げます」

「もちろん協力しよう。事は王都の政治にも関係する話だ、我々が動かなくてはならない」


 ヘンリーさんだけでなく、僕たち全員頷いていました。

 僕にとっては、地元を助ける話にもなるもんね。

 会議はこれで終了し、ヘンリーさんは軍の幹部ともう少し話を詰めるそうです。


「ナオ君、色々思うことはあるかもしれないけど、今は目の前のことに集中しましょう。あと、事件解決まで極秘情報だから喋らないようにね」


 シンシアさんの言葉に、僕だけでなく全員が頷きました。

 どこから情報が漏れるか分からないもんね。

 それに、今日は怪我をしている兵を治療するのが僕たちのお仕事です。

 僕は気持ちを切り替えて、治療施設の中に入っていきました。

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