第百七話 新しい二つ名
ヴィッツ男爵領の復興支援が終わった数日後、僕はエミリーさんと一緒に教会前での炊き出しと無料治療を手伝っていました。
シャーロットさんも炊き出しに参加するそうで、僕たちはひと足さきに教会に行っていました。
「これはこれは、ナオ君ではないか。この前の復興支援に尽力頂き、感謝する」
「おはようございます、教皇猊下。僕は、できることを頑張っただけですよ」
「それでも、多くの命を救った事には違いない。なんでも、震災当日に教会に運び込まれた重傷患者を一人残らず助けたというではないか」
うう、教皇猊下がニコニコしながら僕が何をしていたのかを語ったので、教皇猊下の周りにいたシスターさんが目を輝かせながら手を組んで祈るポーズをしていました。
そして、一人の年配のシスターさんがとんでもないことを言ってきました。
「邪神教の影響のあった領地でも、多くの人を癒したと聞いております。流石は『白銀の聖女様』ですわね」
「えー! あのあの、僕は男の子ですよ!」
「良いではありませんか。治療施設で入院患者を治療する際も、いつもニコニコとしていらっしゃいますわ。髪も綺麗な白銀ですし、何も問題ありません」
な、なんだかある意味とんでもない二つ名がついちゃったよ。
しかも、聖女様ってとんでもない称号だよ。
というか、スラちゃんもドラちゃんもうんうんと頷かないで。
そして、更に僕の後ろから追撃がありました。
「あら、良いではないかしら。『竜使いの騎士様』もとってもカッコいいし、『白銀の聖女様』っていうのも優しいナオ君にとっても似合うわよ」
「うん、私もそう思うわ。それに、ナオが治療したり土魔法で仮設住宅を作ると何故か辛いはずの人たちが笑顔になるのよね」
振り返ると、これまた笑顔のシャーロットさんとエミリーさんが全く問題ないって言っていました。
エミリーさんの肩に乗っているシアちゃんも、問題ないってフルフルとしています。
というか、エミリーさんの一言でシスターさんが余計に盛り上がっちゃったよ。
うう、どうしてこんなことになったのだろうか。
それはそうと、人が揃ったので準備を始めましょう。
僕は、ひと足さきにスラちゃん、ドラちゃん、シアちゃんと一緒に無料治療を始めます。
「いいじゃねーか、『白銀の聖女様』でも。『竜使いの騎士様』もまんまな二つ名だがな」
「こういうのは、身体的特徴が二つ名につきやすいぞ。ナオはプラチナブロンドだからな」
「二つ名があるだけ良いじゃないか。それだけの活躍をしたってことだぞ。大半の冒険者は、二つ名を得られないからな」
治療に来た知り合いの男性冒険者も口々に問題ないって言っているけど、このくらいは全然問題ありません。
結構さっぱりとしていますね。
問題があるのは、こっちの方でした。
「レオ君の二つ名って、どっちも凄いわね」
「冒険者と教会から二つ名がつくって、中々ないわね」
「もしレオ君が大きくなって美男子になっていて、その二つ名で呼ばれたら……」
「ゴクリ、は、鼻血が出る程の破壊力だわ」
なんだか、女性冒険者から不穏な言葉が聞こえてきたのは気のせいでしょうか。
僕としては、大きくなっても聖女様って言われるのはちょっとです。
ちなみに、男性冒険者が女性冒険者のことを指差して「腐っていやがる」って言っていたけど、どういう意味なのかな?
何故か、スラちゃんとシアちゃんは「腐っていやがる」って意味を知っていました。
僕には教えてくれなかったけど。
そんなお話をしながら、無事に午前中の治療は終わりました。
「炊き出しを配りながら見ていたけど、ナオの魔力が更に上がっていたわ」
「えっ、そうですか?」
「ええ、間違いないわ。きっと、この前魔力が尽きる寸前まで治療をしていたのもあったのでしょうね」
昼食を食べながらエミリーさんがそんなことを言っていたけど、確かに思い返せば少しの魔力で効果が上がっているかも。
僕的には、一緒に治療していたドラちゃんとシアちゃんもパワーアップしていると感じました。
スラちゃんは、以前から凄い魔法使いだけどね。
「午後は私も治療にまわるわ。私も魔力制御が上がったから、頑張るわよ」
「ふふ、エミリーはいつも元気ね。きっと、町の人も喜ぶわよ」
孫娘の張り切っている姿に、シャーロットさんも思わず目を細めていました。
頑張っているエミリーさんは、とっても可愛いですね。
こうして元気満タンになったので、午後も治療を頑張りました。
でも年配の人から、「白銀の聖女様」って言われてしまいました。
うう、僕は男の子なのに王都中に新しい二つ名が広まっちゃっているよ。
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