第百四話 仮設住宅を作ってみよう!

 翌朝、僕たちは仮設住宅建設現場に移動しました。

 場所は町の防壁の外に広がる原っぱで、ここならたくさんの仮設住宅が作れそうです。

 もちろん、見学希望のトゥール伯爵もついてきました。

 後はスラちゃんとナンシーさんがついてきて、他の人たちは治療やお仕事をしています。


「だいたいの設計図は準備できているけど、最初に地面を平らにしないと駄目ですね」

「確かにそうだが、実際にどうやるのだ?」


 トゥール伯爵は、腕を組みながら原っぱを見ていました。

 原っぱは、平らっぽいけど意外とデコボコしています。

 更に、草や石もありますね。

 ではでは、さっそく原っぱをならしましょう。

 兵に仮設住宅建設現場の範囲に立ってもらって、だいたいの目安をたてます。


 シュイン、シュイン、シュイン、もこもこもこ。


「うおっ! 土が動いているぞ!?」


 土が広範囲でもこもこもこと動くさまを見て、トゥール伯爵は度肝を抜かれました。

 対して、ナンシーさんとスラちゃんは何故かドヤ顔でいますね。


「えっと、このくらいの固さで良いですか?」

「はい、十分な固さです」


 兵の確認も終わったので、今度は土塁を作ります。

 土塁といっても、壊れないように防壁くらいの硬さにします。


 シュイン、シュイン、シュイン、ズゴゴゴゴ。


「これは凄い、一瞬にして防壁が出来てしまった。これが竜使いの騎士の魔法なのか……」


 一瞬にしてできた高さ二メートルの防壁に、今度はトゥール伯爵は啞然としちゃいました。

 硬さのチェックもしてもらったけど、これなら動物や魔物が襲ってきても全然平気ですね。

 でもでも、まだまだやることはあります。

 今度は、スラちゃんが魔法を放ちました。


 シュイン、ズゴゴゴゴ。


「えっ? まさかスライムが魔法を使うとは……」


 土塁の入口に、兵の待機所をスラちゃんが作ります。

 トゥール伯爵はスライムが魔法を使うところを初めてみたので、もう何が何だか分からなくなっていました。


「スラちゃんは、僕とずっといたんですよ。僕にとってはお兄ちゃん的存在です」

「いやはや、これは凄いな。ナオ君の仲間は、本当に凄いとしか言いようがないぞ」


 スラちゃんも、僕の頭に乗ってトゥール伯爵に触手をフリフリとしていました。

 スラちゃんなら、このくらいなら朝飯前だもんね。

 次は、仮設住宅を建てます。

 十棟ワンセットで、一つの建物に二部屋あります。

 台所とトイレは共同で、これも一緒に作ります。

 では、先ずは一つの建物を作ります。


 シュイン、ズゴゴゴゴ。


「雨に濡れても大丈夫なように、少し硬めに作ってあります。土なので、火事は大丈夫だと思います」

「それでは確認します、少々お待ち下さい」

「うむ、私も入ろう。これは中々良いものだ」


 人が住むところなので、簡易的な窓も作ったしひさしも作りました。

 土だとどうしてもドアが作れないけど、そこはカーテンとかを使うそうです。

 その間に、スラちゃんがトイレと台所のサンプルを作りました。

 トイレは男女別で、地中深く穴を掘ってあります。

 台所は、水作業をしても大丈夫な作りにしてあります。

 こちらもテストして問題なかったんだけど、トゥール伯爵からこんなリクエストが。


「ナオ君、建物は素晴らしいのだけど人数の問題がある。そこで、一部を二階建てにして欲しい」


 そっか、今回お家が壊れちゃった人がたくさんいるから、この仮設住宅建設現場だと一階だけでは足らないんだ。

 ナンシーさんとスラちゃんと相談して、二階建ての建物を作ってみました。


 シュイン、シュイン、ズゴゴゴゴ。


「雨に濡れても大丈夫なように、内階段で行けるようにしました。作りは、一階と同じです。強度は少し上げています」

「ははは、リクエストをした側から直ぐに作ってしまうとは。では、確認を行おう」


 みんなが確認している間に、共同浴場も作ります。

 男女別で洗い場と浴槽だけの簡易的な作りだけど、これならたくさんの人がお風呂に入れますね。


「よし、二階建てもこれで大丈夫だ。じゃあ兵が区画の線を地面に引くから、屋敷に戻って少し休憩しよう」


 他の仮設住宅を作るための区画を作らないとならないので、僕たちは一旦屋敷に戻りました。

 応接室に行くと、ヘンリーさんとヴィッツ男爵が打ち合わせを行なっていた。


「おや、みんな早いお帰りだね。何かあったかい?」

「ヘンリー殿下、とんでもないものを見てしまいました。もう既に仮設住宅の建設現場の概要は出来て、十棟の仮設住宅とトイレと炊事場、更には公衆浴場までできています。現在は、兵によって区画の線引きが行われております」


 トゥール伯爵の報告を、ヘンリーさんは満足そうに聞いていました。

 一方、ヴィッツ男爵は「はっ?」って表情をしたまま固まっていました。


「流石はナオ君とスラちゃんだね。でも、区画がそれで良いのか関係者を集めて確認させよう」

「そ、そうですね。実際の被災者にも確認して貰った方がいいですな」


 何とか再起動したヴィッツ男爵が、ヘンリーさんに色々と提案をしていました。

 実際に住んでもらう人に使い勝手を確認して貰った方がいいですね。

 流石は、領主様です。

 ということで、もう少ししたら仮設住宅建設現場に集合という連絡が各所に行きました。

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