第百三話 見た目は似ていない父と娘
午後も、頑張って街道の復旧を進めていきます。
すると、徐々に商隊とかが復旧した街道を通過するようになりました。
ヴィッツ男爵が各地に連絡していたから、それを受けて動き出したのかもしれません。
これなら、王都とヴィッツ男爵領を結ぶドラちゃん便は行わなくてもいいかもしれませんね。
そんなことを思いながら、僕は街道の復旧を行っていました。
「今日一日、護衛についてもらってありがとうございました」
「こちらこそ、町の復旧に尽力して頂き感謝申し上げます」
「明日の仮設住宅建設時も護衛につきますので、引き続き宜しくお願いします」
夕方になったので、今日のお仕事はおしまいです。
屋敷前まで兵に送ってもらったけど、とっても良い人ですね。
明日もみんなのために頑張ろうと思いながら、屋敷に入りました。
「ナオ、お帰り」
「キュー!」
屋敷に入ると、玄関フロアにエミリーさんとシアちゃん、そしてドラちゃんの姿がありました。
一人と一匹も、今さっき教会から戻ってきたみたいです。
そして、他の面々も屋敷に来ているので応接室に来るように言われているみたいです。
僕は、エミリーさんたちと一緒に応接室に入りました。
ガチャ。
「失礼します」
「失礼、します……」
応接室に入ると、僕たちのメンバーにヴィッツ男爵、そしてスキンヘッドの筋肉ムキムキの大男がソファーに座っていた。
見た目は軍人だから、軍の偉い人なのかなって思っちゃいました。
すると、ヘンリーさんがその人を紹介してくれました。
「おっ、ナオ君も一緒だったか。紹介しよう、ヴィッツ男爵領の隣にあるトゥール伯爵だ」
「これはこれはエミリー王女殿下、ナオ騎士爵様、初めてお目にかかる。トゥール伯爵と申します。街道が復旧したので、救援物資とともに馳せ参じた次第です」
おおう、トゥール伯爵は見た目は厳ついのにとても腰の低い人です。
エミリーさんと僕だけでなく、シアちゃんとドラちゃんとも握手をしてくれました。
「そして、ヴィッツ男爵夫人がこのトゥール伯爵の娘になる。娘の安否も気になっていたようだ」
「いやいや、これはお恥ずかしい限りです。しかし、娘も被災した民のために汗水流しながら一生懸命に動いていた。私は、娘の成長を見てとても感激しましたぞ」
トゥール伯爵とヴィッツ男爵夫人が父娘だと知って、一瞬声を上げそうになったよ。
僕の横にいるエミリーさんも、マジって表情をしていました。
そして、何故か僕の話になりました。
「竜使いの騎士様がとんでもないことをしたと調査のために送った兵が言っていたが、がけ崩れを完璧に直すという確かにとんでもないことをしていた。騎馬隊を走らせたが、そこでも主要街道は完璧に直っていた。昨日は教会に運ばれた怪我人を死者を出すことなく治療したというし、改めて爵位を授かるだけの大器だと感心しましたぞ」
あわわ、そんなに凄いことをしていないですよ。
ヘンリーさんやシンシアさんの方が、もっと凄いことをしていたよ。
皆さんも、うんうんと激しく同意しないで下さい。
「更に、明日は魔法で仮設住宅まで建設するという。私は明日までこちらにいますので、是非とも見学させて下さい!」
な、なんというかトゥール伯爵が酷く感激しているのは気の所為でしょうか。
元々仮設住宅建設は行わないとならないし、別に断る事ではありません。
ヘンリーさんも問題ないって言っているし大丈夫です。
コンコン。
「皆さま、夕食の支度ができましたわ。お父様も食べて下さいませ」
「気を使わなくて良いと言ったのに。しかし、せっかく用意してくれたのなら頂くとするか」
ここで、ヴィッツ男爵夫人が応接室に顔を出しました。
娘としては、大変なところに父親が来てくれたのでもてなしたいって思いもあるのかもしれません。
せっかくなので、全員で食堂に移動しました。
「すみません、有り合わせのもので」
「気にすることはない。それに、この料理はお前が作ったものだろう?」
「流石はお父様ですわ。料理長も炊き出しなどで疲れておりますので、僭越ながら私が料理を作りました」
凄い、家庭的な料理が並んでいるけど、ヴィッツ男爵夫人が作ったんだ。
それを一目見ただけで見抜く父親も凄いです。
「わあ、とても美味しいです!」
「ふふ、それは良かったわ。たくさん食べて下さいね」
「ガブガブ」
見た目だけでなく、とっても美味しい料理でした。
スラちゃんもドラちゃんも、夢中になる美味しさです。
なんというか、ホッとする美味しさですね。
トゥール伯爵も、満足そうに娘の作った夕食を味わっていました。
「こんな時じゃなかったら、料理の作り方を教えて欲しいくらいだわ」
ナンシーさんは、料理を味わいながら作り方の分析をしていました。
それくらい、美味しい料理です。
お腹も心もいっぱいになったし、明日もバリバリ頑張れそうですね。
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