第百五話 無事に仮設住宅が完成です

 一時間後、仮設住宅建設現場には沢山の人が集まっていました。

 全員、朝にはなかった現場を見てビックリしていました。

 特に、大人は何が起きているのか理解できていないみたいです。


「「「わあ、土のお家だ!」」」


 好奇心旺盛な子どもたちは、さっそく仮設住宅の中に入ってどんなものか見ていました。

 子どもは、こういう時でも本当に元気ですね。

 良いタイミングだと、ヴィッツ男爵が集まった被災者に説明し始めました。


「現在こうして仮設住宅の建設を進めているが、モデルハウスができたので皆に見て欲しい。改善点などがあったら、遠慮なく申し出て欲しい」

「えっ、この家に住むことができるのですか?」

「もちろんだ。長期のテント生活は体に悪いだろう。住宅建設を進める間だが、当分住むことになる。だからこそ、皆に見て欲しいのだ」


 ヴィッツ男爵の説明を聞いた被災者は、希望の目で仮設住宅を見始めました。

 兵が仮設住宅の側にいて、色々な説明をしつつ改善案などを集めていました。

 そんな様子を、トゥール伯爵も腕を組みながら満足そうに見ていました。


「衣食住が足りれば人は安心すると言うが、今は住が足りない状況だ。仮設でも住を得られることで、精神的にも安定するものだ」


 やっぱり、テント生活だと狭いし大変だもんね。

 お家ができるまでの辛抱だけど、ゆっくり寝られる環境ってのはとっても大事です。


「あと、地震に強い建物を作らないとならないので、王城経由で地震の多い地域からどんな建築方法を使っているのか集めています」

「流石はヘンリー殿下だ。もちろん私も建築に協力しよう。我が領も、今回の地震を受けて住宅の耐震を検討しないとならない」


 おお、ヘンリーさん凄いです。

 王城でそういう情報を集めていたんですね。

 やっぱり王子様ってだけあります。

 こうしてみんなで話をしている間に、必要な情報が集まってきました。

 そして、シンシアさんが集めた情報を設計図に書き込んでいきました。

 その設計図を、ナンシーさんやエミリーさんも一緒に確認します。


「ふむふむ、トイレをもう少し増やしたいのと、少し大きめな共同炊事場があればってことですね。このくらいだったら、僕もスラちゃんも直ぐにできますよ」

「そうか、なら直ぐにやって貰おう」


 ということで、ヘンリーさんの指示も出たのでさっそく残りの仮設住宅を作っちゃいましょう。

 一旦安全の為に、僕とスラちゃん以外の全員に仮設住宅建設現場の入り口に移動して貰います。

 そして、僕とスラちゃんは分担を決めて魔力を溜め始めました。


 シュイン、シュイン、シュイン、シュイン。


「おお、何という事だ。とんでもない数の魔法陣が現れているぞ!」

「い、一体何が起ころうとしているのだろうか?」


 集まっている人が口々に何か起きていると言っているけど、久々の大魔法なので僕とスラちゃんはとっても張り切っています。

 ではでは、一気に仮設住宅を作っちゃいましょう。


 シュイン、シュイーン、ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!


「「「わあ、お家ができていく!」」」

「これは凄いわね。一気にこれだけの仮設住宅を作るとは」

「やっぱり、ナオの魔法は凄いわ」

「キュー」


 目の前で沢山の仮設住宅ができあがっていく様は、ある意味壮観ですね。

 子どもたちは大はしゃぎだし、シンシアさん、エミリーさん、ドラちゃんも興奮していました。

 うん、何とか良い感じにできあがりました。


「ふう、ヘンリーさん終わりました。とりあえず、必要な数は足りていると思います」

「ナオ君、スラちゃん、お疲れ様。確認させるから、ちょっと休んでいてくれ」

「キュキュー!」


 直ぐに、多くの兵が仮設住宅の点検に入りました。

 僕とスラちゃんが地面に座って休んでいると、ドラちゃんが凄いって大興奮しながら僕の周りを飛んでいました。


「ははは、流石は竜使いの騎士様だ。これ程の魔法を使うとは恐れ入った」

「「「竜使いの騎士様?」」」

「そうだ、ここにいるのはドラゴンと友達になり大活躍をして若くして騎士爵を得た冒険者だ」


 あの、トゥール伯爵が被災者に僕の二つ名を説明しちゃったから何だかとんでもなく盛り上がっているんですけど。

 すると、シンシアさんとかもうんうんと満足そうに頷いていました。


「もう、これでナオ君の二つ名が一気に広まるわね」

「私達にも二つ名がついているけど、結構しょぼいもんね」

「やっぱり、ナオの二つ名はインパクトがあるわ」


 スラちゃんとシアちゃんも、女性陣と一緒になってふるふると頷いていました。

 というか、ドラちゃんまで頷いているんですけど。


「じゃあ、問題なければ午後から仮設住宅に引っ越しする。名簿を作るので、勝手に部屋に入らないように」


 この場はヴィッツ男爵がしめてくれたので、ある意味ホッとしました。

 僕としては、被災者の皆さんが笑顔になってくれたのが一番嬉しいです。

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