第七十六話 シャーロットさんとともに奉仕活動

 例のスラム街で連行された人の聴取を続けていくと、どうも町の人を邪神教にスカウトをしていた人の姿が分かってきました。

 男性や女性とまちまちだったけど、どうも普通の恰好をして声をかけていたそうです。

 普段と同じ格好だからこそ、町の人も警戒心が薄かったのかもしれません。

 特定の格好だったら捜査もしやすいけど、これだとスカウトを探すのは難しいですね。

 でも、どこでスカウトされたかは分かっているので、似たような場所も含めて軍が王都内を巡回しているそうです。

 そんな中、今日は冒険者としての依頼は無くて、代わりに大教会に行って奉仕活動を行うことになりました。

 少しの間だけど、シャーロットさんも奉仕活動に参加するそうです。

 今まで病気で奉仕活動に参加できなかったから、可能な範囲でできることをするそうです。

 ナンシーさんとエミリーさんが、シャーロットさんのサポートに付くそうです。

 残念ながらお勉強の為に、マリアさん、アーサーちゃん、エドガーちゃんは王城にいます。

 僕は、シンシアさんと共にスラちゃんとドラちゃんと一緒に無料治療を行います。


「こうしてシャーロット様のお元気な姿を拝見し、私も感無量でございます」

「私もこうして元気な姿を皆さまにお見せできて、とても嬉しく思っております」


 当のシャーロットさんは、教皇猊下と仲良さそうに話をしていました。

 よく奉仕活動をするので、二人はとても仲が良いそうです。

 その間に炊き出しの準備をしていますが、集まった人に提供するにはまだ時間が掛かります。

 なので、いつも通り無料治療を先に行います。

 すると、僕たちの方に教皇猊下のお話を終えたシャーロットさんがやってきました。


「最初は、私も無料治療のお手伝いをするわね」

「キュ?」


 シャーロットさんは、椅子の上で丸くなっていたドラちゃんを抱き上げました。

 どうやら、ドラちゃんと一緒に無料治療を行うみたいです。

 ドラちゃんはシャーロットさんと仲良しだし、側には近衛騎士も控えています。

 ということで、さっそく無料治療を始めます。


「し、シャーロット様! お元気になられたのですね」

「ええ、この通りすっかり良くなったわ。また奉仕活動ができて、私も嬉しいわ」


 僕も横目でシャーロットさんのことをみているけど、とんでもない人気があります。

 中には、涙を流して元気になって良かったと喜んでいる人もいます。

 厳つい冒険者も、元気になったシャーロットさんを見て感激していました。

 シャーロットさんも全ての人にニコリとしながら治療をしているから、町の人もつられて笑顔になっています。

 ドラちゃんも、とても張り切って治療をしていました。

 時々ドラちゃんがシャーロットさんに抱きついて頬ずりしているので、町の人の中にはシャーロットさんがドラゴンを指摘していると勘違いしている人もいます。

 ドラちゃんを保護したのは、スライムのスラちゃんなんだよね。


「おばあさま、炊き出しの用意ができました」

「あら、そんな時間になっていたのね。楽しい時間はあっという間だわ。ドラちゃん、後は宜しくね」

「キュ!」


 エミリーさんがシャーロットさんに声を掛けていたけど、シャーロットさんにとって奉仕活動は楽しい時間なんだ。

 だから、あんなに楽しそうにしているんだね。

 こうしてみんなで奉仕活動をして、シャーロットさんは一時間ほど炊き出しの配膳をして王城に帰っていきました。


「シンシアさん、シャーロットさんってとっても凄い人ですね!」

「そうよ。だからこそ、これだけの町の人が集まるのよ」


 実は、シャーロットさんが奉仕活動をしていると聞いてもの凄い人が集まっていました。

 なので、人手も追加されて特に炊き出しはてんやわんやでした。

 無料治療にも沢山の人が集まっていて、僕たちも忙しく治療していました。

 シャーロットさんが王城に帰る時も、沢山の人が手を振って馬車を見送っていた。

 やっぱり、シャーロットさんは凄いと改めて感じました。

 昼過ぎに奉仕活動が終わったので、僕たちも王城に向かいました。


「ふふ、今日は沢山の人に触れ合えてとても楽しかったわ。アーサーちゃんも、エドガーちゃんも、もう少し大きくなったら一緒に奉仕活動をしましょうね」

「はーい」

「あー」


 王城では、とっても優しいひいおばあちゃんの顔でアーサーちゃんとエドガーちゃんと接していました。

 だからこそ、ちびっ子二人もシャーロットさんをとても慕っているんですね。

 僕ももっと頑張ろうと、楽しそうにしている三人を見てそう思いました。

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